ポリフェノール・ファイトケミカル

アピゲニン|リラックスと睡眠の質が気になる人のカモミール由来フラボノイド

不安感や睡眠の質が気になる方に向けて、アピゲニンがリラックスや睡眠にどのように関与するかを、臨床研究の科学的根拠と共に解説します。

※ 主な作用: 抗酸化、抗炎症、リラックス

新鮮な野菜とナチュラルフード
Photo by hobi industri
摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

日本人の食事摂取基準では基準値未設定

リラックスと睡眠の質が気になる人に注目されるカモミール由来のフラボノイドです。 アピゲニン(apigenin)は、カモミール(ジャーマンカモミール)に豊富に含まれる天然のフラボノイドで、GABA受容体に結合することでリラックス作用との関連が研究されています。 2024年のシステマティックレビューでは、カモミールの経口摂取を評価した10試験のうち9試験で不安感の軽減が確認されました。

  • 主な働き:リラックスとの関連、睡眠の質維持、抗酸化作用
  • 摂るタイミング:夕食後または就寝前、カモミールティーまたはサプリメント
  • 相性:GABA、L-テアニン、マグネシウム
  • 注意:キク科アレルギーの方は避ける
  • 食品例:カモミールティー、カモミールエキス、パセリ、セロリ

アピゲニンとは

アピゲニン(apigenin)は、カモミール(Matricaria recutita)に豊富に含まれるフラボノイドの一種です。カモミールは古代エジプト時代から薬草として利用されてきた歴史を持ち、現代でもハーブティーとして広く親しまれています。

アピゲニンは、脳内のGABA(γ-アミノ酪酸)受容体に結合し、ベンゾジアゼピン系受容体のリガンドとして作用することで、神経系の活動を穏やかにする可能性が報告されています。PubMedこの作用機序は、リラックスや睡眠の質維持との関連で注目されています。

カモミールティー1杯(約200ml)には、アピゲニンが約3〜5mg含まれているとされています。サプリメントとしては、カモミールエキスが標準化された製品が多く、アピゲニン含有量が1.2%程度に調整されています。

からだでの働きと科学的知見

アピゲニンは、リラックス、睡眠の質、抗炎症作用との関連で研究されています。

不安感との関連

2024年4月に発表されたシステマティックレビューでは、カモミールの経口摂取が不安感に与える影響を評価した10試験が分析され、そのうち9試験でカモミールが不安感の軽減に関与することが確認されました。PubMed

カモミールに含まれるフラボノイド成分アピゲニンは、GABA受容体の調節を通じて穏やかな作用をもたらすと考えられています。

睡眠の質との関連

軽度から中等度の不安を持つ成人57名を対象とした臨床試験では、カモミールエキスカプセル(アピゲニン1.2%含有、220mg)の摂取により、睡眠の質維持に関与する可能性が示されました。PubMed

アメリカの研究では、カモミールエキスの摂取により睡眠潜時(入眠までの時間)が約50.3分から34.2分に短縮したと報告されています。

一次性不眠症患者を対象とした28日間のプラセボ対照試験では、カモミールエキス270mgを1日2回摂取したグループで、日中の機能改善傾向が観察されましたが、統計的有意差には達しませんでした。PubMed

全般性不安障害(GAD)との関連

中等度から重度のGAD患者を対象とした長期試験では、カモミール摂取群がプラセボ群と比較して、GAD症状の有意な低減を維持し、体重と平均動脈血圧の有意な低下が観察されました。PubMed長期的なカモミール摂取は安全であり、GAD症状を有意に軽減しましたが、再発率には有意な差は見られませんでした。

抗炎症作用

細胞実験では、アピゲニンがLPS(リポ多糖)処理後のマウスにおいてTNF-α(腫瘍壊死因子α)の産生を減少させることが確認されており、抗炎症作用との関連が示唆されています。

研究テーマ エビデンス強度 補足
不安感軽減 10試験中9試験で効果確認PubMed
睡眠の質維持 低〜中 睡眠潜時短縮の報告あり
GAD症状軽減 長期試験で症状軽減・体重減少を確認
抗炎症作用 細胞実験レベル

摂り方とタイミング

アピゲニンの推奨量は、臨床研究で使用された量に基づき、カモミールエキスとして1日あたり220〜1,100mg程度とされています。カモミールティーとして摂取する場合は、1日1〜3杯が目安です。

