プロバイオティクス

ラクトバチルス・アシドフィルス|腸内環境と膣内環境が気になる人のプロバイオティクスサポート

腸内環境や膣内環境が気になる方に向けて、ラクトバチルス・アシドフィルスが腸内細菌叢改善、膣内細菌叢正常化、免疫機能強化、細菌性膣症予防にどのように関与するかを、科学的エビデンスと作用メカニズムをもとに解説します。

※ 主な作用: 腸内環境サポート

ラクトバチルス・アシドフィルス|腸内環境と膣内環境が気になる人のプロバイオティクスサポート
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

参考値

1,000,000,00010,000,000,000 cfu(出典: プロバイオティクス研究ラクトバチルス・アシドフィルス。10億〜100億CFU

腸内環境や膣内環境が気になる方に向けた、腸管・膣管常在型の乳酸菌サポート成分です。 ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、ヒトの腸管および膣に常在する乳酸菌の一種で、プロバイオティクス(有益菌)として広く研究されています。「アシドフィルス」という名称は、ラテン語の「acidus(酸性)」と「philos(好む)」に由来し、酸性環境を好む性質を表しています。乳酸産生による腸内・膣内pH低下(pH 4.0〜4.5)、腸管・膣管上皮細胞への定着によるバリア機能強化、腸管免疫細胞刺激による免疫調整の3つの特性を持ちます。 2023年の試験では、19〜55歳の無症状女性で膣内細菌叢異常(Nugent score高値)を有する方を対象に、L. acidophilus・L. rhamnosus・L. reuteriの組み合わせを6週間経口摂取させた結果、高度膣内細菌叢異常群(Nugent score ≥7)の60%で膣内細菌叢が改善し、膣内pHが正常化、有害菌(Gardnerella vaginalis、Prevotella等)が減少しました。 ラクトバチルス・アシドフィルスは、乳酸産生によるpH低下と有害菌抑制、腸管・膣管上皮細胞への付着とバリア機能強化、免疫細胞刺激とサイトカイン産生調整、バクテリオシン産生による直接的抗菌作用を通じて、膣内細菌叢の正常化と細菌性膣症予防、腸内環境の改善と腸管バリア機能強化、免疫機能の強化、尿路感染症(UTI)の予防に関与します。

  • 主な働き:膣内細菌叢正常化・腸内環境改善・免疫機能強化・UTI予防
  • 摂るタイミング:朝食時または就寝前、1日10億〜100億CFU
  • 相性:プレバイオティクス(オリゴ糖、イヌリン)との併用で定着促進(シンバイオティクス)
  • 注意:重度の免疫不全、カテーテル使用中、妊娠・授乳中は医師に相談
  • 食品例:ヨーグルト、アシドフィルスミルク、ケフィア(臨床用量の標準化はサプリメント推奨)

ラクトバチルス・アシドフィルスとは

ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、ヒトの腸管およびに常在する乳酸菌の一種で、プロバイオティクス(有益菌)として広く研究されています。「アシドフィルス」という名称は、ラテン語の「acidus(酸性)」と「philos(好む)」に由来し、酸性環境を好む性質を表しています。

ラクトバチルス・アシドフィルスは、グルコース(ブドウ糖)を発酵して乳酸を産生することで腸内および膣内pHを低下させ(pH 4.0〜4.5程度)有害菌の増殖を抑制する乳酸産生、腸管上皮細胞および膣上皮細胞に付着してバリア機能を強化する腸管・膣管定着、腸管免疫細胞(樹状細胞、マクロファージ、T細胞)を刺激して免疫機能を調整する免疫調整という3つの特性により健康をサポートします。

近年の研究では、ラクトバチルス・アシドフィルスが腸内細菌叢の改善膣内細菌叢の正常化細菌性膣症の予防免疫機能の強化に関与することが報告されています。

からだでの働きと科学的知見

ラクトバチルス・アシドフィルスの主な効果として、以下の4つが研究で示唆されています。

膣内細菌叢の正常化と細菌性膣症予防を助ける:

2023年4月にNutrientsで発表されたランダム化比較試験では、19〜55歳の無症状女性で膣内細菌叢異常(Nugent score高値)を有する方を対象に、L. acidophilus CBT LA1L. rhamnosus CBT LR5L. reuteri CBT LU4の組み合わせを6週間経口摂取させました。

結果として、60%の女性で膣内細菌叢が改善した高度膣内細菌叢異常群(Nugent score ≥7)、乳酸産生により膣内pHが正常化(pH 4.0〜4.5)した膣内pH低下、Gardnerella vaginalis、Prevotella等の有害菌が減少した有害菌の減少が観察されました。

