疲労回復や抗酸化が気になる方に向けた、豚肝臓由来の低分子ペプチドです。 豚レバーペプチドは、豚の肝臓を酵素加水分解して得られる短鎖ペプチドで、通常のタンパク質よりも消化吸収が早く、迅速なアミノ酸補給に役立ちます。 Asp-Leu、Asp-Pheなどの疲労回復ペプチドや抗酸化ペプチドを含み、AMPKの活性化を介して筋グリコーゲンの効率的利用を促進することが報告されています。 ビタミンB群、ヘム鉄、必須アミノ酸も豊富に含み、栄養状態の改善や貧血予防にも期待されています。
- 主な働き:疲労回復・抗酸化作用・迅速なアミノ酸補給・栄養状態改善・ACE阻害作用
- 摂るタイミング:食事中または運動後(1日1〜3g)
- 相性:ビタミンB群・鉄分・ビタミンCとの併用で相乗効果
- 注意:豚由来のため豚アレルギーの方は使用禁止
- 食品例:豚レバー(ペプチドのほうが吸収が早い)
豚レバーペプチドとは
豚レバーペプチドは、豚の肝臓を酵素加水分解して得られる低分子ペプチド(アミノ酸が2〜20個程度結合した短鎖ペプチド)の混合物です。肝臓エキスと比較して、分子量がさらに小さく(平均500〜3,000ダルトン)、消化吸収が早い特徴があります。
豚肝臓は、タンパク質含有量18.5%、低脂肪(3.4%)であり、栄養学的に優れた食材です。酵素加水分解により、Asp-Leu、Asp-Phe(ジペプチド)を含む疲労回復ペプチド、疎水性アミノ酸残基を含むペプチドである抗酸化ペプチド、ロイシン、バリン、イソロイシン(BCAA)、チロシン、フェニルアラニンなどの遊離アミノ酸が生成されます。
近年の研究では、豚レバーペプチドが疲労回復、抗酸化作用、味覚改善(うま味成分)に関与することが報告されています。
からだでの働きと科学的知見
豚レバーペプチドは、疲労回復、抗酸化作用、栄養補給において重要な役割を果たします。
疲労回復を助ける:
豚レバー加水分解物(LH)に含まれる疎水性ペプチドが抗疲労効果を示すことが報告されています。2020年の動物実験では、豚レバー加水分解物の投与により、AMPK(AMP-activated protein kinase)の活性化を介して筋グリコーゲンの効率的利用が促進され、筋グリコーゲンの増加と血中乳酸の減少が観察されました。PubMed 特に、Asp-Leu(アスパラギン酸-ロイシン)およびAsp-Phe(アスパラギン酸-フェニルアラニン)のジペプチドが、極めて低用量で疲労からの回復を誘導することが示されています。これらのペプチドは、アミノ基を持つ疎水性ペプチドであり、エネルギー代謝の改善に関与すると考えられています。
抗酸化作用を助ける:
2024年の研究では、アルカラーゼ酵素で加水分解した豚レバーペプチドが、DPPHラジカル消去能、ABTSラジカル消去能、鉄キレート能を示しました。PubMed 加水分解により、疎水性アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)および芳香族アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン)が増加し、これらが抗酸化活性に寄与します。
2024年に発表された別の研究では、豚レバー加水分解物に対する超音波前処理と酵素加水分解の組み合わせが、生理活性ペプチドと味覚関連化合物の生成に効果的であることが示されました。PubMed アルカラーゼとプロタナプライムの連続酵素処理により、抗酸化活性が有意に向上し、うま味・甘味アミノ酸が増加しました。さらに、2024年の比較研究では、異なる前処理条件と加水分解条件が豚レバー加水分解物の味覚関連物質の生成に与える影響が評価されています。PubMed
アミノ酸の迅速な補給を助ける:
ペプチドは、通常のタンパク質より消化が不要またはほぼ不要で、ペプチドトランスポーター(PepT1)を介して小腸から直接吸収されます。豚レバーペプチドは、ジペプチド・トリペプチドとして、小腸上皮細胞のPepT1(ペプチドトランスポーター1)を介して吸収されます。PepT1は、H⁺勾配を利用した能動輸送であり、遊離アミノ酸輸送体(LAT1、ASCT2等)よりも吸収速度が速いとされています。遊離アミノ酸よりも吸収効率が高いとされており、摂取後30〜60分で血中アミノ酸濃度がピークに達します。疲労時や術後回復期など、迅速な栄養補給が必要な場面で有用です。
栄養状態の改善を助ける:
