ミネラル

ナトリウム|体液バランスと神経伝達を支えるミネラル(制限管理が重要)

血圧や塩分摂取が気になる人に向け、ナトリウムが体内でどのように働き、過剰摂取のリスクと適切な摂取管理方法を一次情報に基づいてやさしく解説します。

※ 主な作用: 電解質バランス・神経伝達・筋肉収縮・体液調節

人の手の白い石
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摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)600mg
UL(耐容上限量)mg

日本人の食事摂取基準(2025年版)に基づく。目安量(AI):600mg/日。食塩相当量の目標量:男性<7.5g/日、女性<6.5g/日

血圧や塩分摂取が気になる人に向けた、体液バランスと神経伝達に欠かせないミネラルです。 ナトリウムは体内で電解質として働き、細胞内外の水分調節や神経信号の伝達を担います。 日本人は食塩として過剰摂取しやすいため、通常はサプリメントでの追加摂取ではなく、食事での制限管理が重要です。

  • 主な働き:電解質バランス維持、神経伝達、筋肉収縮、体液調節
  • 摂るタイミング:食事から自然に摂取、サプリメントは原則不要
  • 注意:過剰摂取は高血圧・心血管疾患のリスク、減塩を心がける
  • 食品例:食塩、醤油、味噌、加工食品(制限対象)
  • 目標量:食塩相当量で男性7.5g未満/日、女性6.5g未満/日(日本)

ナトリウムとは

ナトリウム(Na)は体内の主要な電解質で、細胞外液に最も多く存在するミネラルです。体重60kgの成人で約100gのナトリウムが体内に存在し、その約50%が細胞外液、約40%が骨に分布しています。体液の浸透圧調節、酸塩基平衡の維持、神経や筋肉の正常な機能に不可欠です。WHO

日本人の平均食塩摂取量は男性10.9g/日、女性9.3g/日と、目標量を大きく上回る傾向にあります。このため、一般的にはナトリウムを追加で摂取するのではなく、食塩として摂取量を制限することが健康維持の観点から推奨されます。

からだでの働きと科学的知見

ナトリウムは体内で電解質として多様な生理機能を支えます。細胞膜を介したナトリウム-カリウムポンプの働きにより、細胞内外の濃度勾配が維持され、神経伝達や筋肉収縮が円滑に行われます。厚生労働省

体液バランスの調節は、ナトリウムの最も重要な機能です。細胞外液の主要な陽イオンとして浸透圧を維持し、体内の水分分布を調整します。ナトリウム濃度が適切に保たれることで、血液量や血圧が安定し、全身への酸素・栄養素の供給が円滑に行われます。急性心不全における除水療法では、尿中ナトリウム濃度をガイドとした治療戦略の有効性が系統的レビューで報告されています。PubMed

神経伝達と筋肉収縮も重要な働きです。神経細胞の活動電位の発生には、ナトリウムイオンの細胞膜透過が不可欠です。この仕組みにより、脳からの指令が全身に伝わり、筋肉が適切に収縮します。心臓の拍動も、ナトリウムイオンの移動によって調節されています。

栄養素の吸収と代謝にも関与します。小腸でのグルコースやアミノ酸の吸収は、ナトリウムとの共輸送によって促進されます。また、腎臓での重炭酸イオンの再吸収を助け、血液のpHを正常範囲に保つ役割も担います。

一方で、過剰摂取は高血圧や心血管疾患のリスクを高めることが多くの研究で示されています。WHOは成人の食塩摂取量を5g/日未満に制限することを推奨しており、これは約2,000mgのナトリウムに相当します。WHO尿酸と高血圧・冠動脈疾患の関連を評価した心腎疾患研究では、適切なナトリウム管理の重要性が報告されています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
電解質バランス維持 細胞外液の浸透圧調節で確認された基本的役割
神経伝達・筋肉収縮 活動電位の発生に不可欠
過剰摂取と高血圧 多数の研究で関連性が実証PubMed
減塩による心血管疾患予防 複数の疫学研究で示唆、2型糖尿病患者でのSGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬併用療法での心血管予後改善PubMed

摂り方とタイミング

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人の目安量(AI)は600mg/日ですが、通常の食事で容易に満たせるため、実際には目標量(制限値)が重視されます。目標量は食塩相当量で、成人男性7.5g未満/日、成人女性6.5g未満/日に設定されています。これはナトリウム換算で約2,950mg(男性)、2,550mg(女性)に相当します。厚生労働省

