脂肪酸・脂質

GLA(ガンマリノレン酸)|肌のバリア機能と炎症調節を支えるオメガ6脂肪酸

肌の乾燥や炎症が気になる人、月経前の不快感を和らげたい人に向け、GLAが肌のバリア機能と炎症調節をどのように支えるかを一次情報に基づいてやさしく解説します。

チルトシフトレンズの黄色い花
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摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

肌の乾燥やかゆみ、月経前の不快感が気になる人に向けた、オメガ6脂肪酸の一種です。GLA(ガンマリノレン酸、gamma-linolenic acid)は、体内で抗炎症作用を持つプロスタグランジンE1の前駆体となり、肌のバリア機能維持と炎症調節に関与します。主な供給源は月見草油、ボリジオイル、黒スグリ油などのサプリメントで、食事と一緒に摂り、継続的な利用で機能維持を助けるのが安心です。

  • 主な働き:肌のバリア機能維持と抗炎症プロスタグランジンの産生
  • 摂るタイミング:朝夕の食事と一緒に、毎日継続して
  • 相性:ビタミンEと合わせると酸化安定性が向上
  • 注意:出血リスクのある人や抗凝固薬使用中は医師に相談
  • 食品例:月見草油、ボリジオイル、黒スグリ油サプリメント

GLAとは

GLA(ガンマリノレン酸、gamma-linolenic acid)は、炭素数18、二重結合3つのオメガ6系多価不飽和脂肪酸です。化学式はC18:3 n-6で、リノール酸の代謝産物として体内で生成されますが、その変換効率は個人差があり、加齢や疾患により低下することがあります。

GLAは体内でリノール酸からデルタ6デサチュラーゼ酵素により変換され(律速段階)、GLA→DGLA(ジホモ-γ-リノレン酸)→プロスタグランジンE1(PGE1、抗炎症作用)の経路で代謝されます。一部はDGLA→アラキドン酸にも変換されます。PGE1は抗炎症作用を持つため、GLAの摂取により炎症調節が支援される可能性があります。NCCIH

GLAは一般的な食事ではほとんど摂取されず、月見草油(GLA含量7〜10%、最も一般的)、ボリジオイル(GLA含量20〜25%、最も高濃度だがピロリジジンアルカロイドの混入リスク)、黒スグリ油(GLA含量15〜20%、安全性の高い代替源)、ヘンプシードオイル(GLA含量2〜4%、低濃度)などの特定の植物油からの補給が必要です。

理論的にはリノール酸からGLAを体内で合成できますが、デルタ6デサチュラーゼ酵素の活性は加齢、ストレス、高血糖・糖尿病、トランス脂肪酸の過剰摂取、亜鉛・マグネシウム・ビタミンB6の不足により低下します。直接GLAを補給することで、変換ステップを迂回して効率的にDGLAとPGE1を産生できる可能性があります。

からだでの働きと科学的知見

GLAは、肌の健康維持、アトピー性皮膚炎の症状緩和、女性の健康(PMS・更年期症状)、糖尿病性神経障害の改善に関与します。

肌の健康維持:

GLA含有オイル(月見草油)の12週間摂取により、肌の生物物理学的パラメータの向上が研究で示されています。具体的には、皮膚水分量が12.9%、経皮水分蒸散量が7.7%、弾力性が4.7%、硬さが16.7%、疲労抵抗性が14.2%、粗さが21.7%で良好な変化を示したと報告されています。PubMed

GLAは皮膚の細胞膜リン脂質に組み込まれ、バリア機能を強化します。また、DGLAを経てPGE1に変換されることで、炎症性サイトカインの産生を抑制し、肌の炎症を軽減する可能性があります。

アトピー性皮膚炎:

アトピー性皮膚炎患者では、血漿GLA濃度の上昇が臨床症状の向上と相関し、EASIスコア(湿疹面積・重症度指数)が有意に低下したという報告があります。(PubMedPMC

アトピー性皮膚炎患者では、デルタ6デサチュラーゼ活性が低下しているため、リノール酸からGLAへの変換が不十分になり、結果的にDGLAとPGE1の産生が減少する可能性が示唆されています。GLAの直接補給により、この代謝経路の障害を迂回できます。

女性の健康:

女性の健康における月見草油(GLA供給源)のレビューでは、月経前症候群(PMS)や更年期症状への応用が評価されていますが、反応には個人差があり、さらなる研究が必要とされています。PubMed

理論的には、GLAから産生されるPGE1が子宮収縮を調節し、プロラクチン感受性を低下させることで、PMSの症状緩和に関与する可能性が示唆されています。

糖尿病性神経障害:

