ストレスや季節の変化で気分が落ち込みやすい人に注目される植物成分です。 セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort)は欧州で伝統的に使われてきたハーブで、軽度から中等度の気分の落ち込みを穏やかに支える可能性が臨床試験で研究されています。 臨床試験では300〜900mg/日を朝食後に摂り、数週間継続する方法が一般的ですが、医薬品との相互作用に注意が必要です。
- 主な働き:気分のバランス維持を助ける
- 摂るタイミング:朝食後に300〜900mg
- 研究段階:複数の臨床試験で有望な結果、薬物相互作用に注意必須
- 注意:抗うつ薬・ピル・ワルファリン等との併用禁止、光線過敏症リスク
- 食品例:サプリメントが主体、欧州では伝統的にハーブティーとして利用
セイヨウオトギリソウとは
セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)は黄色い花を咲かせる多年草で、ヒペリシンやヒペルフォリンと呼ばれる成分が気分調整に関与すると考えられています。NCCIH 欧州では古くから「気分を明るくするハーブ」として使われ、ドイツでは軽度のうつ症状に医薬品として処方されることもあります。日本では食事摂取基準が未設定で、主にサプリメントとして利用されます。 ヒペリシンは光感受性を高める性質があり、摂取後に強い日光に当たると皮膚炎を起こす可能性があるため、注意が必要です。
からだでの働きと科学的知見
セイヨウオトギリソウはセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど複数の神経伝達物質の再取り込みを阻害し、気分の安定を支えると考えられています。PubMed29の臨床試験(計5,489名)を対象としたCochraneレビューでは、軽度から中等度のうつ症状に対して標準的な抗うつ薬と同等の反応率が報告されました。 一方で、セイヨウオトギリソウは肝臓の薬物代謝酵素(CYP3A4、CYP2C9など)を強く誘導するため、多くの医薬品の血中濃度を低下させる恐れがあります。PMC抗うつ薬(SSRI等)、経口避妊薬、ワルファリン、免疫抑制剤など、併用すると薬効が減弱したり副作用が増強したりする可能性があるため、医療職との相談が必須です。 安全性に関しては、短期使用では重篤な副作用は少ないとされていますが、軽度の消化器症状、めまい、疲労感、光線過敏症を感じる人もいます。NCCIH
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 軽度〜中等度のうつ症状 | 中 | Cochraneレビューで標準薬と同等の反応率 |
| 薬物相互作用 | 高 | CYP450誘導により多数の薬と相互作用 |
| 光線過敏症 | 中 | ヒペリシンによる光感受性亢進が報告 |
摂り方とタイミング
臨床試験では朝食後に300〜900mg/日を摂取し、4〜12週間継続する例が多く、これを参考にすることが一般的です。PubMed セイヨウオトギリソウは効果の発現に時間がかかるため、数週間〜数か月の継続が推奨されます。急激な効果を期待せず、長期的な視点で取り入れることが大切です。 初めて使う場合は少量(例:300mg/日)から始め、体調を観察しながら段階的に増やすと安心です。妊娠中・授乳中の安全性データは不足しているため、該当する場合は医療職と相談してください。 光線過敏症を避けるため、摂取中は強い日光への長時間曝露を控え、日焼け止めを使用するなどの対策が推奨されます。
栄養素どうしの関係と注意点
セイヨウオトギリソウは薬物代謝酵素(CYP3A4、CYP2C9、CYP2C19など)を強く誘導し、多数の医薬品と相互作用します。PMC特に以下の薬との併用は避けるべきです:
- 抗うつ薬(SSRI、SNRI等):セロトニン症候群のリスク
- 経口避妊薬:避妊効果の低下
- ワルファリン:血液凝固能の不安定化
- 免疫抑制剤(シクロスポリン等):血中濃度低下による拒絶反応リスク
- HIV治療薬、抗がん剤:薬効の著しい低下
マグネシウムやナイアシンなどのビタミンB群、神経伝達や気分調整に関わる栄養素が不足していると、セイヨウオトギリソウの働きが十分に発揮されにくい可能性があります。バランスの取れた食事を土台とすることが大切です。 オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)と併用すると、気分の安定を補完できる可能性があります。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| セイヨウオトギリソウ×抗うつ薬 | × | セロトニン症候群リスク、併用禁止NCCIH |
| セイヨウオトギリソウ×ピル・ワルファリン | × | 薬効低下・副作用増強、併用禁止PMC |
| セイヨウオトギリソウ×マグネシウム・ビタミンB群 | ○ | 神経機能と気分調整を補完する可能性 |
| セイヨウオトギリソウ×オメガ3脂肪酸 | ○ | 気分の安定を補完 |
食品から摂るには
セイヨウオトギリソウは主にサプリメントとして利用され、食品としての流通はほとんどありません。欧州では伝統的に乾燥させた花をお茶にして飲む習慣がありましたが、含有量が一定せず薬物相互作用のリスクもあるため、現代ではカプセルや錠剤の形が実用的です。 サプリメントを選ぶ際は、ヒペリシン含有量が標準化された製品(0.3%)を選ぶと、臨床試験と近い条件で使用できます。製造元の品質管理体制や第三者検査の有無を確認することも推奨されます。 日常の食事では、気分調整を支えるマグネシウム(ナッツ、種子、緑黄色野菜)やナイアシンなどのビタミンB群(全粒穀物、卵、魚)、オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油)を充足させることが、セイヨウオトギリソウの働きを補う土台となります。