日本人の平均摂取量は目標量を大きく上回るため、サプリメントでの追加摂取は原則不要です。むしろ、食塩の摂取量を意識的に減らすことが健康維持に役立ちます。

減塩のポイントは、加工食品や外食の頻度を減らし、調味料の使用量を控えることです。食塩の代わりに香辛料や酢、レモンなどを活用すると、風味を保ちながら塩分を減らせます。また、カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ることで、ナトリウムの排泄が促進されます。

激しい運動や発汗が多い環境では、ナトリウムの喪失が増えるため、適度な補給が必要です。スポーツドリンクや経口補水液を利用することで、電解質バランスを保てます。ただし、日常生活では通常の食事で十分量を摂取できるため、特別な補給は不要です。

栄養素どうしの関係と注意点

ナトリウムの代謝には、他のミネラルとのバランスが重要です。

組み合わせ 推奨度 コメント
ナトリウム×カリウム カリウムはナトリウムの排泄を促進し、血圧調節を助ける
ナトリウム×カルシウム 高ナトリウム摂取はカルシウムの尿中排泄を増やす可能性
ナトリウム×水分 適切な水分摂取でナトリウム濃度を調節
高血圧治療薬 利尿薬などの降圧薬を服用中は医師の指導に従う

過剰摂取は高血圧、心血管疾患、脳卒中、胃がんのリスクを高める可能性があります。特に慢性的な高塩分摂取は避け、目標量を意識した食生活を心がけましょう。

食品から摂るには

ナトリウムは食塩(塩化ナトリウム)として、ほぼすべての加工食品や調味料に含まれます。日本の伝統的な食事では、醤油、味噌、漬物などから多くのナトリウムを摂取します。

主な食品例と含有量の目安

  • 調味料:食塩(1g=約390mgナトリウム)、醤油、味噌、ソース
  • 加工食品:ハム、ソーセージ、ベーコン、チーズ(健康的な食事の一部として適量摂取を推奨)PubMed、インスタント食品
  • 漬物・佃煮:梅干し、たくあん、昆布の佃煮
  • スナック菓子:ポテトチップス、せんべい、クラッカー
  • 外食・中食:ラーメン、カレー、弁当類

減塩のためには、食品表示の「食塩相当量」や「ナトリウム」の項目を確認する習慣が役立ちます。ナトリウム(mg)を食塩相当量(g)に換算するには、ナトリウム量×2.54÷1,000で計算できます。

調理の工夫として、だしの旨味を活かす、香味野菜や香辛料で風味をつける、酢やレモンで酸味を加えるなどの方法で、塩分を減らしても満足感のある食事が作れます。また、新鮮な素材を使い、素材の味を活かすことで、調味料の使用量を自然に減らせます。

よくある質問

Q. ナトリウムのサプリメントは必要ですか?

通常の食事で十分量を摂取できるため、一般的な生活ではサプリメントは不要です。むしろ過剰摂取のリスクがあるため、減塩を意識した食生活が推奨されます。激しい運動や高温環境での作業で大量に発汗する場合のみ、経口補水液などでの補給を検討してください。

Q. 摂りすぎによる健康への影響はありますか?

慢性的な過剰摂取は、高血圧、心血管疾患、脳卒中、腎臓病のリスクを高めます。また、胃がんとの関連も指摘されています。日本人の多くは目標量を上回る食塩を摂取しているため、意識的な減塩が健康維持に役立ちます。

Q. 減塩すると体に悪影響はありませんか?

通常の食事では、極端な減塩でもない限り、ナトリウム不足になることはほとんどありません。目安量(600mg/日)は容易に満たせるため、目標量(食塩相当量7.5g未満/日)を目指した減塩は健康に有益です。ただし、激しい運動や発汗が多い状況では適度な補給が必要です。

Q. 高血圧の人はどの程度制限が必要ですか?

高血圧の治療・管理では、より厳格な制限が推奨されることがあります。日本高血圧学会は、高血圧患者に対して食塩摂取量を6g/日未満にすることを推奨しています。個人の状態に応じた制限値は、医師や管理栄養士の指導に従ってください。

Q. カリウムを摂るとナトリウムの影響が減りますか?

カリウムは腎臓でのナトリウム排泄を促進し、血圧上昇を抑える働きがあります。野菜や果物を積極的に摂ることで、ナトリウムとカリウムのバランスが改善されます。ただし、カリウムを摂れば塩分を多く摂ってもよい、というわけではありません。減塩とカリウム摂取の両立が理想的です。

Q. スポーツドリンクは飲みすぎに注意が必要ですか?

スポーツドリンクには電解質補給のためにナトリウムが含まれていますが、通常の日常生活では過剰になる可能性があります。運動時や発汗時の水分・電解質補給には有効ですが、安静時の水分補給には水やお茶を選ぶことが推奨されます。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。