肝機能と抗酸化が気になる人に注目される植物由来のフラボノイド複合体です。 シリマリン(silymarin)は、ミルクシスル(マリアアザミ、Silybum marianum)の種子から抽出されるフラボノイド複合体で、肝臓保護作用(ヘパトプロテクション)との関連で広く研究されています。 2023年に発表されたシステマティックレビューでは、29件のランダム化比較試験(3,846名)を分析し、シリマリンが肝酵素レベル(ALT、AST)の改善に関与することが報告されました。
- 主な働き:肝臓保護、抗酸化作用、抗炎症作用、脂質代謝との関連
- 摂るタイミング:食事時、1日あたり280〜420mg(シリマリン換算)
- 相性:ビタミンE、αリポ酸、N-アセチルシステイン
- 注意:妊娠中・授乳中の方は医師に相談
- 食品例:サプリメントとして提供されている
シリマリンとは
シリマリン(silymarin)は、ミルクシスル(マリアアザミ、Silybum marianum)の種子から抽出されるフラボノイド複合体で、シリビニンA・B(silibinin A/B)、シリクリスチン(silychristin)、シリジアニン(silidianin)、イソシリビニン(isosilybin)などの成分で構成されています。
シリビニンは、シリマリンの主要成分で、全体の約50〜70%を占め、肝臓保護作用の中心的な役割を果たすと考えられています。
ミルクシスルは、ヨーロッパと北アフリカ原産のキク科植物で、古代ギリシャ時代から肝臓や胆嚢の健康維持のために利用されてきました。現代では、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝硬変、肝炎などの肝臓疾患のサポートとして研究されています。
臨床研究では、シリマリン280〜420mg/日(シリビニン換算で約140〜300mg/日)が用いられており、8週間〜6ヶ月程度の継続摂取で評価されています。
からだでの働きと科学的知見
シリマリンは、肝臓保護、抗酸化作用、抗炎症作用、脂質代謝との関連で広く研究されています。
肝酵素レベルとの関連
2023年12月に発表されたシステマティックレビューでは、29件のランダム化比較試験(合計3,846名)を分析し、シリマリンが肝酵素レベル(ALT、AST)の改善に関与することが報告されました。対象者は、アルコール性肝疾患、NAFLD、肝硬変、糖尿病、化学療法を受けている患者など多岐にわたりました。PubMed
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)との関連
2024年3〜4月にAnnals of Hepatology誌に発表されたシステマティックレビューとメタアナリシスでは、シリマリンがNAFLD/NASHにおいてエネルギー代謝の調節、肝損傷の軽減、肝組織の改善に関与する可能性のあるハーブ療法であると結論づけられました。PubMed
シリマリンは、脂質合成の抑制、脂肪酸酸化の促進により肝臓に蓄積した脂肪を減少させ、インスリン抵抗性の改善にも関与する可能性が報告されています。NIH8週間のシリマリン補給により、肥満手術候補者におけるNAFLD患者の超音波脂肪肝グレードと肝酵素が改善され、副作用は報告されませんでした。PMC
抗酸化作用・抗炎症作用
シリマリンは、以下の3つの主要なメカニズムで肝臓保護作用を発揮します:
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抗酸化作用:活性酸素種(ROS)を除去し、脂質過酸化を抑制します。また、グルタチオン(GSH)などの内因性抗酸化物質のレベルを維持します。
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抗炎症作用:NF-κBシグナル伝達経路の阻害を通じて炎症性サイトカインの産生を抑制します。
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抗線維化作用:肝線維化に関与する肝星細胞の活性化を抑制します。
99名の患者を対象としたランダム化試験では、シリマリン700mg×3回/日の48週間投与により、肝線維化の有意な改善が認められ、22.4%の患者で組織学的改善が確認されました(プラセボ群6.0%)。PubMed
肝硬変との関連
肝硬変患者を対象とした複数の試験を統合したプール解析では、シリマリン治療が肝臓関連死の有意な減少と関連していることが報告されています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 肝酵素改善 | 高 | 29件RCT(3,846名)で確認PubMed |
| NAFLD改善 | 中 | メタアナリシスで脂肪蓄積減少を確認 |
| 抗酸化作用 | 高 | 複数の研究で確認 |
| 肝硬変死亡率 | 中 | プール解析で死亡率低下を確認 |
摂り方とタイミング
シリマリンの推奨量は、臨床研究で使用された量に基づき、1日あたり280〜420mg(シリマリン換算)とされています。シリビニン換算では約140〜300mg/日に相当します。
食事と一緒に摂取することが一般的にすすめられます。シリマリンは脂溶性であるため、脂肪を含む食事と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
1日の推奨量を2〜3回に分割して摂取することで、血中濃度を一定に保つことができます。例えば、朝食時・昼食時・夕食時に分割摂取することが推奨されます。
臨床研究では8週間〜6ヶ月程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。
栄養素どうしの関係と注意点
シリマリンは他の栄養素との組み合わせで相乗効果が期待できます。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンE | ○ | 抗酸化作用との相乗効果が期待される |
| αリポ酸 | ○ | 肝臓保護との相乗効果 |
| N-アセチルシステイン | ○ | グルタチオン前駆体、肝臓保護 |
| レシチン | ○ | シリビニン-レシチン複合体で吸収率向上 |
注意点として、シリマリンは一般的には安全性が高いとされていますが、以下の点に注意が必要です:
- 消化器症状:まれに胃腸の不快感、下痢、吐き気が報告されています。
- アレルギー反応:キク科植物(ブタクサ、マリーゴールド、デイジーなど)にアレルギーのある方は、アレルギー反応を起こす可能性があります。
- 妊娠中・授乳中:安全性に関する十分なデータがないため、妊娠中・授乳中の方は医師に相談することが推奨されます。
- 薬物相互作用:シリマリンはCYP450酵素系に影響を与える可能性があるため、特定の薬剤(スタチン、抗凝固薬、糖尿病薬など)との併用時は医師に相談することが推奨されます。
食品から摂るには
シリマリンは、ミルクシスル(マリアアザミ)の種子に含まれていますが、日本の通常の食事からは摂取できません。この成分を摂取する場合は、サプリメントを利用することが一般的です。
サプリメントには、以下のタイプがあります:
- 標準化エキス:シリマリン含有量が70〜80%に標準化された製品が一般的です。
- シリビニン-レシチン複合体(Siliphos®など):レシチンと結合させることで、生体利用率を高めた製品です。通常のシリマリンと比較して約10倍の吸収率を示すとされています。
- ミルクシスル種子粉末:種子をそのまま粉末化した製品ですが、シリマリン含有量が低く、吸収率も劣ります。
製品を選ぶ際は、以下の点に注意してください:
- シリマリン含有量が明示されている製品を選ぶ
- 標準化エキス(silymarin standardized extract)であることを確認
- 第三者機関による品質認証がある製品を優先
信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。
