ストレスや緊張が気になるときに検討される、緑茶由来のアミノ酸です。 L-テアニンは脳内のα波を増加させ、リラックス状態を後押しします。カフェインと組み合わせることで、集中力と注意力の向上に関与します。 朝または作業前に摂取されることが多く、機能性表示食品としても複数の製品が届出されています。
- 主な働き:リラックス状態の促進・ストレス軽減・集中力向上(カフェイン併用時)
- 摂るタイミング:朝、または作業・学習前
- 注意:妊娠中・授乳中は医師に相談
- 対象:ストレスが気になる方・集中力を高めたい方
- 食品例:緑茶、紅茶、抹茶
L-テアニンとは
L-テアニン(L-Theanine)は、茶葉に特徴的に含まれる遊離アミノ酸です。1949年に京都の玉露から発見され、日本の研究者によって構造が解明されました。
L-テアニンは、グルタミン酸の誘導体であり、茶の旨味成分として知られています。特に日陰で栽培される高級茶(玉露、抹茶など)に多く含まれ、茶葉の品質指標の一つとされています。
L-テアニンは血液脳関門を通過し、脳内で作用することが確認されています。主な作用として、α波(アルファ波)の増加を通じたリラックス支援、ストレス軽減、そしてカフェインとの組み合わせによる認知機能の向上が研究されています。
日本では2015年に開始された機能性表示食品制度において、「一過性の作業にともなうストレスをやわらげる」「起床時の疲労感や眠気を軽減する」などの機能が届出されています。
からだでの働きと科学的知見
L-テアニンは、主にリラックス、ストレス軽減、認知機能の向上に関与します。
α波の増加とリラックスの関連
L-テアニン50〜200mgの摂取により、約40〜50分後に脳波のα波が増加することが複数の研究で示されています。α波の増加はリラックス状態を反映するとされています。PubMed
2021年の無作為化比較試験では、AlphaWave® L-テアニンの単回投与により、急性ストレス負荷に対して以下の変化が観察されました。PMC
- 前頭部および全頭皮のα波パワーが投与3時間後にプラセボと比較して有意に増加
- 唾液コルチゾール値が投与1時間後にプラセボよりも大きく減少
- 自己報告による状態不安が軽減
28日間継続摂取の影響
2024年の研究では、中程度のストレスを持つ健康な成人30名を対象に、L-テアニン400mg/日を28日間摂取したところ、ストレスマーカー、睡眠の質、認知機能への影響が評価されました。PubMed
カフェインとの相乗的な働き
L-テアニンとカフェインの組み合わせは、単独摂取よりも良好な認知機能の向上に関連するとするレビューが複数あります。
2022年の系統的レビューでは、L-テアニンとカフェインの組み合わせが、ADHD関連の機能障害の軽減に関連したことから、潜在的な治療的考慮事項となる可能性が示されました。PMC
2014年のメタアナリシスでは、カフェインとL-テアニンの組み合わせにより、摂取後最初の2時間で以下の変化が見られました。PubMed
- Bond-Lader覚醒度スケールで中程度のエフェクトサイズ
- 注意切り替え課題の正確性向上
L-テアニンとカフェインの組み合わせは、注意課題のパフォーマンスにおいて、摂取後60分および90分の両時点で、速度と正確性の両方を向上させました。また、記憶課題において、60分および90分の両時点で、気を散らす情報への感受性を低下させました。
L-テアニンの睡眠への影響を評価した2025年のメタ解析では、19件の研究(897名)を分析した結果、主観的な入眠潜時、日中の機能障害、総合的な睡眠の質スコアに有意な変化(入眠潜時の短縮、日中機能障害の軽減、睡眠の質スコアの上昇)が示されました。PubMed
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| α波増加 | 高 | 複数の研究で確認 |
| ストレス軽減 | 中〜高 | RCTで報告 |
| カフェイン併用での認知向上 | 高 | メタアナリシスで支持 |
| 睡眠の質 | 中 | 複数の研究で報告 |
摂り方とタイミング
L-テアニンは、目的によって摂取タイミングが異なります。
リラックス・ストレス軽減目的
朝または日中のストレスフルな状況の前に100〜200mgを摂取します。変化は30〜60分程度で現れ始め、数時間持続します。
集中力向上目的
カフェイン100mgとL-テアニン100〜200mgを組み合わせて摂取します。作業や学習の30〜60分前が推奨されます。
睡眠の質を高めたい場合
就寝の30〜60分前に200〜400mgを摂取します。機能性表示食品では、起床時の疲労感や眠気の軽減が届出されています。
摂取量の目安:
- リラックス・ストレス軽減:100〜200mg/回
- 認知機能向上(カフェイン併用):100〜200mg/回
- 睡眠の質の向上:200〜400mg/日
L-テアニンは水溶性であり、空腹時でも食事とともにでも摂取できます。
栄養素どうしの関係と注意点
L-テアニンは、他の栄養素との組み合わせによって働きが変わります。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| カフェイン × L-テアニン | ◎ | 相乗的な働きの報告あり(メタアナリシス) |
| ビタミンB群 | ○ | 神経伝達物質の合成をサポート |
| マグネシウム | ○ | リラックス支援を補完 |
| GABA | ○ | 両方ともリラックスに関与 |
注意点:
- 妊娠中・授乳中:安全性データが限られているため、医師に相談してください
- 血圧降下薬:L-テアニンは血圧をわずかに低下させる可能性があるため、併用時は医師に相談が必要です
- 興奮剤との併用:カフェイン以外の興奮剤との併用は慎重に検討してください
- 眠気:高用量(400mg以上)で眠気を感じることがあるため、運転前の高用量摂取は避けてください
食品から摂るには
L-テアニンは、主に茶葉に含まれています。
L-テアニンを含む食品:
- 玉露:100mlあたり約60〜80mg(最も豊富)
- 抹茶:100mlあたり約40〜60mg
- 煎茶:100mlあたり約10〜20mg
- 紅茶:100mlあたり約5〜15mg
- ほうじ茶:100mlあたり約5〜10mg
茶の種類、栽培方法、抽出条件によってL-テアニン含有量は大きく変動します。一般的に、日陰栽培された茶葉ほどL-テアニン含有量が高くなります。
抽出のポイント:
- L-テアニンは水溶性で、60〜80℃の温度で効率的に抽出されます
- 長時間の抽出により、より多くのL-テアニンが抽出されますが、苦味成分も増加します
- 低温(冷水)抽出では、カフェインやカテキンの抽出を抑えつつ、L-テアニンを抽出できます
研究で使用される100〜400mg/日の用量を食品から摂取するには、玉露を数杯飲む必要があります。効率的な摂取を目的とする場合は、サプリメントの使用が現実的です。
