脂肪酸・脂質

α-リノレン酸(ALA)|心血管の健康が気になる人の植物由来オメガ3脂肪酸

心臓・血管の健康が気になる方に向けて、α-リノレン酸が心血管疾患リスクや血中脂質にどのように関与するかを、臨床研究の科学的根拠と共に解説します。

新鮮な野菜とナチュラルフード
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摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)2,000mg
UL(耐容上限量)mg

オメガ3脂肪酸(植物由来)

心血管の健康が気になる人に注目される植物由来のオメガ3脂肪酸です。 α-リノレン酸(alpha-linolenic acid、ALA)は、体内で合成できない必須脂肪酸であり、EPA・DHAの前駆体として機能します。 メタアナリシスでは、α-リノレン酸摂取量の増加が心血管疾患リスクの10%低減、致死的冠動脈疾患リスクの20%低減と関連することが報告されています。

  • 主な働き:心血管の健康維持、血中脂質との関連、抗炎症作用
  • 摂るタイミング:朝食時、1日あたり2000mg(目安量)
  • 相性:ビタミンE、魚油(EPA・DHA)
  • 注意:酸化しやすいため新鮮な状態で摂取
  • 食品例:亜麻仁油、えごま油、くるみ

α-リノレン酸とは

α-リノレン酸(alpha-linolenic acid、ALA)は、炭素数18の多価不飽和脂肪酸で、オメガ3系脂肪酸の一種です。体内で合成できないため、必須脂肪酸として食事から摂取する必要があります。

植物油(亜麻仁油、えごま油、チアシード油など)に豊富に含まれており、魚油由来のEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)とは異なり、植物由来のオメガ3脂肪酸として分類されます。

体内では、α-リノレン酸は一部がEPAやDHAに変換されますが、変換効率は個人差が大きく、一般的に5〜10%程度とされています。PubMedこのため、EPA・DHAの供給源としてだけでなく、α-リノレン酸自体の生理作用も注目されています。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人の目安量は男性2.0〜2.4g/日、女性1.6〜2.0g/日とされています。

からだでの働きと科学的知見

α-リノレン酸は、心血管の健康維持と抗炎症作用の両面で研究されています。

心血管疾患リスクとの関連

2012年に発表されたシステマティックレビューとメタアナリシスでは、観察研究のデータを統合した結果、α-リノレン酸摂取量の増加が心血管疾患リスクの10%低減、致死的冠動脈疾患リスクの20%低減と関連することが報告されました。PubMed

ランダム化比較試験では、α-リノレン酸摂取が総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、血圧の低下と関連することが確認されています。

血中脂質との関連

90名の2型糖尿病と冠動脈疾患を持つ中年参加者を対象とした12週間の二重盲検プラセボ対照試験では、亜麻仁油(α-リノレン酸400mg含有)と魚油の効果が比較されました。この研究では、亜麻仁油摂取群でも血中脂質プロファイルの維持に関与する可能性が示されています。

抗炎症作用

観察研究や一部の臨床試験では、α-リノレン酸の抗炎症作用が報告されています。PubMedこれは、α-リノレン酸が抗炎症性のEPAに変換されることや、α-リノレン酸自体がオメガ6系脂肪酸(アラキドン酸)の炎症性代謝物の産生を抑制することによると考えられています。フィージビリティ試験では、α-リノレン酸補給が炎症マーカーに関与する可能性が示されています。PubMed

研究テーマ エビデンス強度 補足
心血管疾患リスク メタアナリシスで10%リスク低減PubMed
致死的冠動脈疾患 20%リスク低減との関連を確認
血中脂質 LDL、中性脂肪、血圧の低下を確認
抗炎症作用 観察研究・一部RCTで確認

摂り方とタイミング

α-リノレン酸の推奨量は、日本人の食事摂取基準(2020年版)に基づき、成人の目安量として男性2.0〜2.4g/日、女性1.6〜2.0g/日とされています。年齢や性別によって推奨量が異なるため、自分に合った量を確認することが重要です。

食事と一緒に朝食時に摂取することが一般的にすすめられます。α-リノレン酸は脂溶性であるため、食事と一緒に摂取することで吸収率が高まります。

α-リノレン酸は酸化しやすい性質を持つため、新鮮な植物油を選び、開封後は冷暗所で保存し、早めに使い切ることが推奨されます。加熱調理には不向きで、サラダドレッシングやスムージーに加えるなど、非加熱での使用が適しています。

