血中脂質や炎症が気になる人に向けた植物性オイルです。シソの実油(エゴマ油)は植物油の中で最も高い割合(54〜64%)のα-リノレン酸を含み、オメガ3脂肪酸の植物性供給源として心血管の健康維持に関与します。加熱調理を避け、朝食時にドレッシングなどで摂取することが一般的です。
- 主な働き:α-リノレン酸供給、抗炎症作用、血中脂質バランス維持
- 摂るタイミング:朝食時に加熱せずドレッシングやかけ油で
- 相性:ビタミンEが酸化を防ぐ、オメガ6とのバランスが重要
- 注意:酸化しやすいため開封後は冷蔵保存、早めに使い切る
- 食品例:エゴマ油、シソ油(加熱調理不可)
シソの実油(エゴマ油)とは
シソの実油(エゴマ油)は、エゴマ(Perilla frutescens)の種子から搾取される植物油で、α-リノレン酸(ALA)を54〜64%と植物油の中で最も高い割合で含みます。その他の脂肪酸として、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が含まれます。PMC
α-リノレン酸はオメガ3系の必須脂肪酸で、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。ただし、変換効率は限定的で、EPAへは約21%、DHAへは約9%程度と報告されています。PubMed
からだでの働きと科学的知見
シソの実油の主な働きは、α-リノレン酸の供給を通じた心血管の健康維持と抗炎症作用です。
心血管への影響
日本の高齢者を対象とした研究では、大豆油をエゴマ油に置き換えることで(α-リノレン酸を1日3g増加)、オメガ6/オメガ3比が4:1から1:1に改善しました。この10ヶ月間の介入により、血中脂肪酸組成が改善されることが示されています。PubMed
オメガ3脂肪酸は、血圧と血管抵抗を改善し、トリグリセリドを低下させ、異常な心拍リズムや突然の心臓死を防ぐ働きが報告されています。シソの実油は高いオメガ3含量により、コレステロールとトリグリセリド値を低下させ、虚血性心疾患や動脈硬化のリスク低減に関与する可能性があります。
抗炎症・抗酸化作用
動物実験では、シソの実油の補給が炎症性サイトカイン(IL-6)を高脂肪食群で64.27%、通常食群で15.21%減少させることが示されています。また、酸化ストレスのバイオマーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)を高脂肪食群で68.18%、通常食群で29.72%減少させました。PMC
細胞実験では、シソの実油が炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)やCOX-2の遺伝子発現を有意に低下させ、活性酸素種(ROS)の生成を減少させることが確認されています。PMC
α-リノレン酸の代謝
α-リノレン酸は体内でデサチュラーゼとエロンガーゼによってEPAとDHAに代謝されます。ただし、変換は制限的で、長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸は主に食事から供給されます。PubMed
オメガ6脂肪酸が豊富な食事では、変換率が40〜50%減少します。最大の変換は、リノール酸とα-リノレン酸の比率が1:1の条件で観察され、α-リノレン酸の0.7%がDHAに、17%がEPAに変換されました。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| α-リノレン酸供給 | 高 | 植物油中最高レベル(54-64%) |
| 心血管リスク因子 | 中 | ヒト研究でオメガ3/6比改善 |
| 抗炎症作用 | 中 | 動物・細胞実験で効果報告 |
| 抗酸化作用 | 中 | MDA減少を確認 |
摂り方とタイミング
シソの実油は酸化しやすいため、加熱調理には不向きです。朝食時にサラダのドレッシング、納豆やヨーグルトにかけるなど、加熱せずに摂取します。
一般的な摂取量は1日小さじ1〜2杯(約5〜10ml)程度です。開封後は冷蔵庫で保存し、1〜2ヶ月以内に使い切ることが推奨されます。
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンE | ◎ | 脂質の酸化を防ぐ |
| オメガ6脂肪酸 | △ | 過剰摂取はオメガ3変換を阻害 |
| 抗凝固薬 | △ | オメガ3は出血時間延長の可能性 |
シソの実油は酸化しやすいため、直射日光を避け、冷暗所または冷蔵庫で保存してください。開封後は早めに使い切ることが重要です。また、抗凝固薬を服用中の人は、医師に相談することが推奨されます。
食品から摂るには
α-リノレン酸は以下の食品に多く含まれます:
- エゴマ油(シソ油):α-リノレン酸54〜64%(小さじ1杯で約3g)
- 亜麻仁油:α-リノレン酸約50%
- くるみ:α-リノレン酸を含むナッツ類
- チアシード:α-リノレン酸を含む種子類
- 緑黄色野菜:少量のα-リノレン酸を含む
エゴマ油は植物性オメガ3の最も効率的な供給源の一つです。
