アミノ酸・ペプチド

L-フェニルアラニン|神経伝達物質の合成を支える

集中力や気分の安定が気になる人に向け、L-フェニルアラニンがドーパミンやノルアドレナリンの前駆体としてどのように働くかを一次情報に基づいてやさしく解説します。

※ 主な作用: 必須アミノ酸・神経伝達物質前駆体

ノートパソコンの前に座る茶色のシャツを着た女性
Photo by Nicolás Flor
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

日本人の食事摂取基準では個別アミノ酸の基準値未設定。必須アミノ酸

参考値

体重1kgあたり 25 mg(出典: WHO/FAO/UNUフェニルアラニン+チロシン合計

集中力や気分の維持が気になる人に向けた必須アミノ酸です。L-フェニルアラニンは体内でチロシンに変換され、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成に関与します。食事と一緒に摂り、他のアミノ酸とのバランスを保つことが大切です。

  • 主な働き:神経伝達物質の前駆体としてチロシン合成に関与
  • 摂るタイミング:朝食時に食事と一緒に
  • 相性:他の大型中性アミノ酸と競合するため単独摂取も検討
  • 注意:フェニルケトン尿症の人は医師に相談が必須
  • 食品例:肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品

L-フェニルアラニンとは

L-フェニルアラニンは体内で合成できない必須アミノ酸で、タンパク質の構成要素として重要な役割を担います。この成分は肝臓でフェニルアラニン水酸化酵素によってチロシンに変換され、さらにドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成に使われます。PubMed食事からの摂取が不足すると、これらの神経伝達物質の産生に影響が出る可能性があります。

からだでの働きと科学的知見

L-フェニルアラニンは体内で多様な代謝経路に関与します。PMC主な経路はチロシン合成で、これがドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンといったカテコールアミン系神経伝達物質の前駆体となります。PubMed

研究では、フェニルアラニンとチロシンの細胞内濃度がドーパミン産生に影響を与えることが示されています。適切な濃度のフェニルアラニンはチロシン水酸化酵素の基質として働き、ドーパミン合成を助けます。PubMed

また、L-フェニルアラニンは消化管ホルモンの分泌にも関与することが報告されています。動物実験では、L-フェニルアラニンがGLP-1の分泌を促し、食欲の調節や血糖値の維持に関与する可能性が示唆されています。PMC

研究テーマ エビデンス強度 補足
神経伝達物質合成 チロシン経由でカテコールアミン産生に関与
タンパク質合成 必須アミノ酸として全身のタンパク質構成に必要
ホルモン分泌 動物実験レベル、ヒトでの研究は限定的

摂り方とタイミング

L-フェニルアラニンは食事から自然に摂取することが基本です。肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品など、タンパク質が豊富な食品に多く含まれています。サプリメントとして摂取する場合は、朝食時に食事と一緒に摂ることで、他の栄養素とのバランスを保ちやすくなります。

大型中性アミノ酸は脳への取り込みで競合するため、特定の目的でL-フェニルアラニンを補給したい場合は、空腹時の単独摂取も検討されることがあります。ただし、個人差が大きいため、医師や栄養士に相談することが推奨されます。

栄養素どうしの関係と注意点

組み合わせ 推奨度 コメント
チロシン 体内でチロシンに変換されるため相互補完的
他の大型中性アミノ酸 脳への取り込みで競合する可能性PubMed
ビタミンB6 アミノ酸代謝の補酵素として働く
フェニルケトン尿症 × フェニルアラニン代謝異常のため摂取制限が必須

L-フェニルアラニンは、フェニルケトン尿症(PKU)という先天性代謝異常がある人にとって、体内に蓄積すると神経発達に深刻な影響を与える可能性があります。この疾患を持つ人は、フェニルアラニンの摂取を厳しく制限する必要があるため、サプリメントの使用前に必ず医師に相談してください。

食品から摂るには

L-フェニルアラニンは以下の食品に多く含まれます:

  • 肉類:鶏むね肉、牛肉、豚肉(100gあたり1,000〜1,500mg程度)
  • 魚類:マグロ、サケ、タラ(100gあたり800〜1,200mg程度)
  • :全卵(1個あたり約350mg)
  • 大豆製品:豆腐、納豆、枝豆(100gあたり400〜1,000mg程度)
  • 乳製品:牛乳、チーズ、ヨーグルト(100gあたり400〜1,000mg程度)
  • ナッツ類:アーモンド、ピーナッツ(100gあたり1,000〜1,500mg程度)

タンパク質が豊富な食品をバランスよく摂ることで、L-フェニルアラニンを含む必須アミノ酸全体を効率的に摂取できます。

よくある質問

Q. L-フェニルアラニンとD-フェニルアラニンの違いは?

L-フェニルアラニンは天然に存在する形で、体内でタンパク質合成や神経伝達物質の前駆体として利用されます。D-フェニルアラニンは合成された鏡像異性体で、体内での働きが異なります。サプリメントではDL-フェニルアラニン(両方の混合)として販売されることもありますが、一般的にはL-フェニルアラニンが推奨されます。

Q. 摂取量の目安は?

健康な成人の場合、体重1kgあたり約25mgのフェニルアラニンとチロシンの合計が推奨摂取量とされています。体重60kgの人であれば、1日あたり約1,500mg程度が目安です。通常の食事で十分に摂取できるため、サプリメントでの追加摂取は医師や栄養士と相談することが推奨されます。

Q. いつ摂るのが良い?

L-フェニルアラニンは朝食時に摂ることで、日中の神経伝達物質の合成を助ける可能性があります。ただし、個人差が大きく、夜間に摂取すると睡眠に影響を与える場合もあるため、自分の体調を観察しながら調整することが大切です。

Q. フェニルケトン尿症とは?

フェニルケトン尿症(PKU)は、フェニルアラニン水酸化酵素の活性が低下または欠損している先天性代謝異常です。この疾患を持つ人は、フェニルアラニンを適切に代謝できず、体内に蓄積すると知的障害などの神経発達障害を引き起こす可能性があります。新生児スクリーニングで早期発見され、低フェニルアラニン食による食事療法が行われます。

Q. サプリメントは必要?

通常の食事でタンパク質を十分に摂取している人は、L-フェニルアラニンのサプリメントは必要ありません。偏食や特定の食事制限をしている場合を除き、バランスの良い食事を心がけることが基本です。サプリメントを検討する場合は、医師や管理栄養士に相談してください。

Q. 神経伝達物質への影響は?

L-フェニルアラニンはチロシンを経由してドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの合成に関与します。ただし、神経伝達物質の産生は多くの要因(他の栄養素、酵素活性、神経細胞の活動状態など)に依存するため、L-フェニルアラニンの摂取だけで神経伝達物質が増えるわけではありません。バランスの取れた食事と健康的な生活習慣が基本です。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。