プロバイオティクス

サッカロマイセス・ブラウディ(酵母菌)|抗生物質関連下痢とIBDが気になる人の酵母プロバイオティクスサポート

抗生物質関連下痢やIBDが気になる方に向けて、サッカロマイセス・ブラウディ酵母菌が抗生物質関連下痢の予防、炎症性腸疾患の症状緩和、腸内細菌叢の保護、免疫調節機能にどのように関与するかを、最新の科学的根拠と共に詳しく解説します。

※ 主な作用: 腸内環境サポート

サッカロマイセス・ブラウディ(酵母菌)|抗生物質関連下痢とIBDが気になる人の酵母プロバイオティクスサポート
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

参考値

5,000,000,00010,000,000,000 cfu(出典: プロバイオティクス研究サッカロマイセス・ブラウディ。50億〜100億CFU

抗生物質治療による下痢や炎症性腸疾患が気になる人に向けた、熱帯果実由来の酵母プロバイオティクスです。 サッカロマイセス・ブラウディは、一般的な細菌性プロバイオティクスと異なり酵母であるため、抗生物質の影響を受けずに腸まで到達し効果を発揮できます。 50年以上の研究で、抗生物質関連下痢の予防、クロストリジウム・ディフィシル感染症の予防、炎症性腸疾患の症状緩和が確認されています。

  • 主な働き:抗生物質関連下痢の予防、腸内細菌叢の保護、炎症性サイトカイン抑制、腸管バリア機能強化
  • 摂るタイミング:抗生物質の2時間前後、1日2回(朝・夕)に分割、食前または食間の空腹時
  • 相性:抗生物質と併用可能(酵母のため影響を受けない)、水溶性食物繊維・ビタミンB群との相乗効果
  • 注意:重度の免疫不全・中心静脈カテーテル留置患者は医師に相談、酵母アレルギーの方は使用不可
  • 推奨量:250~500mg/日(約50~100億CFU/日)、目的により異なる

サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)とは

サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)は、1923年にフランスの科学者Henri Boulard氏によって、インドシナのライチとマンゴスチンの果実から分離された熱帯果実由来の酵母菌です。一般的なプロバイオティクスは乳酸菌やビフィズス菌などの細菌ですが、サッカロマイセス・ブラウディは酵母という点で独特です。

酵母は真核生物であり、細菌を標的とする抗生物質の影響を受けないため、抗生物質治療中でも生きて腸まで到達し効果を発揮できるという大きな利点を持っています。また、体温37°Cでも安定的に活動し、腸管で一時的に定着した後、摂取中止後2-5日間で自然に排出される特性があります。

2023年に発表された包括的レビューでは、サッカロマイセス・ブラウディCNCM I-745株の独自特性が詳細にまとめられ、抗生物質耐性、温度耐性、病原性の欠如、一時的定着、抗炎症・抗毒素作用が確認されています。PMCサッカロマイセス・ブラウディは、抗生物質関連下痢(AAD)クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)、**炎症性腸疾患(IBD)**など、多様な消化器疾患の予防と管理に関与することが、50年以上の研究で実証されています。

からだでの働きと科学的知見

サッカロマイセス・ブラウディは、腸内環境の保護、免疫調節、抗炎症作用を通じて、消化器の健康維持に多面的に関与します。

抗生物質関連下痢(AAD)の予防を助ける

サッカロマイセス・ブラウディの最も確立された効果は、抗生物質関連下痢(AAD)の予防です。抗生物質は細菌感染症の治療に不可欠ですが、有益な腸内細菌も同時に破壊してしまうため、下痢が副作用として発生します。AADは抗生物質治療を受ける患者の5~35%で発生します。

2015年の包括的メタアナリシス(21研究、4780名)では、サッカロマイセス・ブラウディの摂取により、AADのリスクが18.7%から8.5%に減少(リスク比0.47、95%CI: 0.38-0.57)し、小児と成人の両方で効果が確認されました。PubMed2024年に発表されたエビデンスベースレビューでは、サッカロマイセス・ブラウディCNCM I-745とラクトバチルス・ラムノサスGGが、AAD緩和において高いエビデンスレベルを持つことが再確認されています。PMC

2024年のSPAADA試験(多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験)では、サッカロマイセス・ブラウディを含む高用量マルチストレインプロバイオティクスが、成人のAAD予防に有効であることが確認されました。PubMed酵母であるため抗生物質の影響を受けず、腸内細菌叢のバランス維持を助け、病原菌(特にクロストリジウム・ディフィシル)の増殖を抑制し、腸管バリア機能を保護します。

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の予防に関与する

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)は、抗生物質治療後に腸内で異常増殖し、重症の下痢や偽膜性大腸炎を引き起こす病原菌です。サッカロマイセス・ブラウディは、C. difficile毒素の受容体阻害と菌の増殖抑制を通じて、CDIの予防に関与します。

