ハーブ・植物エキス

プエラリア・ミリフィカエキス|植物性エストロゲン様作用と安全性への配慮

更年期や骨の健康が気になる人に向け、プエラリア・ミリフィカエキスの植物性エストロゲン様作用と、使用前に知っておくべき安全性の注意点を一次情報に基づいて解説します。

※ 主な作用: 植物性エストロゲン様作用

緑の葉を持つ紫色の花の接写
Photo by Leo Chane
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

更年期や骨の健康が気になる人に向けたタイ原産の植物エキスです。プエラリア・ミリフィカエキスはミロエストロールやデオキシミロエストロールなどの強力な植物性エストロゲン様成分を含みます。研究では骨代謝への関与が示されていますが、日本では有害事象の報告もあり、使用前に医師への相談が必須です。

  • 主な働き:植物性エストロゲン様作用、骨代謝への関与(研究段階)
  • 摂るタイミング:食事と一緒に、医師の指導のもとで
  • 相性:エストロゲン製剤との併用は医師に相談必須
  • 注意:月経不順・不正出血などの有害事象報告あり、妊娠中・授乳中は避ける
  • 食品例:サプリメント形態(標準化されたエキス)

プエラリア・ミリフィカエキスとは

プエラリア・ミリフィカ(Pueraria candollei var. mirifica)は、タイ原産のマメ科の植物で、伝統的に更年期症状の緩和に使用されてきました。この植物からは少なくとも17種類の植物性エストロゲン(主にイソフラボン)が分離されています。PubMed

特にミロエストロールとデオキシミロエストロールは、エストロゲン活性が17β-エストラジオールとほぼ同等の強力な成分として知られています。これらの成分がエストロゲン様作用を示すことが研究で確認されています。

からだでの働きと科学的知見

プエラリア・ミリフィカエキスの主な働きは、植物性エストロゲン様作用による骨代謝や更年期症状への関与です。ただし、安全性への懸念も報告されています。

骨代謝への影響

健康な閉経後女性(45〜60歳)を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、1日20、30、または50mgのプエラリア・ミリフィカを24週間摂取したグループで、骨代謝回転率へのエストロゲン様作用が示されました。PubMed

骨特異的アルカリホスファターゼが24週間後に有意に減少し(0.22±0.18 U/Lから0.13±0.01 U/Lへ)、骨代謝回転が低下したことが示唆されています。

動物実験では、自然閉経したサルにおいて、プエラリア・ミリフィカが皮質骨の損失を緩和することが報告されています。PubMed

安全性への懸念

2017年、日本の国民生活センターに、プエラリア・ミリフィカを含むサプリメントに関連する多くの有害事象が報告されました。主な有害事象は月経不順や不正出血で、エストロゲン様作用によって引き起こされた可能性があります。PMC

動物実験では、プエラリア・ミリフィカが乳腺と子宮にエストロゲン様作用を示し、ラットの乳腺発がんを促進することが示されています。PMCこのデータは、植物性エストロゲンへの長期曝露が乳腺や子宮内膜に及ぼす影響について安全性に疑問を投げかけています。

臨床試験での安全性プロファイル

24週間の臨床試験では、プエラリア・ミリフィカ群とプラセボ群の間で、乳房組織、全血球計算、肝臓・腎臓機能検査における有害作用に有意な差は認められず、子宮内膜増殖や過形成は報告されませんでした。

ただし、一部の被験者で一過性の貧血や肝臓プロファイルの悪化が見られました。また、血清C反応性タンパク質が2倍になりました。

更年期症状への効果

系統的レビューでは、方法論的な欠点(特にプラセボ効果が内在する自己評価・想起質問票)やプエラリア・ミリフィカの標準化がなされていないため、更年期症状への有効性は結論が出ていないとされています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
骨代謝への影響 ヒト試験で骨代謝マーカー改善
更年期症状 方法論的欠点により結論不明
安全性懸念 有害事象報告・動物実験で懸念
子宮内膜への影響 短期試験では増殖なし

摂り方とタイミング

臨床研究では、1日20〜50mg程度のプエラリア・ミリフィカエキスが使用されています。ただし、安全性への懸念があるため、使用前に必ず医師に相談してください。

食事と一緒に摂取することで、胃腸への負担を軽減できる可能性があります。最適な用量と望ましくない副作用を避けるバランスは、使用前に計算する必要があります。

栄養素どうしの関係と注意点

組み合わせ 推奨度 コメント
エストロゲン製剤 × 相互作用の可能性、医師に相談必須
ホルモン療法 × 併用は避ける、医師に相談必須
抗凝固薬 相互作用の可能性、医師に相談

プエラリア・ミリフィカエキスは強力なエストロゲン様作用を持つため、以下の場合は使用を避けるか、医師に相談してください:

  • 妊娠中・授乳中
  • エストロゲン依存性腫瘍の既往または家族歴
  • 乳がん、子宮がんの既往または家族歴
  • 血栓症のリスクがある人
  • 肝臓・腎臓に疾患がある人

サプリメントとして摂るには

プエラリア・ミリフィカは以下の形態で利用されます:

  • 標準化エキス:サプリメント形態(1日20〜50mg程度)
  • 粉末カプセル:製品により含量が異なる
  • 注意点
    • 製品の標準化と品質管理が重要
    • ミロエストロールとデオキシミロエストロールの含量を確認
    • 信頼できるメーカーの製品を選択

よくある質問

Q. プエラリア・ミリフィカエキスは安全?

日本の国民生活センターに多くの有害事象(月経不順、不正出血など)が報告されています。動物実験では乳腺への影響も示されています。使用前に必ず医師に相談し、リスクとベネフィットを慎重に検討してください。

Q. 摂取量の目安は?

臨床研究では1日20〜50mg程度が使用されていますが、個人により適切な用量は異なります。最適な用量と副作用のバランスを見極めるため、医師の指導のもとで使用することが推奨されます。

Q. いつ摂るのが良い?

食事と一緒に摂取することが一般的です。ただし、使用自体について医師に相談することが最も重要です。タイミングよりも、使用の適否を慎重に判断してください。

Q. 更年期症状には有効?

系統的レビューでは、方法論的な欠点により更年期症状への有効性は結論が出ていません。プラセボ効果や製品の標準化の問題があるため、確実な効果は確認されていません。

Q. 他のエストロゲン製剤との違いは?

プエラリア・ミリフィカは植物性エストロゲンで、ミロエストロールとデオキシミロエストロールが17β-エストラジオールとほぼ同等の強力なエストロゲン活性を示します。そのため、合成エストロゲン製剤と同様の注意が必要です。

Q. どのくらいで効果が出る?

臨床試験では24週間の継続使用で骨代謝マーカーの変化が観察されています。ただし、効果の有無や程度には個人差が大きく、すべての人に同じ効果があるわけではありません。また、有害事象のリスクも考慮する必要があります。

Q. 長期使用しても大丈夫?

長期使用の安全性については十分なデータがありません。動物実験では乳腺への影響が示されており、長期曝露の安全性に疑問が投げかけられています。長期使用を検討する場合は、定期的な医師の診察と検査が必須です。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。