心臓の健康や血圧が気になる方に向けた、ヨーロッパで伝統的に使用されてきた心血管サポートハーブです。 ホーソン(サンザシ)は軽度〜中等度の心不全症状の緩和に関与し、フラボノイドとプロシアニジンを豊富に含みます。 朝夕の食事とともに摂取するのが一般的ですが、心臓疾患や心臓薬を服用中の方は必ず医師に相談が必要です。
- 主な働き:心血管サポート・血圧健康サポート・抗酸化作用・血流サポート
- 摂るタイミング:朝・夕の食事時、1日2〜3回
- 注意:心臓薬との相互作用に特に注意、医師への相談必須
- 対象:軽度〜中等度の心不全症状がある方、心血管の健康に関心がある方
- 食品例:サンザシの果実、ホーソンの葉・花
ホーソン(サンザシ)とは
ホーソン(Hawthorn、学名:Crataegus spp.)は、バラ科サンザシ属の低木で、ヨーロッパ、北アメリカ、アジアに自生しています。日本では「サンザシ」として知られ、中国では「山楂(さんざ)」と呼ばれ、伝統医学で長い使用歴があります。
ホーソンの主な機能性成分は、フラボノイド(ヒペロシド、ビテキシン-2-ラムノシドなど)とオリゴマー型プロシアニジン(OPCs)です。これらの成分は特に葉と花、果実に高濃度で含まれています。ホーソンは高血圧、高脂血症、特にうっ血性心不全の予防と治療に役割を果たす可能性があり、抗酸化作用を持つフラボノイド成分がこれらの有益な効果に一部寄与していると考えられています。PubMed
ヨーロッパでは、軽度から中等度の心不全(NYHA分類Ⅰ〜Ⅱ度)の症状緩和を目的として、標準化されたホーソン抽出物(特にWS1442)が医薬品やサプリメントとして使用されています。
からだでの働きと科学的知見
ホーソンは、主に血管拡張作用、抗酸化作用、心筋への直接作用を通じて心血管系に関与すると考えられています。
作用機序
ホーソンの主要な作用機序には以下が含まれます:
- 血管拡張作用:一酸化窒素(NO)の産生を刺激し、血管を拡張させます
- 抗酸化作用:フラボノイドとプロシアニジンによる強力な抗酸化作用
- 心筋への直接作用:心筋細胞に対する強壮作用の可能性
- 冠血流の増加:冠動脈の血流を改善する作用
これらの作用により、心臓の機能をサポートし、心拍出量を増加させる可能性が示唆されています。PMC標準化されたホーソン葉・花抽出物を用いた4000名以上の患者を対象とした臨床試験では、軽度慢性心不全の治療において臨床的ベネフィットが示されており、近年の薬理学的研究では心臓保護作用と血管保護作用も示されています。PubMed
臨床試験での知見
ホーソンの有効性については、研究結果が一貫していません。
初期のメタアナリシス(2003年):軽度〜中等度の心不全患者を対象とした複数のランダム化試験のメタアナリシスでは、ホーソン抽出物が最大運動負荷(7ワット増加)、圧力-心拍数積の減少、呼吸困難や疲労などの症状改善に有意な効果を示しました。PubMed
HERB CHF試験(2009年):標準治療を受けているNYHAクラスⅡ〜Ⅲの慢性心不全患者120名を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、ホーソン抽出物(WS1442)450mg×2回/日を6ヶ月間投与しても、6分間歩行距離(主要評価項目)に有意な改善は見られませんでした。結論として、「標準医療と併用してもホーソンは心不全患者に症状的・機能的ベネフィットをもたらさない」とされました。PMC
血圧への影響(2024年):高血圧患者110名を対象としたランダム化試験では、標準降圧療法にホーソン(Crataegus oxyacantha)を追加しても、プラセボと比較して血圧に有意な差は見られませんでした(6週時点の収縮期血圧を除く)。
安全性プロファイル
ホーソン製剤は、一貫して良好な忍容性が示されています。副作用は低いまたは無視できる程度で、重大な薬物相互作用も検出されていません。高い治療指数を持つとされています。PMC
ただし、一部の研究では、特定のホーソン製剤が患者が服用していた薬物との相互作用により、心不全の早期進行リスクを引き起こした可能性が指摘されています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 軽度心不全症状緩和 | 低〜中 | 初期研究で効果、大規模試験では否定的 |
| 血管拡張作用 | 中 | メカニズム研究で確認 |
| 抗酸化作用 | 中〜高 | 複数研究で確認 |
| 血圧低下 | 低 | 最近の試験で限定的 |
摂り方とタイミング
ホーソンは、食事とともに摂取するのが一般的です。
臨床研究では、1日あたり240〜1800mgの用量が使用されています。最も研究されているのはWS1442抽出物で、1日あたり450mg×2回(計900mg/日)が一般的です。
効果を実感するまでには数週間から数ヶ月かかることが一般的で、継続的な摂取が前提となります。短期間での劇的な変化を期待するものではありません。
重要な注意: 心臓疾患、心不全、高血圧などで医療を受けている方、心臓関連の医薬品を服用している方は、ホーソンの摂取前に必ず医師に相談してください。
栄養素どうしの関係と注意点
ホーソンは、特に心臓関連の医薬品との相互作用に注意が必要です。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| 強心配糖体(ジゴキシンなど) | △ | 相互作用の可能性、医師に相談必須 |
| 硝酸薬 | △ | 血管拡張作用の増強、医師に相談必須 |
| β遮断薬 | △ | 相互作用の可能性、医師に相談必須 |
| カルシウム拮抗薬 | △ | 相互作用の可能性、医師に相談必須 |
| 降圧薬 | △ | 血圧低下作用の増強、医師に相談必須 |
| 抗血小板薬 | △ | 出血リスクの可能性、医師に相談 |
重要な注意点:
- 心臓疾患・心臓薬服用中:心不全、狭心症、不整脈、高血圧などで治療を受けている方、心臓関連の医薬品を服用している方は、ホーソンの使用前に必ず医師に相談してください。薬物相互作用のリスクがあります
- 妊娠中・授乳中:安全性データが不足しているため、使用を避けてください
- 手術予定:手術予定がある場合は、少なくとも2週間前からホーソンの摂取を中止してください
- 副作用:めまい、吐き気、嘔吐、下痢、筋肉痛などが報告されています
食品から摂るには
ホーソンの有効成分は、主に果実、葉、花に含まれています。
ホーソンを含む食品・形態:
- サンザシの果実(生または乾燥)
- サンザシ茶(葉・花のお茶)
- サンザシジュース
- サンザシジャム
中国伝統食品:
- 山楂片(サンザシの砂糖漬け)
- 山楂糕(サンザシ菓子)
ただし、通常の食品からの摂取では、臨床研究で使用されている標準化された抽出物の用量(240〜900mg/日)を得ることは困難です。機能性を期待する場合は、標準化されたサプリメントの方が効率的と考えられます。
調理のポイント:
- サンザシの果実は酸味が強いため、砂糖と一緒に調理されることが多いです
- サンザシ茶は乾燥した葉や花を煮出して作ります
- 長時間の加熱により一部の有効成分が減少する可能性があります
