気分と睡眠の質が気になる人に注目される高級スパイス由来のエキスです。 サフラン(Crocus sativus)は、アヤメ科の植物から採取される赤い柱頭で、主要成分クロシン(crocin)とサフラナール(safranal)が気分の維持や睡眠の質との関連で研究されています。 2024年2月に発表されたシステマティックレビューでは、サフランが神経精神障害の管理において多様な作用機序を持つことが包括的にまとめられました。
- 主な働き:気分の維持、睡眠の質との関連、抗酸化作用、抗炎症作用
- 摂るタイミング:朝食時、1日あたり30mg
- 相性:オメガ3脂肪酸、ビタミンD、マグネシウム
- 注意:妊娠中・授乳中は医師に相談
- 食品例:サフランエキス(サプリメント)
サフランとは
サフラン(Crocus sativus、和名:番紅花)は、アヤメ科の多年草で、花の赤い柱頭(めしべ)が香辛料および生薬として利用されてきました。1本の花から3本の柱頭しか採取できないため、世界で最も高価なスパイスの一つとされています。
サフランの薬理作用は、主要成分であるクロシン(crocin、カロテノイド色素)、サフラナール(safranal、香気成分)、ピクロクロシン(picrocrocin、苦味成分)によるものと考えられています。これらの成分は、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、神経保護作用との関連で注目されています。
サプリメントとしては、サフランエキスが標準化された製品が使用され、臨床研究では1日あたり30mgの摂取が一般的です。日本では、サフラン由来クロシンおよびサフラナールを関与成分とする機能性表示食品が受理されています。
からだでの働きと科学的知見
サフランは、気分の維持、睡眠の質、抗酸化作用、抗炎症作用との関連で研究されています。
神経精神障害との関連
2024年2月に発表されたシステマティックレビューでは、サフランおよびその活性成分が神経精神障害(うつ症状、不安、認知機能など)の管理において、多様な作用機序を持つことが包括的にまとめられました。サフランは、セロトニン、ドーパミン、グルタメート系の調節、抗酸化作用、抗炎症作用、神経保護作用を通じて、神経精神症状の維持に関与する可能性が示されています。PubMed
軽度〜中等度のうつ症状との関連
2013年に発表されたメタアナリシスでは、ランダム化比較試験5件(合計177名)を分析し、サフランが軽度〜中等度のうつ症状の維持に関与することが報告されました。サフランは、プラセボと比較して有意な関与を示し、抗うつ薬(SSRI)と同等の関与を示しました。PubMed
2014年に発表されたシステマティックレビューでは、サフランが軽度〜中等度のうつ症状に対して、プラセボおよび抗うつ薬と同等の関与を示すことが確認されました。作用機序としては、セロトニン再取り込み阻害、NMDA受容体拮抗、抗酸化作用、抗炎症作用が挙げられています。
不安症状との関連
2016年に発表されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、軽度〜中等度の不安および抑うつ症状を持つ成人60名を対象に、サフランエキス(50mg、朝・夕2回)またはプラセボを12週間摂取させました。サフラン摂取群では、不安および抑うつスコアがプラセボ群と比較して有意に改善されました。
睡眠の質との関連
サフラン由来クロシンとサフラナールの摂取により、睡眠の質が気になる方の日中の眠気を軽減し、活力の維持に関与することが報告されています。2021年に発表されたランダム化二重盲検対照臨床試験では、サフランエキスの摂取により、睡眠の質スコアが有意に改善され、睡眠潜時(寝つくまでの時間)の短縮と睡眠効率の向上が確認されました。PubMedマウスを用いた研究では、クロシンが非レム睡眠(睡眠の質の指標)を増加させることが確認されました。
気分と幸福感との関連
2017年に発表されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、健康な成人を対象に、サフランエキス(affron®、28mg/日)を4週間摂取させました。サフラン摂取群では、不安や抑うつ気分の維持、活力の維持に関与することが報告されました。2025年に発表された最新のランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、低気分を経験している成人を対象に、サフランエキス(Affron、28mg/日)を8週間摂取させた結果、気分スコアと総合的な幸福感が有意に改善されました。PubMed
抗酸化作用・抗炎症作用
サフランの主要成分であるクロシン、クロセチン、サフラナールは、強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素種(ROS)を除去します。また、炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症作用を発揮します。これらの作用は、神経細胞の保護や神経伝達物質の調節に関与すると考えられています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 神経精神障害 | 中 | 2024年システマティックレビューPubMed |
| うつ症状 | 中 | メタアナリシス(5件RCT、177名)で確認PubMed |
| 不安症状 | 中 | 12週間RCT(60名)で改善を確認 |
| 睡眠の質 | 低〜中 | 日中眠気軽減、非レム睡眠増加の報告 |
摂り方とタイミング
サフランの推奨量は、臨床研究で使用された量に基づき、サフランエキスとして1日あたり30mg程度とされています。製品によって推奨量が異なるため、製品の表示に従うことが重要です。
朝食時に摂取することが一般的にすすめられます。一部の研究では、1日量を2回(朝・夕)に分けて摂取する方法も用いられています。
サフランエキスは、クロシンおよびサフラナール含有量が標準化された製品を選ぶことが推奨されます。日本では、サフラン由来クロシンおよびサフラナールを関与成分とする機能性表示食品が受理されており、「一時的な不安や気分の落ち込みや混乱を和らげ、活力の低下を軽減する」ことが報告されています。
臨床研究では4〜12週間程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。
栄養素どうしの関係と注意点
サフランは他の栄養素との組み合わせで相乗効果が期待できます。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| オメガ3脂肪酸 | ○ | 気分の維持との相乗効果が期待される |
| ビタミンD | ○ | 気分の維持との関連 |
| マグネシウム | ○ | 神経系の機能維持をサポート |
| ビタミンB群 | ○ | 神経伝達物質の合成に関与 |
注意点として、サフランは一般的には安全性が高いとされていますが、以下の点に注意が必要です:
- 妊娠中・授乳中:サフランは子宮収縮作用との関連が報告されているため、妊娠中の摂取は避けることが推奨されます。授乳中の安全性についても十分なデータがないため、医師に相談することが推奨されます。
- 抗うつ薬との併用:サフランはセロトニン系に作用するため、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬との併用は、医師に相談することが推奨されます。セロトニン症候群のリスクが懸念されます。
- 双極性障害:躁状態を誘発する可能性があるため、双極性障害の方は医師に相談することが推奨されます。
- アレルギー:アヤメ科植物にアレルギーのある方は、アレルギー反応を起こす可能性があります。
食品から摂るには
サフランは、香辛料として料理に使用されますが、臨床研究で使用されている量(30mg)を食品から摂取することは現実的ではありません。サフラン1gは数千円と非常に高価であり、通常の料理では数本(数mg)程度しか使用しません。
| 食品 | サフラン含有量(目安) |
|---|---|
| サフランライス(1人前) | 約0.05〜0.1g(50〜100mg) |
| パエリア(1人前) | 約0.05〜0.1g(50〜100mg) |
| サフランティー(1杯) | 約0.03〜0.05g(30〜50mg) |
1日の推奨量(30mg)を食品から摂取するには:
- サフランティー:1杯程度(ただし、エキスとしての標準化はされていない)
料理でのサフラン使用:
- サフランライス、パエリア、ブイヤベースなどの料理に使用
- 色と香りを楽しむ目的で、少量を使用
- 熱湯で抽出してから使用することで、色と香りがよく出る
気分の維持や睡眠の質との関連を期待する場合は、クロシンおよびサフラナール含有量が標準化されたサフランエキスのサプリメントを利用することが推奨されます。信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。