この研究は、ラクトバチルス属乳酸菌の経口摂取により、膣内環境が改善され、細菌性膣症の予防に有用である可能性を示しています。PubMed

腸内環境の改善と腸管バリア機能強化を助ける:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、腸内でpH 5〜6程度に低下させて有害菌(大腸菌、クロストリジウム等)を抑制する乳酸産生による腸内pH低下、ビフィズス菌などの有益菌と協働して酢酸、プロピオン酸、酪酸の産生を促進する短鎖脂肪酸(SCFA)産生促進、タイトジャンクション(密着結合)タンパク質の発現を増加させて腸管透過性を低下(リーキーガット予防)する腸管バリア機能強化という作用を発揮します。

2021年の動物実験では、L. acidophilusが腸内細菌叢異常を改善し、腸管透過性を低下させることで、肥満を改善することが報告されました。PubMed

免疫機能の強化を助ける:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、腸管免疫細胞を刺激し、樹状細胞の活性化、制御性T細胞(Treg)の誘導、分泌型IgA(sIgA)産生促進などの免疫調整作用を発揮します。PMC 2020年のメタアナリシスでは、L. acidophilus補給により、IgAとT細胞分化が増加し、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが減少することが示されました。

尿路感染症(UTI)の予防を助ける:

膣内ラクトバチルス(特にL. crispatus、L. acidophilus)は、尿路感染症(UTI: Urinary Tract Infection)の予防に関与します。PubMed 膣内の健康な乳酸菌叢は、膣内pH低下(pH 4.0〜4.5)による大腸菌の増殖抑制、バクテリオシン産生による病原菌の直接抑制、競合的排除による病原菌の定着阻害により、大腸菌などの病原菌の侵入を防ぎます。

作用メカニズム:

ラクトバチルス・アシドフィルスが腸内環境と膣内環境をサポートするメカニズムには、以下の4つの経路が関与しています。

乳酸産生によるpH低下と有害菌抑制:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、ヘテロ乳酸発酵により、グルコースから乳酸を産生します。乳酸は、L. acidophilusが腸管・膣内のグルコースを取り込むグルコースの取り込み、解糖系(エムデン・マイヤーホフ経路)によりグルコースがピルビン酸を経て乳酸に変換される解糖系による乳酸産生、乳酸が蓄積して腸内pH 5〜6、膣内pH 4.0〜4.5に低下するpHの低下、低pH環境により大腸菌、Gardnerella vaginalis、Prevotella等の有害菌が抑制される有害菌の抑制というプロセスで環境を酸性化します。

腸管・膣管上皮細胞への付着とバリア機能強化:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、表層タンパク質(surface layer protein)を持ち、腸管上皮細胞および膣上皮細胞に付着します。付着により、L. acidophilusが上皮細胞に付着することで病原菌の付着部位を占有して病原菌の侵入を阻害する競合的排除、上皮細胞間のタイトジャンクション(密着結合)タンパク質(オクルディン、クローディン)の発現を増加させて腸管・膣管バリア機能を強化するタイトジャンクション強化、杯細胞による粘液産生を促進して物理的バリアを強化する粘液産生促進という効果が得られます。

免疫細胞刺激とサイトカイン産生調整:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、パターン認識受容体(PRR)を介して、腸管免疫細胞を刺激します。L. acidophilusの細胞壁成分(リポテイコ酸、ペプチドグリカン)がToll様受容体(TLR2/4)に結合し、樹状細胞がサイトカイン(IL-10、IL-12、TNF-α等)を産生します。PMC これにより、制御性T細胞(Treg)が誘導され過剰な炎症が抑制され、B細胞がIgA抗体を産生して粘膜免疫が強化されます。

バクテリオシン産生による直接的抗菌作用:

ラクトバチルス・アシドフィルスは、バクテリオシン(bacteriocin)と呼ばれる抗菌ペプチドを産生します。バクテリオシンは、病原菌の細胞膜に穴を開け、細胞内容物を漏出させることで、病原菌を直接的に抑制します。

栄養素どうしの関係と注意点

ラクトバチルス・アシドフィルスは、一般的に安全性が高く、GRAS(Generally Recognized As Safe:一般的に安全と認められる)に分類されています。NIH

報告されている軽微な副作用として、軽度の腹部膨満感(稀)、ガス・鼓腸(稀)が挙げられます。

注意が必要なケースとして、HIV/AIDS、臓器移植後などの重度免疫不全の方は医師に相談すべき重度の免疫不全、中心静脈カテーテル等を使用している方は稀に菌血症のリスクがあるため医師に相談すべきカテーテル使用中、一般的に安全とされていますが使用前に医師に相談すべき妊娠・授乳中が挙げられます。

摂り方とタイミング

基本的な摂取量として、腸内環境改善目的では1日10億〜100億CFU(コロニー形成単位)、膣内環境改善目的では1日10億〜100億CFU(経口摂取)または膣錠による局所投与、摂取タイミングは朝食時または就寝前(一日一回)が推奨されます。

