アミノ酸・ペプチド

L-ヒスチジン|抗酸化と免疫を支える必須アミノ酸

疲労感や炎症が気になる人に向け、L-ヒスチジンがヒスタミン合成やカルノシン生成を通じて抗酸化や免疫機能をどのように支えるかを一次情報に基づいてやさしく解説します。

※ 主な作用: 必須アミノ酸・ヒスタミン生成・免疫サポート・脳機能サポート・皮膚バリア維持・重金属除去サポート

グリルの上の鶏肉のクローズアップ
Photo by Denis Agati
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

日本人の食事摂取基準では個別アミノ酸の基準値未設定。必須アミノ酸

参考値

体重1kgあたり 10 mg(出典: WHO/FAO/UNU

疲労感や炎症が気になる人に向けた必須アミノ酸です。L-ヒスチジンは体内で合成できないため食事からの摂取が必須で、ヒスタミンの前駆体として神経伝達や免疫応答に関与します。また、カルノシンの構成成分として抗酸化作用や金属キレート作用を助けます。

  • 主な働き:ヒスタミン前駆体、カルノシン構成成分として抗酸化・金属キレート作用に関与
  • 摂るタイミング:朝夕の食事と一緒に、タンパク質源とともに
  • 相性:ベータアラニンと結合してカルノシンを形成
  • 注意:通常の食事で十分に摂取可能、過剰摂取の心配は少ない
  • 食品例:肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品

L-ヒスチジンとは

L-ヒスチジンは体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、タンパク質の構成要素として重要な役割を担います。特に酵素の活性部位で触媒的な役割を果たし、金属イオンと結合する能力を持つことから、多様な生理機能に関与します。NCBI BookshelfWHO/FAOの成人における推奨摂取量は、体重1kgあたり1日10mgとされています。

L-ヒスチジンは体内でヒスチジン脱炭酸酵素によってヒスタミンに変換されます。ヒスタミンは神経伝達物質として脳や胃をはじめとする全身で働き、免疫応答や炎症反応の調節に関与します。

からだでの働きと科学的知見

L-ヒスチジンは体内で多様な代謝経路に関与します。主な経路はヒスタミン合成で、ビタミンB6依存的な脱炭酸反応によってヒスタミンが生成されます。ヒスタミンは腎機能、神経伝達、胃酸分泌、免疫システムに影響を与える重要な代謝産物です。PMC

L-ヒスチジンのもう一つの重要な働きは、カルノシンの構成成分としての役割です。カルノシンはヒスチジンとベータアラニンから成るジペプチドで、筋肉や脳に多く存在します。カルノシンはpH緩衝作用、金属イオンキレート作用、抗酸化作用を持ち、糖化最終産物や脂質過酸化物の形成を防ぐ働きがあります。PMC

研究では、L-ヒスチジンの金属キレート作用とフリーラジカル消去作用が確認されています。ヒスチジンのイミダゾール環は金属イオンを結合し、活性酸素や窒素種を消去する能力を持ちます。PubMedこれらの化学的特性により、ヒスチジン含有ジペプチドは生体内で重要な抗酸化物質として機能します。

抗炎症効果に関する研究では、L-ヒスチジンが炎症性サイトカインの産生を抑制し、NF-κB経路の活性化を阻害することが示されています。動物実験では、L-ヒスチジンの投与がマクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制し、大腸炎を改善することが報告されています。PubMed

また、肺の炎症に関する研究では、L-ヒスチジンがNLRP3インフラマソームの活性化を阻害し、炎症を軽減することが示されています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
ヒスタミン合成 必須前駆体として確立
カルノシン構成 ベータアラニンと結合
抗酸化作用 金属キレート・ラジカル消去
抗炎症作用 動物実験で効果報告

摂り方とタイミング

L-ヒスチジンは食事から自然に摂取することが基本です。肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品など、タンパク質が豊富な食品に多く含まれています。朝夕の食事と一緒に摂ることで、日中と夜間の代謝機能を支えます。

WHO/FAOの推奨摂取量は体重1kgあたり1日10mgですが、通常のバランスの取れた食事で十分に摂取できます。体重60kgの人であれば、1日あたり約600mg程度が目安です。

栄養素どうしの関係と注意点

組み合わせ 推奨度 コメント
ベータアラニン カルノシン合成に必要
ビタミンB6 ヒスタミン合成の補酵素
他の必須アミノ酸 バランスよく摂ることで利用効率向上

L-ヒスチジンは通常の食事で十分に摂取できるため、過剰摂取の心配はほとんどありません。バランスの良い食事を心がけることが基本です。ただし、極端な食事制限や偏食をしている場合は、医師や管理栄養士に相談することが推奨されます。

食品から摂るには

L-ヒスチジンは以下の食品に多く含まれます:

  • 肉類:鶏むね肉、牛肉、豚肉(100gあたり800〜1,200mg程度)
  • 魚類:マグロ、サケ、タラ(100gあたり600〜1,000mg程度)
  • :全卵(1個あたり約150mg)
  • 大豆製品:豆腐、納豆、枝豆(100gあたり300〜600mg程度)
  • 乳製品:牛乳、チーズ、ヨーグルト(100gあたり200〜600mg程度)
  • ナッツ類:アーモンド、ピーナッツ(100gあたり400〜800mg程度)

タンパク質が豊富な食品をバランスよく摂ることで、L-ヒスチジンを含む必須アミノ酸全体を効率的に摂取できます。

よくある質問

Q. L-ヒスチジンとヒスタミンの関係は?

L-ヒスチジンは体内でヒスチジン脱炭酸酵素によってヒスタミンに変換されます。ヒスタミンは神経伝達物質として働き、免疫応答や炎症反応の調節に関与します。ただし、L-ヒスチジンの摂取量とヒスタミン産生量は単純な比例関係にはなく、多くの調節機構が関与しています。

Q. 摂取量の目安は?

健康な成人の場合、体重1kgあたり約10mg程度が推奨摂取量とされています。体重60kgの人であれば、1日あたり約600mg程度が目安です。通常の食事で十分に摂取できるため、特別な補給は必要ありません。

Q. いつ摂るのが良い?

L-ヒスチジンは朝夕の食事と一緒に摂ることが推奨されます。ただし、必須アミノ酸は毎食バランスよく摂ることが重要なので、1日を通してタンパク質源を分散して摂取することが基本です。

Q. カルノシンとの関係は?

L-ヒスチジンはベータアラニンと結合してカルノシンを形成します。カルノシンは筋肉や脳に多く存在し、pH緩衝作用、金属キレート作用、抗酸化作用を持ちます。運動時の乳酸緩衝や酸化ストレスの軽減に関与する可能性があります。

Q. サプリメントは必要?

通常の食事でタンパク質を十分に摂取している人は、L-ヒスチジンのサプリメントは必要ありません。偏食や特定の食事制限をしている場合を除き、バランスの良い食事を心がけることが基本です。サプリメントを検討する場合は、医師や管理栄養士に相談してください。

Q. 抗酸化作用はどのくらい?

L-ヒスチジンのイミダゾール環は金属イオンキレート作用とフリーラジカル消去作用を持ちます。ただし、抗酸化システムは多くの栄養素や酵素が協調して働くため、L-ヒスチジンの摂取だけで抗酸化能が向上するわけではありません。バランスの取れた食事と健康的な生活習慣が基本です。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。