お酒を飲む機会が多い方や、肝臓の健康が気になる方に向けた、肝臓保護作用が研究されている植物由来成分です。 ミルクシスル抽出物(シリマリン)は抗酸化作用と抗炎症作用を通じて肝臓の健康維持に関与します。 朝に食事とともに摂るのが一般的で、比較的安全性が高いとされています。
- 主な働き:肝臓保護作用・抗酸化作用・抗炎症作用
- 摂るタイミング:朝食時、1日2〜3回に分けて
- 注意:特定の医薬品との相互作用に配慮
- 対象:肝機能が気になる方・飲酒習慣のある方
- 食品例:ミルクシスルの種子(通常はエキスとして使用)
ミルクシスル抽出物とは
ミルクシスル(Silybum marianum)は、地中海原産のキク科の植物で、別名「マリアアザミ」とも呼ばれます。その種子から抽出されるシリマリン(silymarin)という成分が、肝臓保護作用を持つとして2000年以上前から民間療法で使用されてきました。
シリマリンは単一の成分ではなく、シリビニン(silybin)、シリジアニン(silydianin)、シリクリスチン(silychristin)などのフラボノリグナン類の混合物です。このうち、シリビニンが最も活性が高く、シリマリンの50〜70%を占めています。
現代では、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、薬物性肝障害などに対するサポート成分として、世界中で研究されています。NCBI Bookshelfシリマリンの薬理学的作用と臨床応用については、包括的なレビューが複数発表されています。PubMed
からだでの働きと科学的知見
ミルクシスルは、主に抗酸化作用、抗炎症作用、抗線維化作用を通じて肝臓を保護すると考えられています。シリマリンの肝保護メカニズムと臨床的有用性については、複数の包括的レビューで詳細に検証されています。PubMed
肝保護メカニズム
ミルクシスルは、以下の3つの主要なメカニズムで肝保護作用を発揮します:
- 抗酸化物質として:フリーラジカルの産生を抑制し、脂質過酸化を減少させます
- 抗炎症物質として:炎症性サイトカインの産生を抑制します
- 抗線維化物質として:肝線維化の進行を抑制する可能性があります
シリマリンは、エタノール、アセトアミノフェン、四塩化炭素などの有毒物質の代謝から生じるフリーラジカルを阻害することで、肝保護作用と抗酸化作用を示します。また、毒素が肝細胞膜受容体に結合するのを阻害する毒素ブロック剤としても機能する可能性があります。NCBI Bookshelf肝疾患に対するシリマリンの効果を評価した系統的レビューでは、抗酸化および抗炎症作用を通じた肝保護効果が支持されています。PubMed
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)への影響
複数の研究で、シリマリンがNAFLD患者に有益である可能性が示唆されています。2023年の症例報告では、シリマリン140mgを1日2回投与したところ、NAFLDおよび過体重患者の肝酵素活性が低下し、良好な安全性プロファイルが示されました。
2022年の研究では、肥満手術の候補者でNAFLDを持つ患者に対し、8週間のミルクシスル粉末補給により、超音波脂肪肝グレードと肝酵素が改善され、副作用は認められませんでした。NAFLDに対するシリマリンの有効性を評価したメタアナリシスでは、肝酵素の改善効果が確認されています。PubMed
肝硬変への影響
肝硬変患者を対象とした試験のプール解析では、シリマリン治療は肝臓関連死の有意な減少と関連していました。NCCIH
エビデンスの限界
これらの肯定的な結果がある一方で、米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は「ミルクシスルが人の健康状態に及ぼす影響について決定的な結論を導き出すには、質の高いエビデンスが十分ではない」と指摘しています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 肝保護作用 | 中 | 複数の研究で報告 |
| NAFLD改善 | 中 | 肝酵素低下で報告 |
| 肝硬変死亡率 | 中 | プール解析で示唆 |
| アルコール性肝疾患 | 低〜中 | 研究結果は混在 |
摂り方とタイミング
ミルクシスル抽出物は、食事とともに摂取するのが一般的です。
臨床研究では、1日あたり140〜800mgのシリマリンが使用されています。一般的な用量は、シリマリン換算で1日200〜400mg程度を2〜3回に分けて摂取します。
効果を実感するまでには数週間から数か月かかることが一般的です。肝機能の改善には継続的な摂取が前提となります。
栄養素どうしの関係と注意点
ミルクシスルは、特定の医薬品との相互作用に注意が必要です。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| 肝代謝薬物(CYP450基質) | △ | 薬物代謝に影響する可能性、医師に相談 |
| 糖尿病薬 | △ | 血糖値に影響する可能性、併用注意 |
| アセトアミノフェン | ○ | 肝保護作用の報告あり(研究段階) |
| ビタミンE × ミルクシスル | ○ | 両方とも抗酸化作用、相乗効果の可能性 |
| アルコール | △ | 肝負担軽減が目的なら飲酒自体の見直しが優先 |
注意点:
- 妊娠中・授乳中:安全性データが不足しているため、使用を避けるか医師に相談してください
- アレルギー:キク科植物(ブタクサ、マリーゴールド、デイジーなど)にアレルギーのある方は注意が必要です
- ホルモン感受性疾患:エストロゲン様作用がある可能性があるため、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの既往がある方は医師に相談してください
- 糖尿病:血糖値を下げる可能性があるため、糖尿病の方は血糖値をモニタリングしてください
食品から摂るには
ミルクシスルの有効成分シリマリンは、主に種子に含まれています。
注意事項:
- ミルクシスルの種子は食用として入手可能ですが、有効成分の含有量にばらつきがあります
- 機能性が確認されているのは標準化されたエキス(シリマリン含有量が規格化されたもの)です
- 一般的な食事からミルクシスルを摂取することは稀であり、サプリメントでの摂取が主流です
サプリメントを選ぶ際は、シリマリン含有量が明示されている製品を選び、信頼できるメーカーのものを選択してください。