臨床研究では12週間程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。PubMed

栄養素どうしの関係と注意点

α-リノレン酸は他の栄養素との組み合わせで相乗効果が期待できます。

組み合わせ 推奨度 コメント
ビタミンE 抗酸化作用でα-リノレン酸の酸化を防ぐ
魚油(EPA・DHA) オメガ3系脂肪酸の総摂取量を高める
オメガ6系脂肪酸 バランスが重要(オメガ6:オメガ3 = 4:1程度が理想)

注意点として、α-リノレン酸は酸化しやすいため、新鮮な状態で摂取することが重要です。酸化した油は過酸化脂質を生成し、逆に健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用している方は、α-リノレン酸の摂取により出血リスクが高まる可能性があるため、医師に相談することが推奨されます。

過剰摂取は避け、バランスの取れた食事の一部として適量を摂取することが重要です。

食品から摂るには

α-リノレン酸は、以下の植物油や食品に豊富に含まれています。

食品 α-リノレン酸含有量(100gあたり)
亜麻仁油(フラックスシードオイル) 約57g
えごま油 約58g
チアシード油 約60g
くるみ 約9g
チアシード 約18g
大豆油 約6.8g
キャノーラ油 約9.1g

1日の目安量(2000mg)を摂取するには:

  • 亜麻仁油:小さじ1杯(約5ml、約4.5g)で約2.6g
  • えごま油:小さじ1杯で約2.9g
  • くるみ:約22g(6〜7粒)で約2g

亜麻仁油やえごま油は、サラダドレッシングとして使用したり、スムージーに加えたりすることで、日常的に摂取できます。くるみやチアシードは、ヨーグルトやシリアルに加えることで手軽に摂取できます。

加熱調理には不向きなため、生の状態で摂取することが推奨されます。開封後は酸化を防ぐため、冷蔵庫で保存し、1〜2ヶ月程度で使い切ることが理想的です。

よくある質問

Q. EPA・DHAとどう違いますか?

α-リノレン酸は植物由来のオメガ3脂肪酸で、体内で一部がEPA・DHAに変換されます。変換効率は5〜10%程度と限られているため、EPA・DHAを直接摂取する(魚油やサプリメント)ことも推奨されます。ただし、α-リノレン酸自体にも心血管の健康維持や抗炎症作用との関連が報告されています。

Q. どのくらいの期間摂取すれば良いですか?

臨床研究では12週間の継続摂取で評価されています。心血管の健康は緩やかに変化するものであり、少なくとも2〜3ヶ月程度の継続が推奨されます。ただし、α-リノレン酸は必須脂肪酸であるため、継続的な摂取が基本です。

Q. 加熱調理に使えますか?

α-リノレン酸は酸化しやすいため、加熱調理には不向きです。サラダドレッシング、スムージー、ヨーグルトに加えるなど、非加熱での使用が推奨されます。加熱調理にはオリーブオイルや米油など、熱安定性の高い油を使用することが適切です。

Q. オメガ6系脂肪酸とのバランスはどうすれば良いですか?

現代の食生活では、オメガ6系脂肪酸(リノール酸など)が過剰になりやすく、オメガ3系脂肪酸が不足しがちです。理想的なバランスはオメガ6:オメガ3 = 4:1程度とされていますが、現代人は10:1〜20:1程度になっていることが多いため、α-リノレン酸の摂取を意識的に増やすことが推奨されます。

Q. 副作用はありますか?

α-リノレン酸は一般的には安全性が高いとされていますが、過剰摂取は避けることが推奨されます。抗凝固薬を服用している方は、出血リスクが高まる可能性があるため、医師に相談してください。酸化した油を摂取すると、過酸化脂質により健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、新鮮な状態で摂取することが重要です。

Q. サプリメントと食品、どちらが良いですか?

食品からの摂取が基本です。亜麻仁油やえごま油、くるみなどの食品から摂取することで、他の栄養素(ビタミンE、食物繊維、ミネラルなど)も同時に摂取できます。サプリメントは補助的に使用し、食品からの摂取を優先することが推奨されます。

Q. 妊娠中・授乳中でも摂取できますか?

α-リノレン酸は必須脂肪酸であり、妊娠中・授乳中も適切な摂取が推奨されます。胎児や乳児の脳・神経系の発達に関与すると考えられています。ただし、過剰摂取は避け、食事摂取基準に基づいた適量を摂取することが推奨されます。妊娠中・授乳中の方は、医師に相談することが推奨されます。

Q. ベジタリアン・ビーガンに向いていますか?

α-リノレン酸は植物由来のオメガ3脂肪酸であるため、ベジタリアン・ビーガンの方に適しています。魚油由来のEPA・DHAを摂取しない場合、α-リノレン酸を意識的に摂取することで、オメガ3系脂肪酸の供給源として機能します。ただし、変換効率は限られているため、適切な量を継続的に摂取することが重要です。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。