炎症や胃腸の不調が気になる人に向けた、古くから世界中で使われる生薬です。甘草(Glycyrrhiza glabra)は抗炎症作用を持つグリチルリチンを含み、炎症管理と副腎皮質ホルモンの調節に関与します。適量を継続的に摂り、他の生薬との配合で使うのが一般的ですが、過剰摂取には注意が必要です。
- 主な働き:抗炎症作用とコルチゾール代謝の調節
- 摂るタイミング:食事と一緒に、適量を守って
- 相性:他の生薬との配合(漢方薬)が一般的
- 注意:偽アルドステロン症リスク、1日1g以下推奨、高血圧の人は医師に相談
- 食品例:漢方薬、リコリスキャンディ、生薬エキス
甘草とは
甘草(Glycyrrhiza glabra、別名リコリス)は、マメ科の多年草の根で、3000年以上の使用歴を持ちます。主要な生物活性成分はグリチルリチン(グリチルリチン酸)で、根の乾燥重量の2〜25%を占めます。甘草は抗炎症、抗酸化、抗アレルギー、抗菌特性を持ちます。PubMed甘草由来化合物は、腸疾患における炎症性サイトカインの調節や酸化ストレスの軽減を通じて、抗炎症作用を発揮することが報告されています。PubMed 炎症性疾患や胃腸の健康に関心がある人にとって、適切な用量を守りつつ、この成分を補助として扱うと安心です。
からだでの働きと科学的知見
甘草の抗炎症作用については複数の研究で示されています。グリチルリチン酸は11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)を阻害することで、コルチゾールからコルチゾンへの変換を抑制し、体内のコルチゾール濃度を維持します。PubMed
作用機序として、グリチルリチン酸とその代謝物であるグリチルレチン酸が11β-HSD酵素を強力に阻害します。これにより、コルチゾールが分解されずに残り、抗炎症作用を発揮しますが、同時にアルドステロン受容体にも結合するため、電解質バランスに影響を与えます。PubMed
安全性に関する重要な注意点として、偽アルドステロン症が報告されています。グリチルリチン中毒の特徴は、高血圧、体液貯留、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、カリウム排泄増加です。重症例や死亡例も報告されており、多くは慢性的な高用量摂取によるものです。PubMed
日本の厚生労働省の報告では、甘草1gで副作用発生率約1%、6gで11%と、用量依存的に急激に増加することが示されています。日本医事新報社
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 抗炎症作用 | 中 | 11β-HSD阻害 |
| 胃粘膜保護 | 中 | 消化性潰瘍への補助的有用性 |
| 偽アルドステロン症 | 高 | 用量依存的リスク |
摂り方とタイミング
甘草は通常、漢方薬の一成分として使用されます。単独サプリメントではグリチルリチン換算で1日100〜400mgが一般的ですが、1日1g(甘草として)を超えない摂取が推奨されます。 日本の安全性基準では、甘草1g/日以下では副作用リスクが低いとされています。食事と一緒に摂ることで胃腸への負担を軽減できます。
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| 他の生薬 | ○ | 漢方薬での配合が一般的 |
| 降圧薬 | △ | 血圧上昇リスク、医師に相談 |
| 利尿薬 | △ | 低カリウム血症リスク、併用注意 |
| コルチコステロイド | △ | 相互作用の可能性、医師に相談 |
甘草の過剰摂取は偽アルドステロン症を引き起こすため、高血圧、心疾患、腎疾患、低カリウム血症のある人は使用前に医師に相談してください。妊娠中の高用量摂取は避けてください。
食品から摂るには
甘草は以下の形態で利用されます:
- 漢方薬:芍薬甘草湯、甘草湯など多数の処方に配合
- 生薬エキス:単独エキス製品(グリチルリチン100〜400mg/日)
- 食品:リコリスキャンディ(欧米)、調味料
- 注意点:製品によりグリチルリチン含量が異なるため、総摂取量を把握
複数の漢方薬を併用する場合、甘草の総量が過剰にならないよう注意が必要です。
