ハーブ・植物エキス

ヒハツエキス|冷えと血流をサポートするスパイス

手足の冷えや末梢血流が気になる方に。ヒハツ(ロングペッパー)由来のピペリン類は、末梢血流の正常化と体温維持に関与する成分です。機能性表示食品として届出されています。

白いテーブルの上に土の山が置かれている
Photo by Unsplash
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

手足の冷えが気になる方、末梢血流の改善に関心がある方に向けた、伝統的なスパイス由来の成分です。 ヒハツ(ロングペッパー、Piper longum)由来のピペリン類は、末梢血流を正常化し、冷えによる末梢皮膚表面温度の低下を軽減します。 朝に食事とともに摂取されることが多く、日本では機能性表示食品として複数の製品が届出されています。

  • 主な働き:末梢血流の正常化・体温維持・血管拡張作用
  • 摂るタイミング:朝食時
  • 注意:血圧降下薬との併用は医師に相談
  • 対象:冷え性の方・末梢血流が気になる方
  • 食品例:ヒハツ(ロングペッパー)、ナガコショウ

ヒハツエキスとは

ヒハツ(Piper longum、別名:ロングペッパー、ナガコショウ)は、コショウ科の植物で、インドや東南アジア原産のスパイスです。果実は細長い形状をしており、通常の黒コショウ(Piper nigrum)とは近縁種ですが、形態や成分組成が異なります。ヒハツは伝統的に体を温める効果があるとされ、多様な薬理作用を持つ生物活性成分が含まれています。PubMed

ヒハツの主要な活性成分はピペリン(piperine)およびピペリン類です。ピペリンは黒コショウにも含まれますが、ヒハツには他にもピペロングミン(piperlonguminine)など複数のアルカロイド類が含まれ、これらが相乗的に作用すると考えられています。

伝統医学では、ヒハツは体を温める効果があるとされ、アーユルヴェーダや中国医学で古くから使用されてきました。現代では、末梢血流改善と体温維持作用が科学的に研究されています。

日本では、ヒハツ由来ピペリン類を関与成分とする機能性表示食品が消費者庁に届出されており、「冷えにより低下した末梢(手)の皮膚表面温度の回復をサポートする」「冷えにより低下した末梢血流(末梢の血流)を正常に整える」などの機能が報告されています。

からだでの働きと科学的知見

ヒハツエキスは、主にピペリン類を通じて末梢血流改善と血管拡張作用に関与します。

末梢血流改善と体温維持

日本の機能性表示食品の届出では、ヒハツ由来ピペリン類が、冷えによって低下した末梢血流(末梢の血流)を正常に整え、冷えによって低下した末梢(手)の皮膚表面温度の低下を軽減することが報告されています。

臨床試験では、摂取2分後から末梢血流の改善が認められ、摂取10分後から末梢皮膚表面温度の維持効果が観察されました。日本人の若年女性を対象とした研究では、ヒハツの摂取により冷えを持つ被験者の皮膚表面温度の回復が有意に促進されることが示されています。PubMed

血管拡張作用

2024年の研究では、ヒハツ果実(Piper longum)に含まれるピペリンおよびピペロングミンが、ブタ冠動脈において弛緩作用を示すことが報告されました。これらの化合物は、血管拡張と血流増加に関連する発汗作用と関係していると考えられています。PubMed

バイオアベイラビリティ増強作用

ヒハツエキスに含まれるピペリンには、他の栄養素や薬剤の生体利用率を高める作用があることが知られています。2020年の研究では、ヒハツ抽出物がボスウェリア酸(乳香由来成分)の血中濃度を有意に増加させ、最大9時間まで効果が持続することが示されました。PMC

ピペリンは以下のメカニズムでバイオアベイラビリティを増強します:

  • 胆汁酸分泌の増加
  • 消化管血流の増加
  • 排出ポンプの阻害
  • シトクロムP450などの代謝酵素の阻害

ヒハツ果実から得られた化合物の研究では、ピペリン、(2E,4E,14Z)-N-イソブチルエイコサ-2,4,14-トリエナミド、ピペロングミニンがラット腸間膜動脈の血管収縮を有意に抑制することが示されています。PubMed

系統的レビュー

2019年のPRISMAガイドラインに従った系統的レビューでは、1967年から2019年の間に発表されたヒハツに関する伝統的使用、植物化学、薬理学的プロファイルがまとめられています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
末梢血流改善 中〜高 機能性表示で届出
体温維持 中〜高 臨床試験で報告
血管拡張作用 動物実験で報告
バイオアベイラビリティ増強 複数の研究で確認