2015年のメタアナリシスでは、小児においてサッカロマイセス・ブラウディがCDI関連下痢のリスクを有意に75%減少させることが示されました(2研究、579名、リスク比0.25、95%CI: 0.08-0.73)。サッカロマイセス・ブラウディは、C. difficile毒素A・Bの腸管細胞受容体への結合を阻害し、プロテアーゼを分泌して毒素を分解し、抗菌ペプチドの産生により菌の増殖を直接抑制し、腸内細菌叢の回復を促進します。

炎症性腸疾患(IBD)の症状緩和を助ける

サッカロマイセス・ブラウディは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)患者において、症状の緩和と寛解維持に関与する可能性が示されています。臨床研究では、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎患者25名にメサラジンとサッカロマイセス・ブラウディを4週間投与した結果、68%の患者で治療への反応が確認されました。

2024年の研究では、サッカロマイセス・ブラウディが小腸細菌過剰増殖(SIBO)を伴う肝硬変患者において、3ヶ月の治療後にSIBO消失率80.0%(プラセボ群23.1%、p=0.002)を達成し、腸内細菌叢の組成改善と短鎖脂肪酸(SCFA)の発現増加が確認されました。PMCサッカロマイセス・ブラウディは、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-8)の産生抑制、NF-κBシグナル経路の調節、腸管バリア機能の強化、短鎖脂肪酸産生菌の増加促進を通じて、IBDの症状緩和に寄与します。

腸内細菌叢の保護と免疫調節機能に関与する

サッカロマイセス・ブラウディは、腸内細菌叢のバランス維持と免疫システムの調節に多面的に関与します。2024年に発表された総説では、サッカロマイセス・ブラウディの乳製品応用と健康促進における役割が包括的にまとめられ、広いpH範囲での生存能力、抗生物質耐性、定常状態到達能力が、細菌性プロバイオティクスに対する利点として強調されています。PMC

サッカロマイセス・ブラウディは、酪酸産生菌の増加、病原菌の増殖抑制、腸内pH調整を通じて腸内細菌叢を改善し、腸管免疫細胞(T細胞、樹状細胞)の活性化、sIgA(分泌型免疫グロブリンA)の産生促進、Th1/Th2バランスの調整、腸管バリア機能(タイトジャンクション)の強化を通じて免疫調節を行います。これらの作用により、過敏性腸症候群(IBS)のストレス性腹痛や下痢の緩和、旅行者下痢症の予防にも有用とされています。

研究テーマ エビデンス強度 補足
抗生物質関連下痢の予防 複数のメタアナリシスで確認、小児・成人で有効
クロストリジウム・ディフィシル 小児で75%リスク減少、成人でも減少傾向
炎症性腸疾患の症状緩和 パイロット研究で有効性示唆、大規模研究が必要
腸内細菌叢の保護と免疫調節 多数のin vitro・in vivo研究で確認

摂り方とタイミング

臨床研究に基づく推奨摂取量は、250~500mg/日(約50~100億CFU/日)が一般的です。目的により用量が異なります。

推奨用量と摂取期間:

  • 抗生物質関連下痢の予防:250-500mg/日(2回分割)、抗生物質治療開始と同時~治療終了後1週間
  • クロストリジウム・ディフィシル感染予防:500mg/日(2回分割)、抗生物質治療期間中
  • IBDの症状管理:500mg~1g/日、継続的摂取(医師の指導下)
  • 旅行者下痢症の予防:250mg/日、旅行開始5日前~旅行中
  • 一般的な腸内環境サポート:250mg/日、継続的摂取

効果的な摂取タイミング:

  • 抗生物質との併用時:抗生物質服用の2時間前または2時間後(吸収や効果の最適化のため)
  • 食事との関係:食前または食間の空腹時(胃酸の影響を軽減し、腸まで効率的に到達)
  • 1日の摂取回数:1日2回(朝・夕)に分けると効果的(腸管での定着時間を延長し、持続的な効果を維持)

サッカロマイセス・ブラウディは腸管に一時的に定着し、摂取中止後2-5日で排出されるため、継続的な摂取が効果維持に重要です。製品により菌数(CFU)が異なるため、ラベルの指示に従ってください。

栄養素どうしの関係と注意点

サッカロマイセス・ブラウディは、50年以上の使用実績があり、一般的に安全性が高いプロバイオティクスとされています。非病原性酵母であり、通常の健康な人には病原性を示さず、抗生物質との併用が可能です。

併用で効果が期待できる成分:

組み合わせ 推奨度 コメント
サッカロマイセス・ブラウディ×抗生物質 併用可能、AAD予防に最適
サッカロマイセス・ブラウディ×イヌリン プレバイオティクスとして腸内細菌の基質となる
サッカロマイセス・ブラウディ×ビタミンB群 腸管神経機能のサポート、上皮細胞の再生を助ける
サッカロマイセス・ブラウディ×グルタミン 腸管上皮細胞のエネルギー源、バリア機能強化に寄与
サッカロマイセス・ブラウディ×オメガ3脂肪酸 抗炎症作用により、IBD症状の緩和を補助

