腸内環境や骨の健康が気になる方に向けた、日本の伝統発酵食品由来のプロバイオティクスです。 納豆菌粉末(Bacillus subtilis var. natto)は、納豆の製造に使用される芽胞形成菌で、胃酸や胆汁酸に対して高い耐性を持ち、生きたまま腸管に到達できる特徴があります。 発酵過程でビタミンK2(MK-7)、ナットウキナーゼ、ポリグルタミン酸、バチロペプチダーゼなどの生理活性物質を産生し、腸内細菌叢の改善、骨の健康維持、心血管の健康、免疫機能の調整に関与します。 2024年のランダム化比較試験では、ナットウキナーゼ摂取により頸動脈内膜中膜厚の有意な減少と血圧の低下が確認されました。
- 主な働き:腸内細菌叢改善・骨形成促進・血栓溶解・血管石灰化抑制・免疫調整
- 摂るタイミング:食後、1日10億〜50億CFU
- 相性:食物繊維との併用で短鎖脂肪酸産生促進
- 注意:ワルファリン服用中は併用禁忌(ビタミンK2除去製品を選択)
- 食品例:納豆(糸引き納豆、ひきわり納豆)、乾燥納豆
納豆菌粉末とは
納豆菌粉末は、日本の伝統発酵食品納豆の製造に使用されるBacillus subtilis var. natto(バチルス・サブチリス変種ナット)を粉末化したプロバイオティクス素材です。納豆菌は芽胞形成能を持つグラム陽性桿菌であり、胃酸や胆汁酸に対して高い耐性を示すため、生きたまま腸管に到達することができます。
納豆菌が大豆を発酵させる過程で産生される生理活性物質として、骨形成促進・血管石灰化抑制に関与するビタミンK2(メナキノン-7、MK-7)、線溶(血栓溶解)作用を持つナットウキナーゼ、腸管バリア機能強化・Ca吸収促進に関与するポリグルタミン酸、タンパク質分解酵素として消化促進に関与するバチロペプチダーゼが挙げられます。
からだでの働きと科学的知見
納豆菌粉末の主な効果として、以下の4つが研究で示唆されています。
腸内細菌叢の改善を助ける:
納豆菌粉末(SONOMONO株)を摂取した試験では、Bifidobacterium属(男性)およびBlautia属(女性)の相対存在量が増加しました。PMC 納豆菌は芽胞状態で腸管に到達し、一時的に増殖して既存の善玉菌を活性化させ、悪玉菌を抑制します。また、**短鎖脂肪酸(SCFA)**産生菌を増やすことで、腸内環境の改善に関与します。
骨の健康維持を助ける:
納豆菌が産生する**ビタミンK2(MK-7)**は、オステオカルシン(骨形成タンパク質)のγ-カルボキシル化を促進し、カルシウムを骨に沈着させます。PubMed 2023年のInterVitaminK試験プロトコルでは、MK-7 333μg/日を3年間摂取し、骨密度、骨折リスク、心血管健康への影響を評価する大規模臨床試験が進行中です。
心血管の健康を助ける:
納豆菌が産生するナットウキナーゼは、フィブリン分解活性を持ち、血栓溶解を促進します。2024年のランダム化比較試験では、ナットウキナーゼ摂取により**頸動脈内膜中膜厚(CIMT)の有意な減少、血圧の低下が確認されました。PubMed また、ビタミンK2は血管平滑筋細胞でのMGP(matrix Gla protein)**を活性化し、血管石灰化を抑制します。
免疫機能の調整を助ける:
納豆菌DG101株を用いた2023年の研究では、胃酸・胆汁酸耐性、病原菌に対する抗菌活性(Escherichia coli、Staphylococcus aureus)、抗酸化活性、免疫調整作用が確認されました。PMC 納豆菌の細胞壁成分が、腸管関連リンパ組織(GALT)を刺激し、IgA産生やTh1/Th2バランスの調整に関与します。
芽胞形成による腸管到達:
納豆菌は、芽胞(spore)と呼ばれる休眠状態を形成し、胃酸(pH 2〜3)や胆汁酸に対して耐性を示します。小腸下部〜大腸で発芽・増殖し、一時的に腸内に定着(通過型プロバイオティクス)します。この過程で、乳酸菌やビフィズス菌などの常在善玉菌を活性化させます。
ビタミンK2(MK-7)産生と骨・血管への作用:
納豆菌は、メナキノン生合成経路(MEP経路)により、ビタミンK2(MK-7)を高濃度で産生します。MK-7は、骨芽細胞が分泌してカルシウムを骨基質に結合させるオステオカルシンと、血管平滑筋細胞が分泌して血管壁へのカルシウム沈着を抑制する**MGP(matrix Gla protein)**の2つのタンパク質をγ-カルボキシル化します。NIH
ナットウキナーゼによる線溶作用:
ナットウキナーゼは、セリンプロテアーゼの一種で、血栓の主成分フィブリンを直接切断するフィブリンの直接分解、プラスミンに変換して内因性線溶系を活性化するプラスミノーゲンの活性化、プラスミノーゲン活性化抑制因子を阻害するPAI-1の阻害という3つの機序で血栓を溶解します。
