筋肉量維持や運動後の回復が気になる人に向けた、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つで最も筋たんぱく質合成を刺激する必須アミノ酸です。ロイシンはmTOR経路を直接活性化し、筋たんぱく質の合成を開始するシグナルとして機能します。運動前後に摂り、たんぱく質と合わせて使うのが一般的です。
- 主な働き:mTOR経路活性化による筋たんぱく質合成の開始
- 摂るタイミング:運動前後または食事と一緒に
- 相性:完全たんぱく質(ホエイプロテイン等)との併用が理想
- 注意:単独摂取は避ける、他の必須アミノ酸とのバランスが重要
- 食品例:肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品
ロイシンとは
ロイシン(Leucine)は分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つで、体内で合成できない必須アミノ酸です。BCAAの中でも特に筋たんぱく質合成を刺激する能力が高く、一般的にアミノ酸の中で最も同化作用が強いと考えられています。PMC 筋肉量維持や運動パフォーマンス向上に関心がある人にとって、食事と運動習慣を整えつつ、この成分を意識すると安心です。
からだでの働きと科学的知見
ロイシンの筋たんぱく質合成への効果については複数の研究で実証されています。ロイシン強化必須アミノ酸溶液の摂取は、哺乳類のラパマイシン標的たんぱく質(mTOR)シグナル伝達経路を急速かつ強力に活性化し、ヒト骨格筋のたんぱく質合成を刺激します。PMC
分子メカニズムとして、ロイシン摂取はmTORの細胞周縁部への移動を促進し、食後30分と60分でmTORとリソソームの共局在を増強しました。PubMed
運動との組み合わせでは、抵抗運動後にロイシン強化EAA+炭水化物溶液を摂取した場合、筋たんぱく質合成率が145%増加しましたが、運動後に栄養を摂取しなかった場合は40%の増加にとどまりました。PMC
ロイシンはたんぱく質ターンオーバーの特に強力な調節因子であり、ロイシン単独刺激だけでmTORC1シグナル伝達を刺激するのに十分です。PubMed
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| mTOR経路活性化 | 高 | 分子メカニズム明確 |
| 筋たんぱく質合成 | 高 | ヒト研究で実証 |
| 運動後の回復 | 中〜高 | 運動との併用で効果増強 |
摂り方とタイミング
ロイシンは通常、BCAA サプリメント(ロイシン:イソロイシン:バリン = 2:1:1)または完全たんぱく質として摂取されます。研究では単独で2〜3g/回、BCAAとして5〜20g/日が使用されています。 ただし、ロイシン単独または高用量BCAA摂取よりも、完全たんぱく質(全必須アミノ酸を含む)の方が筋肉合成に効果的であるため、ホエイプロテイン等との併用が推奨されます。PMC
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| 完全たんぱく質 | ◎ | ホエイ等の方が効果的 |
| イソロイシン・バリン | ○ | BCAAとしてバランスよく摂取 |
| 高用量単独摂取 | △ | アミノ酸不均衡のリスク |
ロイシン単独または高用量BCAA摂取は、他のアミノ酸との競合により吸収が阻害され、アミノ酸不均衡を引き起こす可能性があります。完全たんぱく質源との併用が推奨されます。
食品から摂るには
ロイシンは以下の食品に多く含まれます(100gあたり):
- 動物性:鶏むね肉(約2.0g)、牛肉(約1.6g)、マグロ(約1.8g)、卵(約1.1g)
- 植物性:大豆製品(約1.5g)、レンズ豆(約1.4g)、ピーナッツ(約1.7g)
- 乳製品:チーズ(約2.4g)、ヨーグルト(約0.5g)
通常の食事(たんぱく質1.0〜1.5g/kg/日)で十分な量を摂取できます。
