たんぱく質

エラスチンペプチド|血管のしなやかさを支える

年齢とともに気になる血管の硬さ。エラスチンペプチドは血管の弾力性維持に関与する成分で、カツオ由来のペプチドが研究されています。摂り方や科学的知見を一次情報に基づいて解説します。

※ 主な作用: 血管弾力性サポート、血圧調整サポート

スレートボードにグレープフルーツの半分を添えた手羽先のフライ
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摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

年齢を重ねると血管の硬さが気になる人に向けた、血管弾力性サポート成分です。 エラスチンペプチドは血管壁に存在するエラスチンを低分子化したもので、血管のしなやかさ維持に関与します。 カツオの動脈球由来のペプチドが機能性表示食品として認められており、食事とともに摂るのが一般的です。

  • 主な働き:血管の弾力性維持・血圧の正常範囲内での維持をサポート
  • 摂るタイミング:食事と一緒に、1日1回
  • 注意:血圧に関わる成分のため、医薬品服用中の方は医師に相談
  • 対象:中高年で血管の柔軟性が気になる方
  • 食品例:カツオ(特に動脈球)、魚類の結合組織

エラスチンペプチドとは

エラスチンペプチドは、血管や皮膚などに存在する弾性線維「エラスチン」を酵素分解して得られる低分子ペプチドです。血管壁には約50%のエラスチンが含まれ、血管の柔軟性を保つ役割を担っています。PubMedエラスチンは血管の弾性と可逆的な伸縮性を提供し、心臓の負担を軽減し、末梢動脈の拍動流を減衰させる重要なタンパク質です。PubMed

カツオ由来エラスチンペプチドは、カツオの動脈球(心臓近くの膨らんだ部分)から抽出され、日本では機能性表示食品として複数の製品が届出されています。動脈球は血流の圧力変動を和らげる器官で、エラスチンが豊富に含まれています。

年齢とともにエラスチンの分解が進むと血管が硬くなりやすく、それが循環機能の低下につながると考えられています。PubMed

からだでの働きと科学的知見

エラスチンペプチドは、主に血管内皮機能と血管の弾力性に関与することが報告されています。

血管機能への作用

カツオ動脈球由来のエラスチンペプチドを用いた動物実験では、高血圧自然発症ラット(SHR)に5週間投与したところ、血管内皮の損傷が抑制され、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)のmRNA産生が増加しました。さらに、圧力による血管拡張反応が改善されたと報告されています。PubMed

エラスチン受容体複合体との関係

エラスチンペプチドは「エラスチン受容体複合体(ERC)」を介して細胞にシグナルを伝えることが示されています。この受容体は血管の健康維持に関与し、代謝症候群や心血管疾患の進行に影響を与える可能性が指摘されています。PubMed

ヒト試験での知見

日本の機能性表示食品制度では、カツオ由来エラスチンペプチド75mg/日を16週間摂取することで、中高齢者の加齢に伴う血管のしなやかさ(柔軟性)維持に役立つことが届出されています。エラスチンは生体内で極めて長い半-life(半減期)と低い代謝回転率を持つため、生理的には一定量が維持されますが、加齢や疾患により分解されたエラスチン由来ペプチドが増加し、エラスチン受容体複合体を介して様々な生理作用を示すことが報告されています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
血管内皮機能 動物実験で報告
血管柔軟性維持 ヒト試験で報告
eNOS活性化 複数研究で示唆

摂り方とタイミング

エラスチンペプチドは、食事と一緒に摂取するのが一般的です。

機能性表示食品として届出されている製品では、1日あたり75mgの摂取量が目安とされています。空腹時よりも食事中や食後に摂ることで、消化吸収がスムーズになると考えられています。

継続的な摂取が前提となっており、短期間での変化を期待するものではありません。16週間程度の継続摂取を想定した研究が多く、日々のルーチンとして取り入れることが推奨されます。

栄養素どうしの関係と注意点

エラスチンペプチドは、他の栄養素や医薬品との相互作用に配慮が必要です。

組み合わせ 推奨度 コメント
ビタミンC × エラスチン コラーゲン・エラスチン合成をサポート
降圧薬 × エラスチンペプチド 血圧に影響する可能性、医師に相談が必要
他の血管サポート成分 過剰摂取を避ければ併用可能

注意点:

  • 血圧に関わる成分のため、降圧薬を服用中の方は医師・薬剤師に相談してください
  • 妊娠中・授乳中の安全性データが不足しているため、使用を避けるか医師に相談が必要です
  • 魚アレルギーのある方は注意が必要です

食品から摂るには

エラスチンは主に動物の結合組織に含まれており、以下のような食品に存在します。

エラスチンを多く含む食品:

  • カツオの動脈球(最も豊富)
  • 牛すじ肉
  • 手羽先
  • 軟骨
  • 魚の皮

ただし、通常の食事から摂取できるエラスチンは高分子であり、低分子化されたエラスチンペプチドとは吸収性が異なります。機能性が確認されているのは酵素処理された低分子ペプチドであるため、通常の食事からの効果は限定的と考えられます。

調理のポイントとしては、コラーゲンやエラスチンを含む部位は長時間煮込むことで柔らかくなり、食べやすくなります。

よくある質問

Q. エラスチンペプチドとコラーゲンペプチドの違いは?

エラスチンとコラーゲンは異なる構造タンパク質です。コラーゲンは皮膚や骨の強度に関わるのに対し、エラスチンは伸縮性・弾力性に関与します。血管ではコラーゲンが強度を、エラスチンが柔軟性を担うとされています。

Q. どのくらいの期間摂取すればよいですか?

研究では16週間(約4か月)の継続摂取で血管のしなやかさ維持効果が示されています。個人差がありますが、数か月単位での継続が一般的です。

Q. 血圧が正常な人でも摂取できますか?

機能性表示食品の届出では「血管のしなやかさ維持」が主な目的であり、正常血圧の方でも摂取可能です。ただし、低血圧の方は念のため医師に相談することをおすすめします。

Q. サプリメントと食品、どちらがよいですか?

機能性が確認されているのは酵素処理された低分子ペプチドです。通常の食品からは高分子エラスチンしか摂取できないため、機能性表示食品やサプリメントの方が効率的と考えられます。

Q. 副作用はありますか?

適切な量であれば重大な副作用の報告は少ないですが、魚アレルギーのある方は注意が必要です。また、過剰摂取は避け、製品の推奨量を守ってください。

Q. 若い人でも摂取する意味はありますか?

血管の弾力性低下は主に加齢に伴う変化です。若年層での有効性データは限られており、中高年以降の方が主な対象と考えられます。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。