抗酸化と肝機能サポートが気になる人に注目される吸収性向上型のグルタチオン誘導体です。 アセチルグルタチオン(S-アセチル-L-グルタチオン)は、通常のグルタチオンにアセチル基を付加することで消化管での分解を防ぎ、細胞への取り込み効率を高めた形態です。 通常のグルタチオンの経口吸収率が1〜3%であるのに対し、アセチルグルタチオンは90%以上の吸収率を示すとされています。
- 主な働き:抗酸化作用、肝機能サポート、細胞内グルタチオン維持
- 摂るタイミング:朝食時、1日あたり250〜600mg
- 相性:ビタミンC・E、N-アセチルシステイン
- 注意:推奨量を守り、過剰摂取を避ける
- 食品例:サプリメントとして提供されている
アセチルグルタチオンとは
アセチルグルタチオン(S-アセチル-L-グルタチオン、SAG)は、グルタチオンのチオール基(-SH)にアセチル基を付加したグルタチオンプロドラッグです。グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸から構成されるトリペプチドで、体内で最も重要な抗酸化物質の一つです。
通常のグルタチオンを経口摂取すると、消化管でペプチダーゼによって分解されてしまうため、そのままの形で体内に吸収される割合は1〜3%と非常に低いとされています。これに対し、アセチルグルタチオンはアセチル基によって保護されているため、消化管での分解を免れ、細胞内に取り込まれた後にアセチル基が外れて活性型のグルタチオンになります。
臨床研究では250〜600mg程度の摂取量が用いられており、血中のグルタチオンレベルを効率的に高めることが報告されています。
からだでの働きと科学的知見
アセチルグルタチオンは、抗酸化作用と肝機能サポートの両面で研究されています。
肝機能サポート
マウスを用いた研究では、四塩化炭素(CCl4)誘発肝障害モデルにおいて、S-アセチルグルタチオン(30 mg/kg)を8週間経口投与したグループで、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)活性、GSH(グルタチオン)レベル、GPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)活性が有意に回復し、GSSG(酸化型グルタチオン)レベル、脂質過酸化、H2O2、ROSレベルが強く減少したと報告されています。PubMed
これは、アセチルグルタチオンが肝臓の酸化ストレスを軽減し、抗酸化防御システムを強化する可能性を示唆しています。
グルタチオンレベルの維持
無作為化対照試験では、経口グルタチオン補給により体内のグルタチオン貯蔵量が増加し、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に血中グルタチオンレベルが上昇しました。6ヶ月後には、赤血球、血漿、リンパ球で平均30〜35%、頬粘膜細胞で260%のグルタチオンレベル増加が観察されました。PubMed
アセチルグルタチオンは、通常のグルタチオンよりも高い生体利用率を持つため、より効率的に細胞内グルタチオンレベルを維持できると考えられています。
安全性評価
2025年に公表された安全性評価では、NOAEL(無毒性量)が1,500 mg/kg/日(試験した最高用量)と決定され、食品または栄養補助食品としてのS-アセチルグルタチオンの安全な使用を支持する結果が得られています。
| 研究テーマ | エビデンス強度 | 補足 |
|---|---|---|
| 肝機能サポート | 中 | 動物実験で酸化ストレス軽減を確認PubMed |
| グルタチオンレベル維持 | 中 | 臨床試験で体内貯蔵量増加を確認PubMed |
| 生体利用率 | 高 | 経口吸収率90%以上(通常型1-3%) |
摂り方とタイミング
アセチルグルタチオンの推奨量は、臨床研究や製品の表示に基づき、1日あたり250〜600mg程度とされています。製品によって推奨量が異なるため、製品の表示に従うことが重要です。
食事と一緒に朝食時に摂取することが一般的にすすめられます。空腹時の摂取は吸収率が高まる可能性がある一方、胃腸への負担が増える場合もあるため、個人の体調に合わせて調整することが推奨されます。
臨床研究では1〜6ヶ月程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。軽度アルツハイマー病患者を対象とした臨床試験では、S-アセチルグルタチオンを含む栄養補助食品を6ヶ月間継続摂取することで、神経認知機能の安定化または改善が観察されました。PubMed
栄養素どうしの関係と注意点
アセチルグルタチオンは他の抗酸化物質との組み合わせで相乗効果が期待できます。
| 組み合わせ | 推奨度 | コメント |
|---|---|---|
| ビタミンC | ○ | 抗酸化ネットワークとして相互作用が期待される |
| ビタミンE | ○ | 脂溶性抗酸化物質との相乗効果 |
| N-アセチルシステイン | ○ | グルタチオン前駆体として相乗的に作用 |
| セレン | ○ | グルタチオンペルオキシダーゼの補因子 |
注意点として、アセチルグルタチオンは一般的には安全性が高いとされていますが、過剰摂取は避け、製品の推奨量を守ることが安全性の観点から重要です。また、まれに胃腸の不快感、アレルギー反応などが報告されています。細胞レベルの研究では、NADPH枯渇状態の細胞において、還元型グルタチオンの供給が抗酸化保護に不可欠であることが示されており、アセチルグルタチオンのような吸収性の高いグルタチオン供給源が重要な役割を果たす可能性があります。PubMed
食品から摂るには
グルタチオンは、アボカド、アスパラガス、ほうれん草、ブロッコリー、トマトなどの食品に含まれていますが、食品からの摂取量は限られており、加熱調理によってさらに減少します。
アセチルグルタチオンは食品には含まれず、サプリメントとしてのみ摂取可能です。臨床研究で使用されている量(250〜600mg)を食品だけで摂取することは現実的ではないため、アセチルグルタチオンを意識的に摂取したい場合は、サプリメントを利用することが一般的です。
製品を選ぶ際には、S-アセチル-L-グルタチオン(SAG)として標準化された製品を選ぶことが推奨されます。また、リポソーム型グルタチオンという別の吸収性向上型も存在しますが、アセチルグルタチオンは保存安定性と摂取の容易さで優れているとされています。
信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。