糖尿病性神経障害の動物モデルでは、GLAの摂取により神経伝導と血流の向上が観察され、血管作用を介したメカニズムが示唆されています。PubMed

PGE1は血管拡張作用を持つため、末梢神経への血流を改善し、神経機能の維持に関与する可能性があります。

摂り方とタイミング

GLAサプリメントは朝夕の食事と一緒に摂ることで、脂溶性成分の吸収を助け、胃腸への負担を抑えます。研究では1日約200〜300mgのGLAが使用されており、これは月見草油換算で約2〜3gに相当します。12週間以上の継続摂取で変化が観察されています。

摂取形態は、月見草油カプセル(GLA 7〜10%、1日2〜3g、GLA約200〜300mg)、ボリジオイルカプセル(GLA 20〜25%、1日1〜1.5g、GLA約200〜300mg)、黒スグリ油カプセル(GLA 15〜20%、1日1.5〜2g、GLA約200〜300mg)があります。

少量から始めて様子を見ながら量を調整し、急激な増量は避けましょう。ビタミンEと併用することで、GLAの酸化を抑制できます。GLAは多価不飽和脂肪酸であるため、酸化されやすく、ビタミンEなどの抗酸化物質との併用が推奨されます。

栄養素どうしの関係と注意点

組み合わせ 推奨度 コメント
ビタミンE GLA酸化を抑制し安定性向上
亜鉛・マグネシウム デルタ6デサチュラーゼ活性をサポート
ビタミンB6 脂肪酸代謝に関与
抗凝固薬 出血リスク増加の可能性、医師に相談
抗てんかん薬 相互作用の報告あり、併用注意
オメガ3脂肪酸 炎症バランスの調整、EPA/DHA併用で相乗効果

GLAは一般的に安全とされますが、出血傾向や抗凝固薬使用中の人は医師に相談してください。妊娠中・授乳中の使用は安全性が確認されており、母乳中のGLA濃度が上昇しますが、乳児への有害作用は報告されていません。NCBI Bookshelf

食品から摂るには

GLAは一般的な食事からの摂取が極めて限定的であり、サプリメントが主な摂取源となります。月見草油(GLA含量7〜10%、最も一般的で安全性データ豊富)、ボリジオイル(GLA含量20〜25%、最も高濃度だがピロリジジンアルカロイドの混入リスクあり、精製品を選ぶ)、黒スグリ油(GLA含量15〜20%、安全性の高い代替源)、ヘンプシードオイル(GLA含量2〜4%、低濃度)などの植物油に含まれています。

GLAは多価不飽和脂肪酸であり、加熱すると酸化しやすいため、非加熱で使用することが推奨されます。サプリメントカプセルは光や空気から保護されており、酸化リスクが低減されています。ただし、研究で使用された量(200〜300mg GLA/日)を食事だけで満たすのは困難です。

よくある質問

Q. アトピー性皮膚炎ではどのくらい変化がありますか?

研究では4か月の継続摂取でEASIスコアに有意な向上が示されていますが、個人差が大きいです。血漿GLA濃度の上昇が症状の向上と相関するため、変化を感じるまで3〜4か月の継続が推奨されます。PubMed

Q. 月経前症候群(PMS)に有用性はありますか?

伝統的に使用されてきましたが、大規模な臨床試験でのエビデンスは限定的です。一部の人には症状緩和が見られますが、個人差があります。GLAから産生されるPGE1が理論的にはPMS症状の軽減に関与する可能性がありますが、さらなる研究が必要です。

Q. 副作用はある?

一般的には軽度の胃腸不快(吐き気、腹部膨満感)や頭痛が報告されています。まれに出血傾向や発疹が見られることがあります。NCCIH食事と一緒に摂取することで、胃腸への負担を軽減できます。

Q. どのくらいで変化が出る?

肌の向上は12週間程度で観察されています。アトピー性皮膚炎では3〜4か月の継続が推奨されます。短期間での大きな変化は想定しにくく、長期継続が基本です。GLAの血中濃度が安定するまでに時間がかかるため、継続的な摂取が重要です。

Q. 授乳中に使用しても安全?

研究では授乳中の使用が母乳中のGLA濃度を上昇させますが、乳児への有害作用は報告されていません。授乳中の乳首のレイノー現象治療にも使用されています。NCBI Bookshelf

Q. ボリジオイルと月見草油の違いは?

ボリジオイルはGLA含量が高い(20〜25%)ですが、ピロリジジンアルカロイド(肝毒性を持つ可能性のある成分)の混入リスクがあります。月見草油は安全性データが豊富で、長期使用の実績があります。黒スグリ油も安全性の高い代替源として推奨されます。精製されたボリジオイル製品を選ぶことで、リスクを低減できます。

Q. オメガ3脂肪酸と一緒に摂っても良いですか?

はい。GLAはオメガ6系ですが、抗炎症性のプロスタグランジンE1の前駆体となるため、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)と併用することで、炎症バランスの調整に相乗効果が期待できます。通常のオメガ6脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸)とは異なり、GLAは抗炎症経路に寄与します。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。