注意が必要な場合:

以下の状況では、サッカロマイセス・ブラウディの使用に注意が必要です。

  • 重度の免疫不全:HIV/AIDSの末期患者、臓器移植後の強力な免疫抑制療法中、化学療法中の重度の好中球減少症では、稀に真菌血症(fungemia)のリスクがあります。
  • 中心静脈カテーテル留置患者:カテーテルを介した全身感染のリスクが報告されています(極めて稀)。
  • 酵母アレルギー:酵母に対する既知のアレルギーがある場合は使用不可です。
  • 妊娠・授乳中:安全性データが限定的であるため、医師に相談が推奨されます。

臨床試験では、サッカロマイセス・ブラウディの摂取による重篤な副作用は稀です。軽微な副作用として、腹部膨満感、ガス(鼓腸)、軽度の便秘(一時的)、口渇が稀に報告されていますが、通常軽度で一時的であり、数日以内に自然に解消します。

食品から摂るには

サッカロマイセス・ブラウディは主にサプリメントとして利用され、食品としての流通はほとんどありません。伝統的にはロシアや北欧で根を煎じたお茶が飲まれていましたが、苦味が強く含有量も一定しないため、現代ではカプセルや錠剤の形が実用的です。

製品選びのポイント:

  1. 菌株の明記:「Saccharomyces boulardii CNCM I-745」など、具体的な菌株名が記載されているもの
  2. CFU(Colony Forming Units):最低50億CFU/カプセルの製品を選ぶ
  3. カプセル剤:胃酸からの保護のため、カプセル剤が推奨される
  4. 第三者認証:GMP認証、USP認証など、品質管理が確認されているもの
  5. 保存方法:常温保存可能なものが多いが、高温多湿を避ける

日常の食事では、ストレス応答を支える水溶性食物繊維(イヌリン、ペクチン)やビタミンB群(ビタミンB1、B6、葉酸)を充足させることが、サッカロマイセス・ブラウディの働きを補う土台となります。

よくある質問

Q. サッカロマイセス・ブラウディは抗生物質と一緒に飲んでも効果がありますか?

はい、効果があります。むしろ抗生物質と同時に摂取することが推奨されています。サッカロマイセス・ブラウディは酵母であり、細菌を標的とする抗生物質の影響を受けません。これが細菌由来のプロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)との最大の違いです。抗生物質治療開始と同時にサッカロマイセス・ブラウディも開始し、抗生物質服用の2時間前または2時間後に摂取し、抗生物質治療終了後も1週間継続摂取することで、AAD(抗生物質関連下痢)のリスクを約50%減少させることができます。

Q. どのくらいの期間摂取すれば効果が現れますか?

目的によって異なりますが、抗生物質関連下痢の予防では抗生物質治療開始と同時に摂取開始し治療終了後1週間継続(通常2-3週間)、急性下痢の改善では3-5日で症状の改善が期待でき、IBDの症状管理では4週間以上の継続摂取で効果が現れ始めます。サッカロマイセス・ブラウディは腸管に一時的に定着し、摂取中止後2-5日で排出されるため、継続的な摂取が効果維持に重要です。

Q. 乳酸菌のプロバイオティクスとサッカロマイセス・ブラウディはどちらが良いですか?併用できますか?

どちらも優れたプロバイオティクスですが、特性が異なります。併用も可能で、相乗効果が期待できます。サッカロマイセス・ブラウディの利点は、抗生物質治療中でも効果を発揮(酵母のため抗生物質に耐性)、抗生物質関連下痢の予防効果が特に強い、C. difficile感染症の予防に有効、常温保存可能で安定性が高いことです。乳酸菌・ビフィズス菌プロバイオティクスの利点は、腸管に長期定着し継続的に乳酸や短鎖脂肪酸を産生、より多様な健康効果(免疫調節、アレルギー予防、栄養吸収促進など)、日常的な腸内環境維持に適していることです。2024年のSPAADA試験では、サッカロマイセス・ブラウディと複数の乳酸菌・ビフィズス菌を組み合わせたマルチストレインプロバイオティクスが、AAD予防により効果的であることが示されました。

Q. 副作用はありますか?

一般的に安全性は高く、重篤な副作用の報告はほとんどありません。臨床試験では、軽微な副作用として腹部膨満感、ガス(鼓腸)、軽度の便秘(一時的)、口渇が稀に報告されていますが、通常軽度で一時的であり、数日以内に自然に解消します。ただし、重度の免疫不全患者、中心静脈カテーテル留置患者、酵母アレルギーの方は使用前に医師に相談してください。

Q. 妊娠・授乳中でも使用できますか?

安全性データが限定的であるため、医師に相談することが推奨されます。通常の食事からのプロバイオティクス摂取は問題ないとされていますが、高用量のサプリメント使用については十分なデータがありません。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。