アミノ酸・ペプチド

L-オルニチン|疲労感と睡眠の質をサポート

疲労感や睡眠の質が気になる方に。L-オルニチンは尿素サイクルを通じてアンモニア代謝に関与する遊離アミノ酸で、疲労軽減と睡眠品質の改善が研究されています。科学的知見と摂り方を解説します。

※ 主な作用: アミノ酸サポート

箸の横にスープが入った木製のボウル
Photo by Unsplash
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

疲労感が気になる方、睡眠の質を高めたい方に向けた、尿素サイクルに関わる遊離アミノ酸です。 L-オルニチンは体内でアンモニアの代謝に関与し、疲労軽減と睡眠品質の改善に関連する成分として研究されています。 朝または就寝前に摂取されることが多く、シジミ(しじみ)に豊富に含まれることでも知られています。

  • 主な働き:アンモニア代謝サポート・疲労軽減・睡眠品質改善
  • 摂るタイミング:朝、または就寝前
  • 注意:高用量での安全性データは限定的
  • 対象:疲労感が気になる方・睡眠の質を高めたい方
  • 食品例:シジミ、マグロ、チーズ、ヒラメ

L-オルニチンとは

L-オルニチンは、体内で合成される非必須アミノ酸の一種です。タンパク質を構成するアミノ酸とは異なり、体内を遊離した状態で循環する「遊離アミノ酸」として存在します。

L-オルニチンの最も重要な役割は、肝臓の尿素サイクル(オルニチンサイクル)における中心的な機能です。尿素サイクルは、体内で発生する有毒なアンモニアを無害な尿素に変換するエネルギー依存的なプロセスで、肝臓のミトコンドリアと細胞質でのみ行われます。NCBI Bookshelf

L-オルニチンは、シジミ(しじみ)に特に豊富に含まれており、日本では古くから疲労回復や肝臓の健康維持のための食材として親しまれてきました。近年では、機能性表示食品として睡眠の質改善に関する届出がなされている製品もあります。

からだでの働きと科学的知見

L-オルニチンは、主に尿素サイクルを通じたアンモニア代謝、疲労軽減、睡眠品質改善に関与します。

アンモニア代謝と疲労軽減

アンモニアの蓄積は中枢性疲労と末梢性疲労の両方を引き起こします。L-オルニチンの経口投与は、脂質代謝を促進し尿素サイクルを活性化させ、運動後の主観的疲労感を有意に軽減しました。PubMed

2023年の研究では、茶カテキン538.6mgとオルニチン1592mgを2日間連続摂取したところ、運動負荷時の血中アンモニア濃度上昇が抑制され、血糖値が安定することが示されました。PubMedこの研究により、茶カテキンと低用量オルニチンの組み合わせが尿素サイクルを効果的に活性化することが確認されました。

睡眠品質とストレスマーカーへの影響

52名の健康な日本人成人を対象とした無作為化比較試験では、L-オルニチン400mg/日を8週間摂取したところ、以下の効果が観察されました。(PubMedPMC

  • 血清コルチゾール値とコルチゾール/DHEA-S比がプラセボ群と比較して有意に低下
  • 怒りの感情が軽減
  • 主観的な睡眠の質が向上

この結果から、L-オルニチン補給は疲労に関連するストレスを軽減し、睡眠品質を向上させる可能性が示唆されています。

作用機序

L-オルニチンは尿素サイクルにおいて重要な役割を果たします。アンモニアはオルニチンとカルバモイルリン酸から生成されるシトルリンに組み込まれ、最終的に尿素として排出されます。このプロセスによりアンモニア毒性が軽減され、エネルギー産生が効率化されると考えられています。 尿素サイクル異常症の治療戦略をまとめたレビューでは、オルニチンが尿素サイクルの中心的役割を担い、アンモニア解毒に不可欠であることが包括的に示されています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
アンモニア代謝 中〜高 尿素サイクルの中心的役割
疲労軽減 主観的疲労感で報告
睡眠品質改善 RCTで報告
ストレスマーカー低下 コルチゾール低下で報告

摂り方とタイミング

L-オルニチンは、目的によって摂取タイミングが異なります。

疲労軽減目的

朝または運動前に摂取するのが一般的です。研究では400〜2000mg/日の用量が使用されていますが、一般的には400〜1000mg程度が目安とされます。

睡眠品質改善目的

就寝前に摂取することで、睡眠の質向上が期待されます。機能性表示食品では400mg/日が目安とされています。

摂取の形態:

  • L-オルニチン塩酸塩:最も一般的な形態で、吸収性に優れています
  • L-オルニチン遊離体:塩酸塩と効果に大きな差はありません

継続的な摂取が推奨されており、研究では数週間から数か月の期間で効果が評価されています。

栄養素どうしの関係と注意点

L-オルニチンは、他の栄養素との組み合わせによって効果が変わる可能性があります。

組み合わせ 推奨度 コメント
L-アルギニン × L-オルニチン 尿素サイクルで相互変換される
茶カテキン × L-オルニチン 相乗効果の報告あり(PubMed 2023)
ビタミンB群 エネルギー代謝をサポート
マグネシウム 尿素サイクル酵素の補因子

注意点:

  • 腎機能障害:腎機能に問題のある方は医師に相談してください
  • 肝硬変:肝機能が著しく低下している場合は使用前に医師に相談が必要です
  • 妊娠中・授乳中:高用量摂取の安全性データが不足しているため、医師に相談してください
  • 高用量摂取:10g以上の高用量摂取では消化器症状(下痢など)が報告されています

食品から摂るには

L-オルニチンは、特定の食品に含まれていますが、含有量は一般的に少量です。

L-オルニチンを含む主な食品:

  • シジミ(しじみ):100gあたり約10〜15mg(最も豊富)
  • マグロ:100gあたり約1〜7mg
  • チーズ:100gあたり約0.8〜8mg
  • ヒラメ:100gあたり約0.6〜4mg
  • エノキタケ:100gあたり約14mg

シジミはL-オルニチンの含有量が際立って高い食品として知られています。しかし、研究で使用される400〜2000mg/日の用量を食品から摂取するのは非常に困難であり、サプリメントの使用が現実的です。

調理のポイント:

  • シジミは味噌汁やスープにすることで、溶出したオルニチンも摂取できます
  • 冷凍保存することでオルニチン含有量が増加するという報告もあります

よくある質問

Q. 1日にどのくらい摂取すればよいですか?

研究では400〜2000mg/日の範囲で使用されています。機能性表示食品では400mg/日が目安とされており、一般的には400〜1000mg程度から始めることが推奨されます。効果には個人差があるため、自分に合った量を見つけることが大切です。

Q. L-アルギニンとL-オルニチン、どちらを摂るべきですか?

L-オルニチンとL-アルギニンは体内で相互変換されますが、L-オルニチンは尿素サイクルにより直接的に関与します。疲労軽減や睡眠品質改善を目的とする場合は、L-オルニチンの方が研究データが豊富です。一方、L-アルギニンは一酸化窒素産生を通じた血流改善に関与するため、目的に応じて選択してください。

Q. 朝と夜、どちらに摂るのがよいですか?

目的によって異なります。疲労軽減やアンモニア代謝サポートが目的であれば朝または運動前、睡眠品質改善が目的であれば就寝前が推奨されます。どちらのタイミングでも効果が報告されているため、自分のライフスタイルに合わせて選択できます。

Q. どのくらいの期間摂取すれば効果がありますか?

研究では数週間から数か月の継続摂取で効果が評価されています。睡眠品質改善の研究では8週間の摂取で効果が見られました。個人差がありますが、少なくとも2〜4週間の継続が推奨されます。

Q. 副作用はありますか?

適切な用量(1日2000mg以下)であれば、重大な副作用は報告されていません。高用量(10g以上)では消化器症状(腹痛、下痢)が報告されることがあります。一般的には忍容性が良好とされていますが、異常を感じたら使用を中止してください。

Q. シジミのサプリメントとL-オルニチンサプリメント、どちらが良いですか?

L-オルニチンの含有量が明確に表示されているサプリメントの方が、摂取量を管理しやすくなります。シジミエキスには他の栄養素も含まれますが、L-オルニチンの含有量は製品によってばらつきがあります。目的がL-オルニチンの摂取であれば、含有量が明記された製品を選ぶことが推奨されます。

Q. 肝臓が悪い人でも摂取できますか?

L-オルニチンは肝臓でアンモニア代謝に関与しますが、重度の肝機能障害や肝硬変の方は、使用前に必ず医師に相談してください。尿素サイクルの機能が著しく低下している場合、L-オルニチンの代謝に影響が出る可能性があります。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。