DIM(ジインドリルメタン)とは
DIM(ジインドリルメタン、3,3'-diindolylmethane)は、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどのアブラナ科野菜に含まれるインドール-3-カルビノール(I3C)が体内の胃酸によって変換されて生成される天然成分です。近年、エストロゲン代謝経路の調整を助ける役割が注目され、ホルモンバランスが気になる方の健康維持に関与する可能性が研究されています。
DIMは、エストロゲンが体内で代謝される際の経路に関与し、特定の代謝物への変換を助けることで、ホルモンバランスの維持に寄与すると考えられています。また、抗酸化作用を持つ成分としても研究が進んでいます。
からだでの働きと科学的知見
DIMは、エストロゲン代謝経路の調整、ホルモンバランスの維持、抗酸化作用に関与します。
エストロゲン代謝経路の調整:
DIMは、エストロゲンが肝臓で代謝される際の経路に関与し、2-ヒドロキシエストロゲンへの変換を助ける役割が報告されています。PubMed エストロゲンは体内で複数の代謝経路を経て、2-ヒドロキシ、4-ヒドロキシ、16α-ヒドロキシなどの代謝物に変換されます。DIMは2-ヒドロキシ経路を優先的に促進することで、エストロゲン代謝のバランス維持に関与すると考えられています。
2025年のMenopause誌に掲載されたレビュー研究では、閉経後女性におけるDIMのエストラジオール代謝への影響が検討されました。DIMがエストロゲン代謝経路に関与し、2-ヒドロキシエストロゲンへの変換を助ける可能性が示されています。
ホルモンバランスの維持:
DIMは、エストロゲン代謝の調整を通じて、ホルモンバランスの維持を助ける可能性があります。PubMed 閉経後女性や、ホルモンバランスが気になる方において、エストラジオール代謝への影響が研究されています。BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を持つ女性23名を対象とした研究では、DIM 100mg/日を1年間摂取した際の乳房密度やエストロゲン代謝マーカーへの影響が評価され、DIMがホルモン関連のバイオマーカーに関与する可能性が示唆されています。PubMed
乳がん患者130名を対象とした臨床試験では、タモキシフェン治療と併用してDIM 150mgを1日2回摂取した際のエストロゲン代謝マーカーへの影響が観察されました。PubMed
抗酸化作用:
DIMは、細胞内の抗酸化酵素の活性化を助ける役割が報告されています。PubMed Nrf2経路の活性化を通じて、細胞の抗酸化防御機構の維持に関与すると考えられています。この作用により、酸化ストレスから細胞を保護する可能性があります。PubMed
摂り方とタイミング
DIMのサプリメントでは、一般的に100~300mg/日程度が使用されています。研究では100~300mg/日の範囲で実施されたものが多く見られます。
DIMは脂溶性成分のため、食事と一緒に摂取することで吸収が助けられる可能性があります。また、個人のホルモン状態や健康状態によって適切な量は異なる可能性があるため、特にホルモン関連の健康状態が気になる方は、医療専門家に相談することが推奨されます。
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ホルモン療法 | △ | 相互作用の可能性、医師に相談 |
| CYP1A2代謝薬 | △ | 薬物代謝に影響の可能性、医師に相談 |
| アブラナ科野菜 | ○ | I3C供給源として相乗効果が期待できる |
DIMは一般的に安全性の高い成分とされていますが、以下の点に注意が必要です。
ホルモン関連の健康状態:
DIMはエストロゲン代謝に関与するため、ホルモン感受性の健康状態(乳がん、子宮がん、卵巣がん、子宮内膜症など)がある方や、その既往歴がある方は、使用前に必ず医療専門家に相談してください。
妊娠・授乳中:
妊娠中や授乳中の安全性については十分なデータがないため、使用を避けるか、医療専門家に相談することが推奨されます。
薬剤との相互作用:
DIMは肝臓の薬物代謝酵素(特にCYP1A2)に影響を与える可能性があります。他の医薬品を服用している方は、相互作用の可能性について医療専門家に相談してください。特にホルモン療法を受けている方は注意が必要です。
消化器症状:
高用量のDIM摂取により、一部の方で消化器系の不快感(吐き気、腹部膨満感など)が報告されています。少量から開始し、体調を観察しながら調整することが推奨されます。
尿の変色:
DIM摂取により尿が濃い黄色や緑色がかった色になることがありますが、これは一般的に無害とされています。
食品から摂るには
DIMそのものは食品中にはほとんど存在せず、その前駆体であるインドール-3-カルビノール(I3C)がアブラナ科野菜に含まれています。I3Cは体内の胃酸によってDIMに変換されます。
アブラナ科野菜(I3C供給源):
- ブロッコリー: I3Cを豊富に含む代表的な野菜
- カリフラワー: ブロッコリーと同様にI3Cを含む
- 芽キャベツ: 小さいながらI3C含有量が高い
- キャベツ: 日常的に摂取しやすいI3C源
- ケール: スーパーフードとして知られ、I3Cも含む
- 白菜: アジア料理でよく使われるアブラナ科野菜
- 大根: 根菜類のアブラナ科野菜
これらの野菜を生で摂取するか、軽く調理することでI3Cの摂取量を増やすことができます。ただし、I3CからDIMへの変換効率は個人差があり、サプリメントと比べて摂取量の正確な管理は難しいとされています。
