忙しい日が続いて疲れやすさや集中力の低下を感じている人に向けた、糖質代謝に欠かせない水溶性ビタミンです。 ビタミンB1は体内で補酵素として働き、食事から摂った糖質をエネルギーに変える代謝反応を助け、神経系の正常な働きを維持します。 通常の食事で不足しにくい栄養素ですが、糖質摂取量が多い人やアルコール摂取が多い人は意識的な摂取が役立ちます。
- 主な働き:糖質代謝の補酵素、神経機能の維持、エネルギー産生
- 摂るタイミング:朝食と一緒に、糖質摂取時に効果的
- 相性:他のビタミンB群と合わせると代謝サポートが円滑に
- 注意:アルコールや加工食品の多い食生活では不足しやすい
- 食品例:豚肉、玄米、全粒穀物、豆類、ナッツ類
- 推奨量:成人男性1.4mg/日、成人女性1.1mg/日(日本)
ビタミンB1とは
ビタミンB1(チアミン)は水溶性ビタミンB群の一つで、体内で補酵素チアミンピロリン酸(TPP)に変換されます。この補酵素は糖質代謝の中心的な経路で重要な役割を果たし、食事から摂った糖質を効率よくエネルギーに変える働きを担います。NIH ODS
体内では合成できないため、毎日の食事から摂取する必要があります。日本人の平均摂取量は推奨量を満たしていますが、白米中心の食生活やアルコール摂取が多い人、激しい運動をする人は意識的な摂取が推奨されます。
からだでの働きと科学的知見
ビタミンB1は補酵素TPPとして、体内の糖質代謝に関わる複数の酵素反応を助けます。特にグルコースからエネルギーを取り出す過程で中心的な役割を果たし、脳や神経系の正常な機能維持に不可欠です。PMCチアミンは代謝調節において重要な健康調整因子として機能し、多くの生理機能に影響を与えます。PubMed
糖質代謝への関与は、ビタミンB1の最も重要な機能です。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体という酵素の補因子として働き、糖質の分解で生じるピルビン酸をアセチルCoAに変換します。この反応はエネルギー産生の要であり、特に脳や神経細胞はグルコースを主要なエネルギー源とするため、ビタミンB1の十分な供給が欠かせません。糖尿病患者においては、チアミン補給が代謝機能の改善に寄与する可能性が系統的レビューで示唆されています。PubMed
神経機能の維持も重要な働きです。神経細胞の膜機能や神経伝達物質の合成に関与し、末梢神経や中枢神経の正常な働きを支えます。不足すると、末梢神経障害(脚気)や中枢神経障害(ウェルニッケ脳症)などの症状が現れることがあります。NIH ODSビタミンB群の欠乏は、神経精神症状を引き起こすことが包括的レビューで報告されています。PubMed
エネルギー代謝全般のサポートとして、クエン酸回路(TCA回路)やペントースリン酸経路でも補酵素として機能します。これにより、日々の活動に必要なエネルギーが安定的に供給され、疲労感の軽減や集中力の維持に寄与します。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 糖質代謝補酵素 | 高 | ピルビン酸デヒドロゲナーゼ等で確認された基本的役割 |
| 神経機能維持 | 高 | 欠乏症で神経障害が確認される |
| 疲労軽減 | 中 | 一部の研究で高用量摂取の有用性を示唆 |
摂り方とタイミング
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人男性で1.4mg/日、成人女性で1.1mg/日が推奨量とされています。妊娠期・授乳期にはそれぞれ1.3mg/日、1.5mg/日に増量されます。厚生労働省
ビタミンB1は水溶性のため、一度に大量摂取しても吸収量には限界があり、余剰分は尿中に排泄されます。朝食時に摂取すると、日中の糖質代謝をサポートしやすくなります。特に糖質を多く含む食事(ご飯、パン、麺類)と一緒に摂ることで、効率的なエネルギー産生を助けます。
アルコール摂取が多い人は、アルコールがビタミンB1の吸収を妨げ、排泄を促進するため、必要量が増える傾向があります。また、激しい運動や発汗が多い人も、エネルギー消費量の増加に伴いビタミンB1の必要量が高まります。
栄養素どうしの関係と注意点
ビタミンB1は他のビタミンB群と協調して働くため、バランスよく摂取することが理想的です。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンB1×ビタミンB2 | ◎ | B2がB1の代謝に関与NIH ODS |
| ビタミンB1×ナイアシン | ◎ | エネルギー代謝で協調して働く |
| ビタミンB1×マグネシウム | ○ | TPP生成にマグネシウムが必要 |
| アルコール | △ | 吸収阻害・排泄促進のリスク |
| 通常の食事 | ◎ | 食品からの摂取では相互作用の心配はほとんどない |
通常の食事からの摂取で過剰症の報告はなく、耐容上限量も設定されていません。高用量のサプリメント摂取でも重篤な副作用の報告は少ないですが、バランスの取れた食事を基本とすることが推奨されます。
食品から摂るには
ビタミンB1は動物性食品と植物性食品の両方に含まれますが、特に豚肉、全粒穀物、豆類に多く含まれます。精製された白米や白パンでは含有量が大幅に減少するため、玄米や全粒粉製品を選ぶことが有効です。
主な食品例と含有量の目安:
- 動物性食品:豚肉(特にヒレ、もも)、レバー、うなぎ
- 穀類:玄米、全粒粉パン、オートミール、そば
- 豆類:大豆製品(納豆、豆腐)、えんどう豆、レンズ豆
- ナッツ類:ピーナッツ、ひまわりの種
- 野菜:枝豆、グリーンピース
調理による損失に注意が必要です。ビタミンB1は水溶性で熱に弱い性質があり、長時間の水洗いや加熱で含有量が減少します。炊飯時の煮汁を捨てず、煮物や汁物として摂取することで損失を抑えられます。
朝食に玄米と納豆、昼食に豚肉を使った料理、夕食に豆類を含む汁物など、日常的に取り入れやすい食品を組み合わせることで、自然に推奨量を満たせます。