摂取のコツとして、腸内・膣内細菌叢の改善効果は4〜6週間の継続で最大化される継続摂取、プレバイオティクス(オリゴ糖、イヌリン等)と併用するとL. acidophilusの定着が促進される(シンバイオティクス効果)食事との併用、抗生物質治療中は腸内・膣内細菌叢が乱れるためL. acidophilusの補充が推奨されますが抗生物質服用の2〜3時間後に摂取すべき抗生物質使用時、経口摂取でも効果がありますが膣錠による局所投与の方が直接的な効果が期待できる膣内環境改善、生菌製品は冷蔵保存が推奨され常温保存可能な製品もありますがラベルの指示に従うべき保存方法が挙げられます。

食品から摂るには

ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、発酵乳製品に含まれる乳酸菌であり、ヨーグルトやケフィアなどから摂取できます。

ラクトバチルス・アシドフィルスを含む食品として、L. acidophilusを含むヨーグルト製品(「生きて腸に届く」表示があるもの)であるヨーグルト、L. acidophilusで発酵させた乳製品であるアシドフィルスミルク、複数の乳酸菌・酵母で発酵させた発酵乳(L. acidophilus含む場合がある)であるケフィア、飲むヨーグルト、乳酸菌飲料(L. acidophilus含有製品)である発酵乳飲料、発酵乳製品(L. acidophilus含む場合がある)であるサワークリーム、標準化された菌数(10億〜100億CFU)を含む栄養補助食品であるL. acidophilusサプリメントが挙げられます。

発酵乳製品とサプリメントの違い:

項目 ヨーグルト等の発酵乳製品 L. acidophilusサプリメント
菌数 製品により大きくばらつく(10⁶〜10⁹ CFU/g程度) 標準化された菌数(10億〜100億CFU/カプセル)
菌株 複数のラクトバチルス属菌が混在(菌株不明) 特定菌株を使用(菌株番号で管理)
保存性 要冷蔵、賞味期限短い(数週間) 常温保存可能(一部製品)、賞味期限長い(1〜2年)
糖分・カロリー 砂糖・果糖添加製品が多い(100gあたり10〜20g程度) 糖分・カロリーほぼゼロ
携帯性 低い(冷蔵保存必要) 高い(常温保存、携帯可能)
臨床研究 限定的 特定菌株で多数の臨床試験

食事からの摂取の限界:

発酵乳製品に含まれるL. acidophilusには、発酵条件により菌数が大きく変動する菌数のばらつき、ヨーグルトに含まれるLactobacillus属菌の中に臨床試験で効果が確認された特定菌株が含まれるかは不明である菌株の特定困難、市販ヨーグルトは砂糖添加製品が多く糖質・カロリーが高い糖分・カロリー、冷蔵保存が必要で持ち運びが困難な保存・携帯性、臨床試験で使用される標準化用量(10億〜100億CFU)を正確に摂取するのが難しい量の調整が困難、ヨーグルトに含まれるL. acidophilusは胃酸により一部が死滅する可能性がある胃酸の影響という制約があります。

サプリメントが推奨される理由:

腸内環境改善、膣内環境改善、免疫サポートを目的とする場合、標準化された菌数・特定菌株を含むL. acidophilusサプリメントが推奨されます。サプリメントは、臨床試験で効果が確認された用量(10億〜100億CFU/日)を正確に摂取でき、糖分ゼロ、カロリーほぼゼロ、保存・携帯性にも優れています。また、腸溶性カプセル製品を選ぶことで、胃酸の影響を受けずに腸まで生きた菌を届けることができます。

よくある質問

Q. L. acidophilusと他のラクトバチルス属(L. rhamnosus、L. reuteri等)の違いは?

ラクトバチルス属には多くの菌種があり、それぞれ異なる特性を持ちます。L. acidophilusは、腸管・膣管に常在し、乳酸産生能が高く、広く研究されています。L. rhamnosusは、腸管バリア機能強化に優れ、アトピー性皮膚炎の予防に関与します。L. reuteriは、ロイテリン(reuterin)という抗菌物質を産生し、病原菌抑制に優れます。複数の菌種を組み合わせたマルチストレイン製品は、相乗効果が期待できます。

Q. プロバイオティクスとプレバイオティクスの違いは?

プロバイオティクスは、生きた有益菌(ラクトバチルス、ビフィズス菌等)であり、腸内・膣内に定着して効果を発揮します。プレバイオティクスは、有益菌の餌(オリゴ糖、イヌリン、FOS等)であり、腸内の有益菌を増やします。両者を組み合わせたシンバイオティクス(synbiotics)は、プロバイオティクスの定着を促進し、相乗効果が期待できます。

Q. 膣内環境改善には、経口摂取と膣錠のどちらが良いですか?

経口摂取でも膣内環境改善効果が確認されています。PubMed 経口摂取されたラクトバチルスは、腸管から血液を介して、または直腸から膣へ移行すると考えられています。一方、膣錠(膣内投与)は、直接膣内に有益菌を届けるため、より迅速な効果が期待できます。目的に応じて、腸内環境も改善したい場合は経口摂取、膣内環境のみを集中的に改善したい場合は膣錠、最大効果を期待する場合は経口摂取+膣錠の併用を選択してください。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。