夕食後または就寝前に摂取することが一般的にすすめられます。リラックス作用との関連から、就寝30分〜1時間前の摂取が適しているとされています。

カモミールティーは、ティーバッグまたはドライハーブ(1〜2g)を熱湯で5〜10分程度抽出して飲むことが推奨されます。長時間抽出すると苦味が出るため、適度な時間で引き上げることが適切です。

臨床研究では4〜8週間程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。

栄養素どうしの関係と注意点

アピゲニンは他の成分との組み合わせで相乗効果が期待できます。

組み合わせ 推奨度 コメント
GABA リラックス作用との相乗効果が期待される
L-テアニン 緑茶由来のアミノ酸と併用で穏やかな作用
マグネシウム 神経系の健康維持との関連
ビタミンB群 神経系の機能維持をサポート

注意点として、キク科植物(ブタクサ、マリーゴールドなど)にアレルギーのある方は、カモミールにもアレルギー反応を起こす可能性があるため、摂取を避けることが推奨されます。

また、鎮静作用との関連から、運転や機械操作の前に大量摂取することは避けることが推奨されます。抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用している方は、相互作用の可能性があるため、医師に相談することが推奨されます。

妊娠中・授乳中の方は、安全性に関する十分なデータがないため、医師に相談することが推奨されます。

食品から摂るには

アピゲニンは、以下の食品に含まれています。

食品 アピゲニン含有量(目安)
カモミールティー(1杯200ml) 3〜5mg
ドライパセリ(100g) 約45mg
セロリ(100g) 約2〜3mg
ドライオレガノ(100g) 約1〜2mg

1日の摂取目安(カモミールエキス換算):

  • カモミールティー:1〜3杯/日(アピゲニン3〜15mg)
  • カモミールエキスサプリメント:220〜1,100mg/日(アピゲニン約2.6〜13.2mg)

カモミールティーは、就寝前に温かい状態で飲むことで、リラックス時間を演出できます。ハチミツやレモンを加えることで、飲みやすくなります。

サプリメントとして摂取する場合は、カモミールエキスがアピゲニン含有量(通常1.2%程度)に標準化された製品を選ぶことが推奨されます。信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。

よくある質問

Q. どのくらいの期間摂取すれば良いですか?

臨床研究では4〜8週間の継続摂取で評価されています。リラックスや睡眠の質は個人差が大きく、少なくとも2〜4週間程度の継続が推奨されます。ただし、カモミールティーは日常的に飲用されているハーブティーであり、長期的な摂取も一般的に安全とされています。

Q. 即効性はありますか?

一部の研究では、単回摂取でもリラックス作用との関連が報告されていますが、個人差が大きいため、継続的な摂取が推奨されます。就寝前の習慣として取り入れることで、緩やかな変化を実感しやすくなります。

Q. カモミールティーとサプリメント、どちらが良いですか?

カモミールティーは、温かい飲み物としてリラックス時間を演出できるため、就寝前の習慣として適しています。サプリメントは、アピゲニン含有量が標準化されており、一貫した摂取が可能です。どちらも有効ですが、個人の好みやライフスタイルに合わせて選択することが推奨されます。

Q. 副作用はありますか?

臨床試験では重篤な副作用の報告は少なく、一般的には安全性が高いとされています。ただし、キク科アレルギーのある方はアレルギー反応を起こす可能性があります。まれに胃腸の不快感、眠気、頭痛などが報告されています。製品の推奨量を守り、異変を感じた場合は使用を中止し医師に相談してください。

Q. 薬との相互作用はありますか?

抗凝固薬(ワルファリンなど)との相互作用が懸念されるため、これらの薬を服用している方は医師に相談することが推奨されます。また、鎮静剤や睡眠薬との併用は、過度の眠気を引き起こす可能性があるため、医師に相談することが推奨されます。

Q. 妊娠中・授乳中でも摂取できますか?

妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータがありません。伝統的にカモミールティーは広く飲用されていますが、大量摂取やサプリメント形態での摂取は避け、医師に相談することが推奨されます。

Q. 子供が摂取しても大丈夫ですか?

カモミールティーは伝統的に子供にも飲用されていますが、サプリメント形態での摂取については十分なデータがありません。子供に摂取させる場合は、少量から始め、医師に相談することが推奨されます。

Q. GABA受容体への作用はベンゾジアゼピン系薬剤と同じですか?

アピゲニンはGABA受容体に結合しますが、ベンゾジアゼピン系薬剤とは作用機序が異なり、穏やかな作用が特徴です。依存性や耐性のリスクは低いとされていますが、長期的な安全性については、さらなる研究が必要です。医薬品の代替として使用する場合は、必ず医師に相談してください。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。