アミノ酸・ペプチド

グリシン|睡眠の質とコラーゲン合成を支える

寝つきや睡眠の質が気になる人に向け、グリシンが体温調節を介した睡眠促進やコラーゲン合成にどのように関与するかを一次情報に基づいてやさしく解説します。

※ 主な作用: 睡眠の質・体温調節補助が示唆

ベッドに横たわる女性
Photo by Dmitry Ganin
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

寝つきや睡眠の質が気になる人に向けた非必須アミノ酸です。グリシンは就寝前の摂取で体温調節を介して睡眠の質を助け、日中はコラーゲン合成の重要な構成要素として結合組織の維持に関与します。食事からの摂取と体内合成の両方で供給されます。

  • 主な働き:体温調節を介した睡眠促進、コラーゲン合成の構成要素
  • 摂るタイミング:就寝30分〜1時間前に水と一緒に
  • 相性:プロリン・ヒドロキシプロリンとともにコラーゲン構成
  • 注意:通常の食事で十分に摂取可能、睡眠目的は3g程度
  • 食品例:肉類(特に皮・軟骨)、魚類、ゼラチン、大豆製品

グリシンとは

グリシンは体内で合成できる非必須アミノ酸で、最も構造が単純なアミノ酸です。体内ではスレオニン、セリン、コリン、ヒドロキシプロリンから合成されます。ただし、研究では内因性合成だけでは成長や飼料効率、コラーゲン産生を最大化するには不十分であることが示されています。PubMed

グリシンは中枢神経系で抑制性神経伝達物質として働くとともに、NMDA受容体の共作用物質としても機能します。この二重の役割が、グリシンの多様な生理作用を支えています。

からだでの働きと科学的知見

グリシンの主な働きは、睡眠の質の改善とコラーゲン合成の2つに大別されます。

睡眠促進作用

研究では、就寝前のグリシン摂取が不眠傾向のある人の主観的な睡眠の質を有意に改善することが示されています。グリシンの経口投与はノンレム睡眠を誘導し、ノンレム睡眠潜時を短縮すると同時に、中核体温を低下させます。PubMed

メカニズムとして、グリシンは皮膚血流を用量依存的に増加させ、熱放散を促進します。中核体温の低下は睡眠の開始と密接に関連しており、グリシンの睡眠促進効果はこの体温調節機構を介していると考えられています。PMC

部分的な睡眠制限を受けた健康な被験者を対象とした研究では、グリシンの摂取が日中の主観的なパフォーマンスを改善することも報告されています。PMC

コラーゲン合成

グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンはコラーゲンの総アミノ酸の57%を占めており、コラーゲン産生に不可欠です。コラーゲンは骨、皮膚、軟骨、血管などの結合組織の正常な構造と強度を維持するために必須です。

研究では、高濃度のグリシンが関節軟骨細胞のコラーゲン合成をin vitroで増加させることが示されています。急性グリシン欠乏が変形性関節症の重要な原因である可能性が示唆されています。PMC

グリシンを補給した群では、コラーゲン発現量が増加し、I型コラーゲンが優位になることが報告されています。グリシンはコラーゲン線維の組織化とリモデリングに直接関与します。

神経伝達物質としての役割

グリシンは脊髄や脳幹などの尾側領域で抑制性神経伝達物質として働きますが、中枢神経系全体ではNMDA受容体の共作用物質としても機能します。PubMedNMDA受容体はグルタミン酸とグリシンの両方が結合することで活性化されます。

研究テーマ エビデンス強度 補足
睡眠の質改善 複数のヒト研究で報告
体温調節 皮膚血流増加を介した熱放散
コラーゲン合成 総アミノ酸の57%を占める
神経伝達物質 抑制性・NMDA共作用物質

摂り方とタイミング

睡眠の質を目的とする場合、就寝30分〜1時間前に3g程度を水と一緒に摂取することが一般的です。研究では3gの摂取で効果が確認されています。

コラーゲン合成を目的とする場合は、ゼラチンやコラーゲンペプチドが豊富な食品を日常的に摂取します。グリシンは肉類の皮や軟骨、魚の皮、ゼラチンに多く含まれます。

栄養素どうしの関係と注意点

組み合わせ 推奨度 コメント
プロリン・ヒドロキシプロリン コラーゲン合成に必須
ビタミンC コラーゲン合成の補酵素
ベータアラニン カルノシン合成に関与

グリシンは通常の食事で十分に摂取でき、体内でも合成されるため、過剰摂取の心配はほとんどありません。睡眠目的でサプリメントを使用する場合は、3g程度から始めることが推奨されます。

食品から摂るには

グリシンは以下の食品に多く含まれます:

  • 肉類(皮・軟骨):鶏皮、豚足、牛すじ(100gあたり2,000〜4,000mg程度)
  • ゼラチン:粉ゼラチン(100gあたり20,000mg以上)
  • 魚類(皮):魚の皮、煮こごり(100gあたり1,000〜3,000mg程度)
  • 大豆製品:豆腐、納豆(100gあたり200〜400mg程度)
  • コラーゲンペプチド:サプリメント形態(製品により異なる)

ゼラチンやコラーゲンペプチドは特にグリシンが豊富で、効率的な摂取源となります。

よくある質問

Q. 睡眠への効果はどのくらい?

研究では、就寝前3gのグリシン摂取が主観的な睡眠の質を改善し、日中のパフォーマンスを向上させることが示されています。効果は個人差があり、体温調節を介したメカニズムのため、すべての人に同じ効果があるわけではありません。

Q. 摂取量の目安は?

睡眠目的の場合、研究では3g程度が使用されています。コラーゲン合成を目的とする場合は、タンパク質が豊富な食事を通じて自然に摂取することが推奨されます。特定の数値目標を設定するよりも、バランスの良い食事を心がけることが基本です。

Q. いつ摂るのが良い?

睡眠の質を目的とする場合は、就寝30分〜1時間前が推奨されます。コラーゲン合成を目的とする場合は、毎食でタンパク質源を摂取することが基本です。タイミングよりも継続的な摂取が重要です。

Q. コラーゲン合成への影響は?

グリシンはコラーゲンの総アミノ酸の約3分の1を占める重要な構成要素です。ただし、コラーゲン合成にはプロリン、ヒドロキシプロリン、ビタミンCなど他の栄養素も必要なため、グリシンの摂取だけでコラーゲン産生が増えるわけではありません。バランスの取れた食事が基本です。

Q. サプリメントは必要?

通常の食事でタンパク質を十分に摂取している人は、グリシンのサプリメントは必要ありません。睡眠の質を改善したい場合や、コラーゲン合成を特に意識したい場合に、サプリメントの使用を検討することがあります。使用前に医師や管理栄養士に相談することが推奨されます。

Q. 副作用はある?

一般的には安全とされますが、高用量の摂取では胃腸不快が報告されています。睡眠目的で3g程度の摂取であれば、副作用の報告はほとんどありません。通常の食事からの摂取であれば、副作用の心配はありません。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。