抗酸化と心血管の健康が気になる人に注目される植物由来のフラボノイドです。 ケルセチン(quercetin)は、玉ねぎ、りんご、緑茶などに含まれる天然のフラボノイドで、抗酸化作用、抗炎症作用、血管機能との関連で広く研究されています。 心筋梗塞後患者88名を対象とした臨床試験では、ケルセチン500mg/日を8週間摂取したグループで、血清総抗酸化能が有意に増加し、TNF-α(炎症マーカー)が有意に減少したと報告されています。
- 主な働き:抗酸化作用、抗炎症作用、血管機能との関連、血圧との関連
- 摂るタイミング:昼食時、1日あたり500〜1000mg
- 相性:ビタミンC、ブロメライン、ビタミンE
- 注意:抗凝固薬との併用は医師に相談
- 食品例:玉ねぎ、りんご、緑茶、ブロッコリー、ケール
ケルセチンとは
ケルセチン(quercetin)は、植物に広く分布するフラボノイド(ポリフェノール)の一種で、特に玉ねぎの外皮、りんごの皮、緑茶、ブロッコリー、ケールなどに豊富に含まれています。
フラボノイドは、植物が紫外線や病原体から身を守るために生成する色素成分で、ケルセチンは黄色の色素として知られています。ヒトの体内では合成されないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。
ケルセチンは、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、活性酸素種(ROS)を除去し、酸化ストレスを軽減することで、細胞の健康維持に関与します。また、血管内皮機能の維持、血圧の調整、脂質代謝との関連でも注目されています。
臨床研究では、1日あたり500〜1000mg程度のケルセチン摂取が用いられており、心血管系の健康維持や炎症の軽減との関連が評価されています。
からだでの働きと科学的知見
ケルセチンは、抗酸化作用、抗炎症作用、心血管機能との関連で広く研究されています。
心血管系への関与
2020年に発表されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、心筋梗塞後患者88名を対象に、ケルセチン500mg/日またはプラセボを8週間摂取させました。ケルセチン摂取群では、血清総抗酸化能(TAC)がプラセボ群と比較して有意に増加し、炎症マーカーであるTNF-α(腫瘍壊死因子α)が有意に減少しました。PubMed
2025年の最新レビューでは、ケルセチンが血管内皮機能、炎症、心血管疾患、脂質代謝に及ぼす影響がまとめられており、血圧低下、コレステロール値の改善、内皮機能の向上との関連が報告されています。また、2024年に発表されたレビューでは、ケルセチンが糖尿病性心筋症の管理において有望な効果を示し、心筋および細胞・分子レベルでの心保護特性が強調されています。PubMed
ケルセチンの心血管系への作用機序としては、抗酸化作用、抗血小板凝集作用、心筋線維化の軽減、血管内皮保護、不整脈予防、虚血再灌流障害の軽減、血圧調整などが挙げられています。
抗酸化作用と抗炎症作用
ケルセチンは、活性酸素種(ROS)を直接除去する抗酸化作用と、体内の抗酸化酵素(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなど)の活性を高める作用の両方を持ちます。これにより、酸化ストレスを軽減し、細胞の健康維持に関与します。2025年に発表された高齢者の眼疾患に関するレビューでは、ケルセチンが細胞老化、酸化ストレス、炎症を標的とし、加齢に伴う眼機能障害の軽減に寄与するセノリティクス効果が報告されています。PubMed また、2025年の皮膚に関するシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、ケルセチンが強力な抗酸化特性を示し、MDA、ROS、LPOのレベルを有意に低下させ、GSH、CAT、SODの酵素活性を増強することが確認されています。PubMed
また、ケルセチンは炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1βなど)の産生を抑制し、抗炎症作用を発揮します。これにより、慢性炎症の軽減に関与する可能性があります。2024年の臨床試験では、COVID-19と2型糖尿病を併発した患者において、ケルセチンの使用が急性期指標を確実に減少させ、内皮機能障害の軽減と血栓性合併症の予防に重要な臨床的意義を持つことが示されました。PubMed
血圧との関連
メタアナリシスでは、ケルセチン摂取により収縮期血圧が平均7.5mmHg低下することが報告されています。この血圧低下作用は、血管拡張、内皮機能の改善、一酸化窒素(NO)産生の増加などによると考えられています。