豚レバーペプチドには、B1、B2、B6、B12、葉酸、ナイアシン(エネルギー代謝の補酵素)を含むビタミンB群、高い生物学的利用能を持つ有機鉄であるヘム鉄、全9種類の必須アミノ酸をバランスよく含有する必須アミノ酸が豊富に含まれています。USDA
これらにより、栄養状態の改善、貧血予防、エネルギー産生の促進が期待されます。
ACE阻害作用による血圧調整:
2025年の研究では、豚肝臓由来のペプチドがACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害活性を示すことが報告されました。PubMed パパイン消化により得られた豚肝臓加水分解物から、FWG、MFLGなどのペプチドが同定され、これらがACE阻害活性を発揮することが確認されています。ACE阻害により、アンジオテンシンIIの生成が抑制され、血管拡張と血圧低下が促進されます。
抗酸化ペプチドによるROS消去の詳細メカニズム:
豚レバー加水分解物に含まれる抗酸化ペプチドは、芳香族アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン)の側鎖がラジカルを直接消去するラジカル消去、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸が鉄・銅とキレートを形成してフェントン反応を抑制する金属キレート、抗酸化酵素遺伝子(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ)の発現を増加させるNrf2経路活性化という機序で活性酸素種(ROS)を消去します。
疲労回復ペプチドの作用機序:
Asp-Leu、Asp-Pheなどの疲労回復ペプチドは、ロイシンがmTOR(mammalian target of rapamycin)経路を活性化して筋タンパク質合成を促進するエネルギー代謝の促進、アスパラギン酸がクエン酸回路を活性化して乳酸からピルビン酸への変換を促進する乳酸除去の促進、フェニルアラニンがドーパミン・ノルエピネフリンの前駆体として作用して精神的疲労を軽減する神経伝達物質の前駆体という経路で疲労を軽減すると考えられています。
摂り方とタイミング
豚レバーペプチドは疲労回復目的で1日1,000〜2,000mg、抗酸化・栄養補給目的で1日500〜1,000mgを食後または運動後に摂取します。
摂取のコツとして、分子量500〜3,000ダルトン程度のペプチドが吸収されやすい低分子ペプチド製品の選択、ビタミンCがヘム鉄の吸収を促進して抗酸化作用を増強するビタミンCとの併用、運動後30分以内に摂取することで筋タンパク質合成が最大化される運動後の摂取、疲労回復効果は2〜4週間の継続で実感しやすい継続摂取が挙げられます。
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンC | ○ | ヘム鉄の吸収を促進し、抗酸化作用を増強する |
| コエンザイムQ10 | ○ | エネルギー産生の相乗効果が期待される |
| アミノ酸サプリ | △ | 過剰摂取に注意、医師に相談 |
豚レバーペプチドは、適切な用量(1日500〜2,000mg程度)であれば、一般的に安全性が高いとされています。
報告されている軽微な副作用として、軽度の消化器症状(稀)が挙げられます。
注意が必要なケースとして、豚由来のため豚肉アレルギーの方は使用を避けるべき豚肉アレルギー、肝臓には核酸(プリン体)が含まれるため痛風の方は医師に相談すべき痛風・高尿酸血症、安全性データが限られているため医師に相談すべき妊娠・授乳中、ヘム鉄が含まれるため遺伝性ヘモクロマトーシスの方は使用を避けるべき鉄過剰症が挙げられます。
食品から摂るには
豚レバーペプチドは豚の肝臓を酵素加水分解して得られる低分子ペプチドであり、通常の食品からは直接摂取できません。標準化されたペプチド含有量の製品で摂取量の管理がしやすいカプセル・錠剤、水や飲料に溶かして摂取し吸収が早い粉末タイプ、即効性が期待され外出先でも摂取しやすい液体エキスの形態で利用されます。
製品選択のポイントとして、低分子ペプチド(分子量500〜3,000ダルトン)を含む製品を選択すること、酵素加水分解法で製造された製品が吸収されやすいこと、添加物が少ない製品を選択すること、信頼できるメーカーの製品を選択することが挙げられます。
