NAC(N-アセチルシステイン)は、体内の主要な抗酸化物質グルタチオンの前駆体として利用されるアミノ酸誘導体です。
痰を切りやすくする去痰薬として医療現場でも用いられ、呼吸器ケアから代謝・メンタルサポートまで応用が広がっています。
一方で薬との相互作用や高用量での副作用もあるため、用量・目的を明確にしたうえで使用しましょう。
- 主な働き:グルタチオン合成・去痰作用・解毒サポート
- 摂るタイミング:朝夕に600mg前後、食後または医療職の指示に従う
- 相性:ビタミンC・セレン・オメガ3と抗酸化ネットワークを補完
- 注意:亜硝酸薬・活性炭・一部抗生物質との相互作用、喘息既往にも配慮
- 食品例:ニンニク、玉ねぎ、ブロッコリー(硫黄化合物が前駆体となる)
NACとは
L-システインにアセチル基を付加した形で、グルタチオン生成を助けるほか、粘液のジスルフィド結合を切断して痰を軟らかくする作用があります。NACは抗酸化物質としてだけでなく、タンパク質のジスルフィド結合を還元する能力により、多様な生理機能に関与します。PubMed 医薬品としてはアセトアミノフェン中毒の解毒や去痰薬として使用され、サプリメントでは抗酸化やメンタルサポート目的で用いられます。
からだでの働きと科学的知見
慢性閉塞性肺疾患(COPD)・慢性気管支炎を対象にしたメタ解析では、NACが増悪頻度を減らし症状を緩和する可能性が示されています。PubMed 自閉スペクトラム症など神経系疾患での補助療法としても研究され、NACが行動スコアの向上に関連したメタ解析があります。PubMed NACは酸化ストレス関連疾患において、細胞内グルタチオンレベルを回復させ、抗酸化酵素活性を高めることで治療的な作用が報告されています。PubMed さらに、2021年の臨床試験では、高齢者においてグリシンとNACの併用補給(GlyNAC)が、グルタチオン欠乏の回復や酸化ストレス、ミトコンドリア機能障害、炎症、内皮機能障害、インスリン抵抗性の軽減に関連し、複数の老化の特徴に良好な変化が示されました。PMC グルタチオン枯渇を防ぐことで酸化ストレスを抑える姿勢が多疾患で期待されますが、高用量では胃腸症状や頭痛が報告されています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| COPD・慢性気管支炎 | 中 | 増悪頻度を低減 |
| 神経・メンタル | 低〜中 | ASD補助療法で行動スコア向上 |
| 抗酸化・解毒 | 低 | グルタチオン補充として利用 |
摂り方とタイミング
一般的なサプリでは1回600mgを1日2回、医療用途ではより高用量が処方されます。
空腹時は胃への刺激が強くなることがあるため、食後30分以内に水と一緒に摂ると続けやすくなります。
パウダーはやや硫黄臭があるため、ジュースや炭酸水に溶かすと飲みやすくなります。
栄養素どうしの関係と注意点
ビタミンCやセレンと併用するとグルタチオン再生が効率化され、抗酸化ネットワークが補強されます。NACは硫化水素(H2S)やスルフェン硫黄種の形成を介して、新たな作用機序が注目されています。PubMedビタミンCの記事やセレンの記事を参照してください。 オメガ3脂肪酸と組み合わせると炎症バランスが整い、呼吸器や肝臓のストレスが軽減される可能性があります。フィッシュオイルの記事参照。 亜硝酸薬や活性炭、ニューキノロン系抗生物質と併用すると薬効が変化することがあるため、服用中の薬は事前に医療職へ伝えてください。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| NAC×ビタミンC/セレン | ◎ | グルタチオン補充を強化 |
| NAC×オメガ3 | ○ | 呼吸・肝機能を多面的に支援 |
| NAC高用量×亜硝酸薬 | △ | 血圧低下の恐れがあるため医療職と相談 |
食品から摂るには
硫黄化合物を含む野菜(ニンニク、玉ねぎ、ブロッコリー)は体内でシステイン供給に役立ち、グルタチオン合成をサポートします。
サプリを利用するときは、医療用医薬品との重複を避けるため、処方内容の確認を行ってください。
粉末は湿気で固まりやすいため遮光・乾燥環境で保管し、開封後は早めに使い切りましょう。
