排尿時の違和感や頻尿が気になる中高年男性に向けた、前立腺健康サポートが研究されている植物油です。 パンプキンシードオイルは良性前立腺肥大症(BPH)の症状緩和に関与し、ファイトステロールを豊富に含みます。 朝夕の食事とともに摂取するのが一般的で、比較的安全性が高いとされています。
- 主な働き:前立腺健康サポート・尿路症状の緩和・ファイトステロール供給
- 摂るタイミング:朝・夕の食事時、1日2回
- 注意:医薬品との相互作用に配慮、継続摂取が前提
- 対象:中高年男性で排尿症状が気になる方
- 食品例:カボチャの種、カボチャ種子油
パンプキンシードオイルとは
パンプキンシードオイル(Pumpkin seed oil)は、カボチャ(学名:Cucurbita pepo)の種子から圧搾抽出される植物油です。ヨーロッパ、特にオーストリアでは伝統的に食用油として使われてきましたが、近年では前立腺健康をサポートする機能性成分として注目されています。
パンプキンシードオイルの主な機能性成分は、ファイトステロール(植物ステロール)、特にΔ7-ファイトステロールです。また、不飽和脂肪酸、ビタミンE、カロテノイド、亜鉛なども含まれています。
良性前立腺肥大症(BPH: Benign Prostatic Hyperplasia)は、50歳以上の男性の約50%、80歳以上では約90%が経験する一般的な疾患で、排尿困難、頻尿、夜間頻尿などの下部尿路症状(LUTS)を引き起こします。パンプキンシードオイルは、これらの症状緩和を目的とした代替療法として複数の臨床試験で研究されています。Cucurbita pepoの利用は良性前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の管理において、症状と生活の質の改善に有用であることが示されています。PubMed
からだでの働きと科学的知見
パンプキンシードオイルは、主に5α-リダクターゼ阻害作用とファイトステロールの抗炎症作用を通じて前立腺健康に関与すると考えられています。
作用機序
パンプキンシードオイルに豊富に含まれるファイトステロール、特にΔ7-ファイトステロールは、5α-リダクターゼ酵素を阻害します。この酵素はテストステロンをより活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換する役割を持ち、DHTの過剰産生が前立腺肥大の主要な原因の一つとされています。動物実験では、パンプキンシードオイルがテストステロン誘発性の前立腺肥大を抑制することが示されており、良性前立腺肥大症の管理に有益である可能性が示唆されています。PubMed
動物実験では、カボチャ種子油の総ファイトステロール(TPS)の87.64%がΔ7-ファイトステロールであり、BPHラットにおいて5α-リダクターゼ、アンドロゲン受容体(AR)、ステロイド受容体コアクチベーター1(SRC-1)の発現を有意に抑制しました。さらに、細胞増殖とアポトーシスのバランスを調整することが示されています。PMC
臨床試験での知見
複数の臨床試験でパンプキンシードオイルの有効性が検討されています。
GRANU研究(2014年):ドイツ泌尿器科学天然物研究(GRANU)による大規模試験では、1,431名の男性(50-80歳)を対象に、カボチャ種子抽出物の有効性が評価されました。この研究では、良性前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の改善が報告されています。PubMed
イラン臨床試験(2021年):73名のBPH患者を対象とした単盲検ランダム化試験では、パンプキンシードオイル360mg×2回/日を3ヶ月間摂取したグループは、国際前立腺症状スコア(IPSS)が有意に改善し、副作用は報告されませんでした。ただし、効果はタムスロシン(医薬品)より劣っていました。PMC
韓国臨床試験(12ヶ月研究):47名の韓国人男性を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、パンプキンシードオイル320mg/日を12ヶ月間摂取したグループでは、3ヶ月時点でIPSSが改善し、症状改善率は58.0%でした。副作用は報告されませんでした。ソーパルメット油との併用グループでは75.3%の改善率が見られました。PMC
24ヶ月非介入研究:130名の男性を対象とした24ヶ月の研究では、カボチャ種子抽出物の摂取により、IPSS、生活の質(QoL)、国際勃起機能指数が評価され、長期安全性が確認されました。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 前立腺症状緩和 | 中〜高 | 複数のRCTで報告 |
| 5α-リダクターゼ阻害 | 中 | 動物実験で確認 |
| 副作用プロファイル | 高 | 臨床試験で副作用なし |
| 尿流量改善 | 中 | 複数の試験で報告 |
摂り方とタイミング
パンプキンシードオイルは、食事とともに摂取するのが一般的です。
臨床研究では、1日あたり320〜720mgの用量が使用されています。一般的な摂取量は、1日320〜360mg×2回(計640〜720mg/日)を朝食時と夕食時に分けて摂取します。
脂溶性成分が多いため、食事と一緒に摂ることで吸収が向上します。効果を実感するまでには数週間から数ヶ月かかることが一般的で、継続的な摂取が推奨されます。
栄養素どうしの関係と注意点
パンプキンシードオイルは、他の栄養素や医薬品との相互作用に配慮が必要です。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ソーパルメット × パンプキンシードオイル | ○ | 相乗効果の報告あり |
| BPH治療薬(α遮断薬など) | △ | 医師に相談必須、併用効果の可能性 |
| 降圧薬 | △ | 血圧に影響する可能性、医師に相談 |
| 亜鉛サプリメント | ○ | 前立腺健康の相乗効果 |
| ビタミンE | ○ | 両方とも抗酸化作用 |
注意点:
- 前立腺疾患の医療:前立腺肥大症や前立腺がんの診断・治療を受けている方は、必ず医師に相談してください。サプリメントは医薬品の代替にはなりません
- 手術予定:手術予定がある場合は、2週間前からの中止を検討してください
- アレルギー:カボチャやウリ科植物にアレルギーのある方は注意が必要です
- 消化器症状:高用量では胃腸の不快感が出る可能性があります
食品から摂るには
パンプキンシードオイルの有効成分は、主にカボチャの種に含まれています。
パンプキンシードオイルを含む食品:
- カボチャの種(ローストまたは生)
- カボチャ種子油(食用油)
- パンプキンシードバター
食品含有量の目安:
- カボチャ種子油:100%純粋なオイル
- ローストカボチャシード(30g):約5〜7gのオイル成分
ただし、臨床研究で使用されている用量(320〜720mg/日のカボチャ種子油)を食品から摂取するには、ローストしたカボチャの種を大さじ2〜3杯程度摂る必要があり、継続的な摂取が必要です。機能性を期待する場合は、標準化されたサプリメントの方が効率的と考えられます。
調理のポイント:
- カボチャの種はローストすることで風味が増し、食べやすくなります
- 食用のカボチャ種子油はサラダドレッシングやスープの仕上げに使えます
- 加熱調理には向かないため、生食または低温での使用が推奨されます
