眠気や集中力の低下が気になる方、運動時のパフォーマンス向上に関心がある方に向けた、世界で最も広く摂取されている精神刺激物質です。 カフェインはアデノシン受容体に作用し、覚醒状態の維持と運動パフォーマンスに関与します。 運動の30〜60分前や朝に摂取するのが一般的ですが、個人差が大きく、摂取量には注意が必要です。
- 主な働き:覚醒状態の維持・集中力サポート・運動パフォーマンス向上
- 摂るタイミング:朝、または運動前30〜60分
- 注意:個人差が大きく、過剰摂取は不眠・動悸などのリスクあり
- 対象:眠気対策・集中力維持・運動習慣のある方
- 食品例:コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク、チョコレート
カフェインとは
カフェインは、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆などに天然に含まれる精神刺激物質(中枢神経刺激薬)です。化学的にはメチルキサンチン類に分類され、世界で最も広く摂取されている精神活性物質の一つです。
カフェインの作用機序は、主に脳内のアデノシン受容体(特にA1とA2A受容体)への拮抗作用によるものです。アデノシンは睡眠促進作用を持つ神経伝達物質ですが、カフェインがこの受容体に結合することで、アデノシンの作用を阻害し、覚醒状態を維持します。PubMed
日本では、食品安全委員会が「食品中のカフェイン」に関するファクトシートを公開しており、カフェインの性質と安全性について情報提供を行っています。食品安全委員会
からだでの働きと科学的知見
カフェインは、主に中枢神経系への作用を通じて覚醒状態の維持と運動パフォーマンス向上に関与します。
覚醒作用と認知機能
低用量(約40mg、0.5mg/kg)から中等量(約300mg、4mg/kg)のカフェイン摂取により、覚醒度、注意力、反応時間が向上することが示されています。カフェインは通常、睡眠不足による覚醒度、注意力、警戒心への影響を軽減します。PubMed
運動パフォーマンスへの影響
複数のメタアナリシスにより、カフェインの運動パフォーマンス向上作用が確認されています。
筋力とパワー:カフェイン摂取は、上半身の最大筋力と筋パワーに有意な効果を示しました。具体的には、筋力(標準化平均差 = 0.20; 95%信頼区間: 0.03, 0.36; p = 0.023)と筋パワー(標準化平均差 = 0.17; 95%信頼区間: 0.00, 0.34; p = 0.047)が向上しました。PubMed
筋持久力:カフェイン補給は筋持久力、最大筋力、自覚的運動強度(RPE)に肯定的な影響を与えることが、系統的レビューとメタアナリシスで示されています。PubMed
持久力パフォーマンス:中等量(3〜6 mg/kg)のカフェイン摂取により、持久力パフォーマンスにわずかながら明確な効果が見られ、平均パワー出力が2.92 ± 2.18%向上し、タイムトライアル完走時間が2.26 ± 2.60%短縮しました。PubMed
ランニングパフォーマンス:カフェイン摂取はランニング試験における疲労困憊までの時間を延長し、ランニングタイムトライアルのパフォーマンスを向上させる有意な効果を示しました。PubMed
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 覚醒作用 | 高 | 複数の研究で確認 |
| 運動パフォーマンス向上 | 高 | 複数のメタアナリシスで支持 |
| 筋力・パワー向上 | 中〜高 | 上半身で顕著 |
| 持久力向上 | 中〜高 | 3〜6mg/kgで効果 |
摂り方とタイミング
カフェインは、目的によって摂取タイミングが異なります。
覚醒・集中力維持目的
朝または日中の必要なタイミングで摂取します。午後遅くや夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響する可能性があるため避けることが推奨されます。
運動パフォーマンス目的
運動の30〜60分前に摂取するのが一般的です。研究では3〜6 mg/kg体重の用量が使用されており、体重60kgの人であれば180〜360mg程度が目安となります。
注意すべき点:
- カフェインの半減期は個人差が大きく、平均3〜5時間程度です
- 習慣的な摂取により耐性が生じ、効果が減弱することがあります
- 妊娠中・授乳中の方は摂取量に特に注意が必要です
摂取量の目安と注意点
日本では、カフェインに対する感受性には個人差があり、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しいため、明確な摂取目安量は定められていません。
海外の推奨摂取量
消費者庁の情報によれば、以下のような海外の目安が参考として紹介されています。消費者庁
- 健康な成人:カナダ保健省では最大400mg/日
- 妊婦・授乳中の女性:300mg/日以下
- 子ども(4〜6歳):45mg/日
- 子ども(7〜9歳):62.5mg/日
- 子ども(10〜12歳):85mg/日
国際生命科学研究機構(ILSI)北米支部は、健康な成人で400mg/日以下、健康な妊婦で300mg/日以下の摂取量であれば、有害作用がないとしています。
過剰摂取のリスク
カフェインを過剰に摂取すると、以下のような症状が現れることがあります:
- めまい
- 心拍数の増加
- 興奮、不安
- 震え
- 不眠
- 消化器症状(下痢、吐き気、嘔吐)
栄養素どうしの関係と相互作用
カフェインは、他の栄養素や医薬品との相互作用に配慮が必要です。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| L-テアニン × カフェイン | ○ | 相乗効果の報告あり、集中力向上 |
| 刺激薬・気管支拡張薬 | △ | 相互作用の可能性、医師に相談 |
| アルコール | △ | カフェインがアルコールの鎮静作用を隠す可能性 |
| 抗凝固薬 | △ | 一部の相互作用報告あり |
| 降圧薬 | △ | 血圧に影響する可能性 |
注意点:
- 妊娠中・授乳中:摂取量を制限する必要があります。医師に相談してください
- 不眠症・不安障害:症状を悪化させる可能性があります
- 心血管疾患:心拍数や血圧に影響するため、医師に相談してください
- 胃潰瘍・逆流性食道炎:胃酸分泌を促進するため注意が必要です
食品から摂るには
カフェインは、多くの食品や飲料に含まれています。
カフェインを含む主な食品・飲料:
- コーヒー(150ml):約60〜90mg
- 紅茶(150ml):約30〜50mg
- 緑茶(150ml):約20〜40mg
- ウーロン茶(150ml):約20〜30mg
- エナジードリンク(250ml):約80mg(製品により異なる)
- コーラ飲料(350ml):約35mg
- ダークチョコレート(50g):約20〜30mg
摂取時のポイント:
- 飲料の種類、抽出方法、抽出時間によってカフェイン含有量は大きく変動します
- エナジードリンクは製品によってカフェイン含有量が大きく異なるため、表示を確認してください
- 複数のカフェイン含有飲料を併用する場合、総摂取量に注意が必要です