脂質代謝との関連
ケルセチンは、LDLコレステロールの酸化を抑制し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の増加に関与する可能性が報告されています。また、脂肪燃焼の活性化やミトコンドリア活性の向上との関連も示唆されています。2024年の研究では、ケルセチンが代謝関連脂肪性肝疾患(MAFLD)において、肝脂質代謝、酸化ストレス、炎症を調整することで、肝機能の改善に寄与することが確認されています。PubMed
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 抗酸化作用 | 高 | 心筋梗塞後患者でTAC増加を確認PubMed |
| 抗炎症作用 | 高 | TNF-α減少を確認 |
| 血圧低下 | 中 | メタアナリシスで収縮期血圧7.5mmHg低下 |
| 脂質代謝 | 中 | LDL酸化抑制、HDL増加の報告あり |
摂り方とタイミング
ケルセチンの推奨量は、臨床研究で使用された量に基づき、1日あたり500〜1000mg程度とされています。製品によって推奨量が異なるため、製品の表示に従うことが重要です。
食事と一緒に昼食時に摂取することが一般的にすすめられます。ケルセチンは脂溶性であるため、脂肪を含む食事と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
ケルセチンは、通常のケルセチン(quercetin aglycone)とケルセチン配糖体(quercetin glycoside)の形態があります。通常のケルセチンは吸収率が低いため、吸収率を高めた製品(ケルセチンフィトソーム、ケルセチン配糖体など)も市販されています。
臨床研究では8週間程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。
栄養素どうしの関係と注意点
ケルセチンは他の栄養素との組み合わせで相乗効果が期待できます。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンC | ◎ | ケルセチンの安定性を高め、相乗的な抗酸化作用 |
| ブロメライン | ○ | パイナップル由来酵素、ケルセチンの吸収促進 |
| ビタミンE | ○ | 脂溶性抗酸化物質との相乗効果 |
| ルチン | ○ | 同じフラボノイド、血管強化との関連 |
注意点として、ケルセチンは一般的には安全性が高いとされていますが、以下の点に注意が必要です:
- 抗凝固薬との相互作用:ケルセチンは血液凝固を抑制する可能性があるため、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用している方は、医師に相談することが推奨されます。
- 腎機能障害:高用量のケルセチンは腎臓に負担をかける可能性があるため、腎機能障害のある方は医師に相談することが推奨されます。
- 妊娠中・授乳中:安全性に関する十分なデータがないため、妊娠中・授乳中の方は医師に相談することが推奨されます。
食品から摂るには
ケルセチンは、以下の食品に含まれています。
| 食品 | ケルセチン含有量(100gあたり) |
|---|---|
| 玉ねぎ(外皮) | 約200〜500mg |
| 玉ねぎ(可食部) | 約20〜50mg |
| りんご(皮付き) | 約10〜40mg |
| 緑茶(乾燥茶葉) | 約2〜10mg |
| ブロッコリー | 約3〜10mg |
| ケール | 約5〜20mg |
1日の推奨量(500mg)を食品から摂取するには:
- 玉ねぎ(可食部):約1〜2.5kg
- りんご(皮付き):約1.25〜5kg
食品からの摂取では、臨床研究で使用されている量(500〜1000mg)を摂取することは現実的ではないため、ケルセチンを意識的に摂取したい場合は、サプリメントを利用することが一般的です。
食品からの摂取のポイント:
- 玉ねぎは外皮に最も多く含まれるため、外皮を煎じたお茶として利用する方法もあります
- りんごは皮ごと食べることで、より多くのケルセチンを摂取できます
- 緑茶は温かい状態で飲むことで、ケルセチンの抽出効率が高まります
サプリメントとして摂取する場合は、吸収率を高めた製品(ケルセチンフィトソーム、ケルセチン配糖体など)を選ぶことで、より効率的な摂取が可能になります。信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。