ポリグルタミン酸による腸管バリア強化:
納豆菌が産生するポリ-γ-グルタミン酸(PGA)は、腸管上皮細胞のタイトジャンクションを強化し、腸管バリア機能を維持します。また、PGAはカルシウムとキレートを形成し、Ca吸収を促進します。
栄養素どうしの関係と注意点
納豆菌粉末は、適切な用量(1日10億〜100億CFU程度)であれば、一般的に安全性が高いとされています。
報告されている軽微な副作用として、初期の腸管ガス産生増加(稀)と軽度の消化器症状(稀)が見られることがあります。
注意が必要なケースとして、納豆菌が産生するビタミンK2はワルファリンの効果を減弱させるため併用禁忌でビタミンK2除去製品を選択すべきワルファリン服用中NIH、ナットウキナーゼが線溶作用を持つため抗凝固薬(ヘパリン等)との併用は医師に相談すべき血栓溶解療法中、安全性データが限られているため使用前に医師に相談すべき妊娠・授乳中、プロバイオティクスの安全性が確立していないため医師に相談すべき免疫抑制療法中の方が挙げられます。
摂り方とタイミング
基本的な摂取量として、腸内環境改善目的では1日10億〜50億CFU(納豆菌芽胞)、ビタミンK2補給目的ではMK-7として45〜200μg/日相当の納豆菌製品が推奨され、摂取タイミングは胃酸の影響軽減のため食後が推奨されます。
摂取のコツとして、生きた芽胞(spore)状態の製品を選ぶことで腸管到達率が高まる芽胞製品の選択、腸内細菌叢の変化には4〜8週間かかるため継続摂取が推奨される継続摂取、納豆菌が産生する酵素が食物繊維を分解して短鎖脂肪酸産生を促進する食物繊維との併用、ワルファリン服用者はビタミンK2除去・ナットウキナーゼ単独製品を選択すべきビタミンK2とナットウキナーゼの選択が重要です。
食品から摂るには
納豆菌粉末は、納豆という伝統的な日本の発酵食品から摂取できます。納豆は、大豆を納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)で発酵させた食品で、納豆菌、ビタミンK2、ナットウキナーゼ、ポリグルタミン酸などを豊富に含んでいます。
納豆を含む食品として、最も一般的で1パック約50gに10億〜100億個の納豆菌を含む糸引き納豆、大豆を砕いてから発酵させて表面積が大きく発酵が進みやすいひきわり納豆、納豆を海苔巻きにした寿司の納豆巻き、納豆とキムチを混ぜて乳酸菌との相乗効果が期待できる納豆キムチ、納豆を乾燥させて携帯性が高い乾燥納豆があります。
納豆(食品)と納豆菌粉末(サプリメント)の違い:
| 項目 | 納豆(食品) | 納豆菌粉末(サプリメント) |
|---|---|---|
| 菌数 | 1パック(50g)あたり10億〜100億個 | 標準化された菌数(1カプセルあたり10億〜50億CFU) |
| ビタミンK2(MK-7) | 1パック(50g)あたり約300〜400μg | 製品により含有または除去(ワルファリン服用者向け) |
| ナットウキナーゼ | 1パック(50g)あたり約1,500〜2,000FU | 標準化された活性(2,000〜4,000FU/カプセル) |
| 匂い・粘り | 強い(独特のアンモニア臭・ネバネバ) | カプセル化により匂い・粘りなし |
| 携帯性 | 低い(要冷蔵、賞味期限短い) | 高い(常温保存可能、賞味期限1〜2年) |
| 摂取量調整 | 困難(1パック単位) | 容易(カプセル単位で調整可能) |
食事からの摂取の限界:
納豆を食品として摂取する場合の制約として、納豆特有のアンモニア臭やネバネバが苦手な方には摂取が困難な匂い・粘り、納豆1パックで300〜400μgのビタミンK2を含みワルファリン服用者は絶対に避ける必要がある(ワルファリンの効果を減弱)ビタミンK2、要冷蔵で賞味期限が短い(1〜2週間程度)冷蔵保存、携帯性が低く匂いの問題もあり外出先での摂取は現実的ではない外出先での摂取困難、納豆菌の数やナットウキナーゼの活性が製造ロットにより変動する摂取量の標準化困難が挙げられます。
サプリメントが推奨される理由:
腸内環境改善、骨・血管健康、血栓予防を目的とする場合、臨床試験で効果が確認された用量を正確に摂取可能な標準化された菌数・活性、ワルファリン服用者や血栓予防が目的の方がビタミンK2除去・ナットウキナーゼ単独製品を選択可能なビタミンK2除去製品の選択肢、カプセル化により納豆特有の匂い・粘りを感じることなく摂取可能な匂い・粘りなし、常温保存可能で外出先でも手軽に摂取可能な携帯性、カプセル単位で摂取量を柔軟に調整可能な摂取量調整という理由で納豆菌粉末サプリメントが推奨されます。