摂り方とタイミング

ヒハツエキスは、食事とともに摂取するのが一般的です。

摂取量の目安

機能性表示食品として届出されている製品では、ピペリン類として90〜150μg/日(ヒハツエキスとして約150mg/日)が目安とされています。

摂取タイミング

朝食時に摂取することで、日中の末梢血流維持と体温維持に役立つとされています。効果は摂取後数分から現れ始めますが、継続的な摂取により効果が安定します。

注意すべき点:

  • ピペリンは他の栄養素や医薬品の吸収を増強するため、医薬品との併用時は医師に相談が必要です
  • バイオアベイラビリティ増強作用により、他のサプリメントの効果が強まる可能性があります

栄養素どうしの関係と注意点

ヒハツエキス(ピペリン)は、他の栄養素や医薬品との相互作用に特に注意が必要です。

組み合わせ 推奨度 コメント
クルクミン × ピペリン 吸収率向上の報告あり
コエンザイムQ10 × ピペリン バイオアベイラビリティ向上
血圧降下薬 血管拡張作用、医師に相談必須
CYP450基質薬物 薬物代謝に影響、医師に相談必須
抗凝固薬 相互作用の可能性、医師に相談

重要な注意点:

  • 薬物相互作用:ピペリンはシトクロムP450(CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4)を阻害するため、これらの酵素で代謝される医薬品の血中濃度を上昇させる可能性があります
  • 妊娠中・授乳中:安全性データが不足しているため、使用を避けるか医師に相談してください
  • 消化器症状:高用量では胃腸刺激を引き起こす可能性があります
  • 血圧:血管拡張作用があるため、低血圧の方や血圧降下薬を服用中の方は医師に相談してください

食品から摂るには

ヒハツは、主にスパイスとして摂取されます。

ヒハツの使用方法:

  • 粉末スパイス:カレーやスープに少量加える
  • ホール(果実):煮込み料理に使用
  • 調味料:他のスパイスと混ぜて使用

ヒハツは黒コショウよりもマイルドで甘みがあり、ピリッとした辛味が特徴です。インド料理、東南アジア料理で伝統的に使用されています。

注意点:

  • スパイスとしての通常使用量では、機能性表示食品で使用される用量(ピペリン類90〜150μg)を安定的に摂取することは困難です
  • 末梢血流改善や体温維持を目的とする場合は、標準化されたエキスを含むサプリメントの使用が現実的です

よくある質問

Q. 黒コショウとヒハツの違いは何ですか?

どちらもコショウ科(Piper属)の植物ですが、種が異なります。ヒハツ(Piper longum)は黒コショウ(Piper nigrum)よりも甘みがあり、伝統医学では「体を温める」とされてきました。成分組成も異なり、ヒハツには特有のアルカロイド類が含まれています。

Q. どのくらいの期間摂取すれば効果がありますか?

効果は摂取後数分から現れ始め、10分程度で末梢皮膚表面温度の維持が観察されています。ただし、継続的な効果を得るには、毎日の摂取が推奨されます。

Q. 冷え性以外にも効果がありますか?

ヒハツには伝統的に多様な用途がありますが、日本の機能性表示食品として科学的に支持されているのは、末梢血流の正常化と体温維持です。他の効果については、さらなる研究が必要です。

Q. 副作用はありますか?

適切な量(機能性表示食品の推奨量)であれば、重大な副作用は報告されていません。高用量では消化器刺激(胃のむかつき、吐き気)が起こる可能性があります。

Q. 他のサプリメントと一緒に摂取できますか?

ピペリンは他の栄養素の吸収を増強するため、サプリメントとの併用時には注意が必要です。特に医薬品を服用している場合は、必ず医師に相談してください。クルクミンなど一部の成分とは相乗効果が期待できる場合もあります。

Q. 夏でも摂取する意味はありますか?

冷房による冷えや、夏でも手足が冷たい方には有用である可能性があります。ただし、暑い環境での過剰な体温上昇を引き起こすものではないため、季節を問わず使用できます。

Q. どのような製品を選べばよいですか?

ヒハツ由来ピペリン類の含有量が明示されている製品を選んでください。機能性表示食品として届出されている製品であれば、科学的根拠と安全性が確認されています。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。