必須アミノ酸が気になる人に注目されるアミノ酸です。 L-リジン(L-Lysine)は、体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、たんぱく質合成、コラーゲン生成、カルシウム吸収促進、免疫機能サポートに重要な役割を果たします。 ヘルペスウイルスの増殖抑制効果も注目されており、口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発予防を目的に利用されることがあります。
- 主な働き:たんぱく質・コラーゲン合成、カルシウム吸収促進、免疫機能サポート、ヘルペス増殖抑制
- 摂るタイミング:食事と一緒に、1日1,000〜3,000mg(分割摂取)
- 相性:カルシウム、ビタミンC、鉄
- 注意:アルギニンと競合、腎臓・肝臓に問題がある方は医師に相談
- 食品例:肉類、魚類、乳製品、大豆、豆類
L-リジンとは
L-リジン(L-Lysine)は、体内で合成できない必須アミノ酸の一つです。たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうちの1つで、筋肉、皮膚、骨、腱、軟骨などのコラーゲンを含む結合組織の形成に不可欠です。また、カルシウムの吸収促進、免疫機能のサポート、ホルモンや酵素の生成にも重要な役割を果たします。PubMed
L-リジンは主に肉類、魚類、乳製品、豆類などのたんぱく質が豊富な食品に含まれています。穀物にはリジンが比較的少ないため、菜食主義者や穀物中心の食事をしている人は不足しやすい栄養素です。サプリメントとしては、免疫サポート、ヘルペス予防、骨の健康維持などを目的に利用されています。
からだでの働きと科学的知見
たんぱく質とコラーゲンの合成:
L-リジンは、体内でのたんぱく質合成に必須のアミノ酸です。特にコラーゲンの生成に重要な役割を果たし、皮膚、腱、軟骨、骨などの結合組織の健康維持に貢献します。PubMedコラーゲンは体内で最も豊富なたんぱく質であり、組織の構造と強度を保つために不可欠です。
カルシウム吸収の促進:
L-リジンは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨へのカルシウムの取り込みを助けます。カルシウムの排泄を減少させる働きもあるため、骨密度の維持や骨粗鬆症の予防に役立つ可能性があります。PubMed
免疫機能のサポート:
L-リジンは免疫系の正常な機能に必要なアミノ酸です。抗体、ホルモン、酵素の生成を助け、感染症に対する抵抗力の維持に貢献します。特に風邪やインフルエンザなどのウイルス感染時には、免疫細胞の活性化をサポートします。
ヘルペスウイルスの増殖抑制:
L-リジンは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の増殖を抑制する可能性があることで知られています。ヘルペスウイルスは増殖にアミノ酸のアルギニンを必要としますが、L-リジンはアルギニンと競合することでウイルスの増殖を妨げると考えられています。口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発予防や症状の軽減を目的に使用されることがあります。PubMedただし、口唇ヘルペス予防に関するコクランレビューでは、リジンの有効性を示す明確なエビデンスは見出されませんでした。PubMed
摂り方とタイミング
一般的な摂取量:
成人の1日あたりの推奨摂取量は、体重1kgあたり約30mgとされており、体重60kgの成人では約1,800mgに相当します。食事から十分に摂取できていれば、サプリメントは必要ありませんが、特定の目的でサプリメントを使用する場合の一般的な摂取量は以下の通りです:
摂取量の目安として、一般的な栄養補給では1,000〜1,500mg/日、ヘルペス予防・再発抑制では1,000〜3,000mg/日(分割摂取)、カルシウム吸収促進・骨の健康では1,000〜1,500mg/日が推奨されます。
ヘルペス予防を目的とする場合は、症状が現れる前から継続的に摂取することが推奨されます。
摂取のタイミング:
L-リジンは、食事と一緒に摂取すると吸収が良好です。ヘルペス予防を目的とする場合は、1日の摂取量を2〜3回に分けて摂取することが推奨されます。空腹時に摂取すると、胃の不快感を引き起こす可能性があるため、食後の摂取が望ましいです。
カルシウムサプリメントと併用する場合は、L-リジンがカルシウムの吸収を促進するため、同時に摂取すると相乗効果が期待できます。
摂取時の注意点として、腎臓病や肝臓病のある方はアミノ酸サプリメントの使用前に医師に相談すること、高用量(1日10g以上)の長期摂取は腎機能に影響を与える可能性があること、アルギニンサプリメントと同時に摂取すると互いの効果が打ち消される可能性があること、妊娠中・授乳中の方は使用前に医師に相談することが挙げられます。
栄養素どうしの関係と注意点
アルギニンとの関係:
L-リジンとアルギニンは、体内で競合的に作用します。ヘルペスウイルスの増殖にはアルギニンが必要ですが、L-リジンを摂取することでアルギニンの利用が抑制され、ウイルスの増殖を抑える効果が期待できます。ただし、アルギニンにも血管拡張や成長ホルモン分泌促進など重要な働きがあるため、バランスを考慮した摂取が必要です。
カルシウムとの関係:
L-リジンはカルシウムの腸管吸収を促進し、骨へのカルシウムの取り込みを助けます。カルシウムサプリメントと併用することで、骨密度の維持や骨粗鬆症の予防により効果的である可能性があります。
ビタミンCとの関係:
L-リジンとビタミンCは、コラーゲンの合成において協調的に働きます。ビタミンCはリジン残基の水酸化に必要な酵素リジルヒドロキシラーゼの補因子として機能し、L-リジンはコラーゲンを構成するアミノ酸として重要です。PubMed両方を十分に摂取することで、コラーゲンの生成と組織の修復が促進されます。
鉄との関係:
L-リジンは鉄の吸収を促進する可能性があります。特に植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収を助けるため、菜食主義者や鉄欠乏性貧血のリスクがある人にとって有益です。
食品から摂るには
L-リジンは、たんぱく質が豊富な食品に多く含まれています:
**動物性食品(100gあたりのリジン含有量)**として、約2,800mgを含む鶏むね肉、約2,200mgを含む豚ロース肉、約2,000mgを含む牛もも肉、約2,300mgを含むサーモン、約2,200mgを含むまぐろ、約820mgを含む卵、約270mgを含む牛乳、約2,600mgを含むチーズ(チェダー)が挙げられます。
**植物性食品(100gあたりのリジン含有量)**として、約2,600mgを含む大豆、約1,700mgを含むレンズ豆、約1,400mgを含むひよこ豆、約440mgを含むキヌア、約350mgを含むそば、約1,100mgを含むピスタチオが挙げられます。
動物性食品は一般的にリジンが豊富ですが、大豆などの豆類も良質なリジン源です。穀物は他のアミノ酸は豊富ですが、リジンが相対的に少ないため、豆類と組み合わせることで必須アミノ酸のバランスが改善されます。
