抗酸化や心血管の健康、肝臓の健康、認知機能維持が気になる人に注目されるフラボノイド化合物です。 ジヒドロケルセチン(タキシフォリン)はケルセチンの還元型で、シベリアカラマツの樹皮に高濃度で含まれています。強力な抗酸化作用、心血管保護作用(虚血再灌流障害軽減)、抗炎症作用(NLRP3インフラマソーム抑制)、肝臓保護・代謝改善、神経保護・認知機能サポートに関与する臨床研究が報告されています。 ケルセチンより水溶性が高く生体利用率に優れ、ビタミンC・Eとの相乗効果を持ちます。
- 主な働き:抗酸化、心血管保護、抗炎症、肝臓保護、認知機能サポート
- 摂るタイミング:食事と一緒に50〜200mg/日、1日2回の分割摂取推奨
- 相性:ビタミンC・Eと相乗効果、抗凝固薬・降圧薬・糖尿病薬は医師に相談
- 注意:手術2週間前は摂取中止、妊娠・授乳中は医師に相談、2〜3ヶ月の継続推奨
- 食品例:シベリアカラマツサプリメント(通常の食事からの十分な摂取は困難)
ジヒドロケルセチンとは
ジヒドロケルセチン(Dihydroquercetin)は、**タキシフォリン(Taxifolin)**とも呼ばれるフラボノイド化合物です。ケルセチンの還元型(ジヒドロ型)であり、ケルセチンと類似した構造を持ちながら、いくつかの点でより優れた特性を持つことが知られています。
主な供給源として、シベリアカラマツなどの樹皮や木材に高濃度で含まれるカラマツ属(Larix属)、少量含まれるブドウの種、レモン、オレンジなどの果皮に含まれる柑橘類、外皮に微量含まれる玉ねぎが挙げられます。
ジヒドロケルセチンは、ケルセチンと比較して水溶性が高く、生体利用率(バイオアベイラビリティ)が優れているという特徴があります。また、他の抗酸化物質(ビタミンCやビタミンEなど)の効果を増強するシナジー効果を持つことも報告されています。
からだでの働きと科学的知見
ジヒドロケルセチンは、強力な抗酸化作用、心血管保護作用、抗炎症作用、肝臓保護・代謝改善、神経保護・認知機能サポートに関与します。
強力な抗酸化作用:
ジヒドロケルセチンの最も重要な働きの一つが、活性酸素種(ROS)の消去です。ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドアニオン、過酸化脂質ラジカルなどを直接捕捉し、細胞膜のリン脂質が酸化されるのを防ぎ、膜の完全性を維持します。PubMed
また、鉄や銅などの金属イオンと結合し、フェントン反応による酸化ストレスを抑制します。さらに、グルタチオン、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、カタラーゼなどの内因性抗酸化酵素の活性を高めることで、体内の抗酸化防御システムを強化します。
ジヒドロケルセチンは、ビタミンCの効果を増強しその消費を抑制し、ビタミンEと協働して脂質過酸化を抑制します。複数の抗酸化物質と併用することで、相乗的な抗酸化効果を発揮し、加齢に伴う酸化ストレスを軽減します。
心血管保護作用:
ジヒドロケルセチンは心臓と血管の健康維持に多面的に関与します。虚血再灌流障害に対する心保護効果を評価した研究では、ジヒドロケルセチンの前処置が心機能障害を著しく軽減し、フリーラジカルの消去、脂質過酸化の減少、抗酸化酵素活性の増加が確認されました。PubMed
心筋梗塞後の再灌流時に生じる酸化ストレスと炎症を抑制し、PI3K/Akt経路の活性化により心筋細胞の死を防ぎます。また、ER(小胞体)ストレス誘導性のアポトーシスを阻害し、心拍出量、左室駆出率などの心機能指標を改善します。
血管内皮細胞の健康を維持し、NO(一酸化窒素)産生を促進することで、血管柔軟性を維持し、動脈硬化による血管硬化を抑制します。NO産生促進と血管拡張作用により、血圧の健康的な維持に関与します。これらの作用により、酸化ストレスと炎症の抑制を通じて、心血管疾患のリスク因子を軽減する可能性があります。
抗炎症作用:
ジヒドロケルセチンは慢性炎症の軽減に関与します。TNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生を減少させ、炎症反応の中心的な転写因子であるNF-κBの活性化を抑制します。PubMed
活性酸素種を減少させ、TXNIP-NLRP3インフラマソーム経路を阻害することで、神経や血管を傷つける炎症物質の産生を抑制します。また、M1型(炎症促進型)からM2型(炎症抑制型)へのマクロファージのシフトを促進します。これらの抗炎症作用により、関節炎、炎症性腸疾患などの炎症性疾患における炎症軽減をサポートする可能性があります。
肝臓保護・代謝改善:
ジヒドロケルセチンは肝臓の健康と脂質代謝の改善に関与します。動物実験では、肝臓への脂肪蓄積を抑制し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症を防ぐことが確認されました。PubMed
