ハーブ・植物エキス

イチョウ葉エキス|記憶と血流を支える伝統成分

年齢とともに気になる記憶力や血流。イチョウ葉エキスは脳の血流改善と抗酸化作用に関与する成分で、世界中で研究されています。摂り方や科学的知見、注意点を一次情報に基づいて解説します。

※ 主な作用: 脳機能サポート、血流改善

白い背景に黄色い葉のグループ
Photo by Mockup Graphics
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

年齢とともに記憶力が気になる人や、脳の健康維持に関心がある人に向けた伝統的な植物由来成分です。 イチョウ葉エキスは脳血流の改善と抗酸化作用に関与し、世界で最も研究されているハーブの一つです。 朝に食事とともに摂るのが一般的で、抗凝固薬との相互作用に注意が必要です。

  • 主な働き:脳血流の改善・抗酸化作用・血小板凝集抑制
  • 摂るタイミング:朝食時、1日1〜2回
  • 注意:抗凝固薬や抗血小板薬との併用は医師に相談
  • 対象:中高年で記憶力が気になる方
  • 食品例:イチョウの葉(通常はエキスとして使用)

イチョウ葉エキスとは

イチョウ(Ginkgo biloba)は世界で最も古い種類の木の一つで、中国伝統医学として長い歴史があります。イチョウの木は「生きた化石」とも呼ばれ、2億年以上前から存在していると考えられています。

現代では、イチョウの葉から抽出されたエキスが記憶力、認知機能、末梢血流の維持を目的としたサプリメントとして世界中で使用されています。標準化されたエキス(EGb761など)は、フラボノイド配糖体24%、テルペンラクトン6%を含むよう調整されています。

日本では機能性表示食品として、「記憶力の一部である見た聞いた情報を思い出す力を維持する」機能が届出されている製品があります。厚生労働省eJIM

からだでの働きと科学的知見

イチョウ葉エキスは、主に脳血流の改善、抗酸化作用、抗炎症作用を通じて働くと考えられています。

作用機序

イチョウ葉エキスの作用機序には、脳血流の増加、抗酸化作用、抗炎症作用があり、抗血小板作用はフラボンとテルペンラクトンに起因するとされています。PubMed

臨床試験では80〜720mg/日の用量で、2週間から2年間の摂取が研究されています。適応症としては、アルツハイマー病における認知機能と記憶、加齢関連認知症、脳血流不全、間欠性跛行、統合失調症などが検討されています。

認知機能への影響

軽度認知障害やアルツハイマー病に関する複数の研究が行われていますが、結果は一貫していません。一部の研究ではイチョウが認知症の症状をわずかに改善させる可能性が示唆されていますが、この知見は信頼性が低いと考えられています。PubMed健康な成人を対象としたネットワークメタ分析では、イチョウ葉エキスが記憶力、実行機能、認知柔軟性の改善に有効である可能性が報告されています。PubMed

アルツハイマー病における酸化ストレスと神経炎症の役割を評価した包括的レビューでは、イチョウ葉エキスを含む天然抗酸化物質が認知機能改善の可能性を示唆していますが、決定的なエビデンスには至っていません。PubMed伝統医療・補完医療の統合アプローチを評価した研究では、イチョウ葉エキスが神経保護効果を示す可能性が報告されています。PubMed

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)が一部資金提供した大規模研究(3000人以上の高齢者対象)では、イチョウは認知症や認知機能低下を予防せず、アルツハイマー病に関連した認知症の悪化も予防できませんでした。厚生労働省eJIM

その他の研究領域

不安、糖尿病性網膜症、緑内障、末梢動脈疾患、月経前症候群(PMS)、統合失調症、めまいなどに対して、イチョウの有益性を示唆するわずかなエビデンスがありますが、全体的な決め手となるエビデンスは得られていません。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
脳血流改善 複数の研究で報告
認知機能維持 低〜中 結果は一貫せず
末梢血流改善 間欠性跛行で研究
認知症予防 大規模研究で否定的

摂り方とタイミング

イチョウ葉エキスは、朝に食事とともに摂取するのが一般的です。

機能性表示食品として届出されている製品では、1日あたり120〜240mgの摂取量が目安とされています。臨床研究では80〜720mg/日の範囲で使用されており、標準化されたエキス(EGb761など)が推奨されます。

効果を実感するまでには数週間から数か月かかることが一般的で、短期間での変化を期待するものではありません。継続的な摂取を前提とした使用が推奨されます。

栄養素どうしの関係と注意点

イチョウ葉エキスは、医薬品との相互作用に特に注意が必要です。

組み合わせ 推奨度 コメント
抗凝固薬(ワルファリンなど) × 出血リスク増加の可能性、併用禁止
抗血小板薬(アスピリンなど) 出血リスク増加、医師に相談必須
MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬) 相互作用の報告あり、医師に相談
抗てんかん薬 薬効に影響する可能性
ビタミンE × イチョウ葉 両方とも抗酸化作用、過剰摂取注意

重要な注意点:

  • 出血リスク:イチョウは血小板凝集を抑制するため、既知の出血リスクを有する場合は注意が必要です。手術予定がある場合は、少なくとも2週間前にイチョウの摂取を中止してください。厚生労働省eJIM
  • 妊娠中・授乳中:安全性が確立していないため、使用を避けてください
  • てんかん:てんかんのリスクを高める可能性があるため、てんかんのある方は使用を避けてください
  • 糖尿病:血糖値に影響する可能性があるため、糖尿病の方は医師に相談してください

食品から摂るには

イチョウ葉エキスは通常、サプリメントとして摂取されます。

注意事項:

  • 生または煎ったイチョウの種子、および加工していないイチョウの葉は、有害な量の毒性物質を含んでいる可能性があります
  • 機能性が確認されているのは標準化された葉エキスであり、種子や生の葉の摂取は推奨されません
  • 市販のサプリメントを選ぶ際は、標準化エキス(フラボノイド配糖体24%、テルペンラクトン6%程度)を含む製品を選ぶことが推奨されます

イチョウの木は日本の公園や街路樹としてよく見られますが、これらの葉を直接摂取することは安全性の観点から避けるべきです。

よくある質問

Q. どのくらいの期間摂取すれば効果がありますか?

研究では数週間から数か月の継続摂取で効果が評価されています。個人差がありますが、少なくとも4〜6週間の継続が一般的です。短期間での劇的な変化を期待するものではありません。

Q. 認知症の予防に効果がありますか?

3000人以上を対象とした大規模研究では、イチョウは認知症や認知機能低下を予防できませんでした。現時点では、認知症予防効果について決定的なエビデンスは存在しません。

Q. 若い人でも摂取する意味はありますか?

ほとんどの研究は中高齢者を対象としており、若年層での有効性データは限られています。健康な若年者の記憶力向上には有用ではないことが研究で示唆されています。

Q. 抗凝固薬を飲んでいますが併用できますか?

抗凝固薬(ワルファリンなど)や抗血小板薬を服用している方は、出血リスクが高まる可能性があるため、イチョウの摂取前に必ず医師に相談してください。自己判断での併用は避けてください。

Q. 副作用はありますか?

一般的な副作用として、頭痛、胃のむかつき、めまい、動悸、便秘、アレルギー性皮膚反応などが報告されています。適量であれば重大な副作用は少ないですが、異常を感じたら使用を中止し医師に相談してください。

Q. サプリメントの選び方は?

標準化されたエキス(EGb761など)を含む製品を選ぶことが推奨されます。フラボノイド配糖体24%、テルペンラクトン6%程度を含む製品が一般的です。信頼できるメーカーの製品を選び、製品の品質表示を確認してください。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。