慢性炎症と肝線維化の進行を抑制し、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)後の肝腫瘍発生を効果的に防ぎます。また、脂質代謝を改善し、血中脂質プロファイルの健全化に寄与し、インスリン感受性の改善に関与する可能性があります。これらの作用により、血糖値の調節をサポートする可能性があります。
神経保護・認知機能サポート:
ジヒドロケルセチンは脳の健康維持と認知機能のサポートに関与する可能性があります。2025年に日本国立循環器病研究センターで実施予定の「タキシフォリンによる認知機能低下予防(T-COG trial)」は、タキシフォリンの認知機能への効果を評価する重要な臨床試験です。PubMed
糖尿病患者では認知症リスクが2〜3倍高いとされていますが、タキシフォリンは糖尿病刺激により活性化したミクログリア(脳の免疫細胞)において、TXNIP-NLRP3経路を抑制し、神経や血管を傷つける炎症物質の産生を抑制することが示されています。
脳組織は酸化ストレスに特に脆弱ですが、ジヒドロケルセチンの抗酸化作用が神経細胞を保護します。また、ミトコンドリアの機能を維持し、神経細胞のエネルギー産生をサポートします。PubMed 脳血管の健康維持により、血管性認知症のリスク軽減に寄与する可能性があります。動物実験およびin vitro研究では、抗腫瘍効果や一部のウイルス感染に対する保護効果も報告されています。
摂り方とタイミング
ジヒドロケルセチン(タキシフォリン)の臨床研究では、一般的な用量として50mg〜200mg/日、抗酸化サポートとして50mg〜100mg/日、心血管サポートとして100mg〜200mg/日が使用されており、認知機能サポートについては臨床試験で評価中(用量は未公開)です。サプリメント製品によって含有量が異なるため、製品ラベルの指示に従って摂取することが重要です。
摂取タイミングとして、吸収率向上のため食事と一緒に摂取することが推奨され、1日量を2回に分けて摂取すると血中濃度の安定化に寄与する分割摂取、効果が現れるまでに数週間〜数ヶ月かかる場合があるため継続摂取が推奨されます。
栄養素どうしの関係と注意点
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンC | ◎ | 相乗効果で抗酸化作用が増強される |
| ビタミンE | ◎ | 脂質過酸化抑制の相乗効果が期待できる |
| 抗凝固薬 | △ | 出血リスクの可能性、医師に相談 |
| 血圧降下薬 | △ | 血圧低下の可能性、医師に相談 |
| 糖尿病治療薬 | △ | 血糖値に影響の可能性、医師に相談 |
ジヒドロケルセチンは一般的に安全性が高いと考えられていますが、以下の点に注意が必要です。
一般的な安全性として、ジヒドロケルセチンは一般的に安全性が高いと考えられており、報告されている副作用は非常に少ないとされています。
特別な注意が必要な方として、安全性データが不足しているため医師に相談すべき妊娠・授乳中の方、特に抗凝固薬、血圧降下薬、糖尿病治療薬を服用している場合は医師に相談すべき薬剤服用中の方、出血リスクを考慮し手術の2週間前には摂取を中止することが推奨される手術予定の方が挙げられます。
薬剤との相互作用として、出血リスクを高める可能性があるため注意が必要な抗凝固薬、血圧を低下させる作用があるため併用により血圧が過度に下がる可能性がある血圧降下薬、血糖値を低下させる可能性があるため併用時は血糖値のモニタリングが必要な糖尿病治療薬が挙げられます。
品質管理として、信頼できるメーカーの製品を選択し、シベリアカラマツ由来など原料の供給源が明記されている製品を選ぶこと、純度や含有量が明記されている製品を選択することが重要です。
食品から摂るには
ジヒドロケルセチン(タキシフォリン)は、一部の植物に天然に含まれていますが、その含有量は限定的です。
ジヒドロケルセチンを含む食品として、樹木ではジヒドロケルセチンの最も豊富な供給源で樹皮や木材に高濃度で含まれるシベリアカラマツ(Larix sibirica)、カラマツ属の樹木に豊富なダフリアカラマツ(Larix gmelinii)、果物では種に少量含まれるブドウ、レモン、オレンジなどの果皮に微量含まれる柑橘類、野菜では外皮に微量含まれる玉ねぎが挙げられます。
食品からの摂取の限界:
通常の食事からジヒドロケルセチンを十分量摂取することは困難です。臨床研究で使用される用量(50~200mg/日)を食品から得るには、カラマツ樹皮などを大量に摂取する必要があり、現実的ではありません。
サプリメントの利用:
効率的にジヒドロケルセチンを摂取するには、シベリアカラマツ由来のサプリメントを利用することが推奨されます。サプリメントは、手軽に摂取でき携帯に便利なカプセル・錠剤タイプ、水やジュースに溶かして摂取でき用量調整が容易な粉末タイプの形態で提供されています。
製品選択のポイントとして、シベリアカラマツ由来など原料の供給源の明記がされている製品を選択すること、ジヒドロケルセチン(タキシフォリン)の含有量が明記されている純度と含有量が明確な製品を選択すること、GMP認証など品質管理体制が整ったメーカーの製品を選択することが重要です。
