ビタミン様物質・補酵素

5-ALA(5-アミノレブリン酸)|ミトコンドリアと糖代謝が気になる人の選択肢

エネルギー代謝や血糖値が気になる方に向けて、5-ALAがミトコンドリア機能や糖代謝にどのように関与するかを、臨床研究の科学的根拠と共に解説します。

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摂取基準値
RDA(推奨量)mg
AI(目安量)mg
UL(耐容上限量)mg

ミトコンドリアのエネルギー産生と糖代謝が気になる人に注目される天然アミノ酸です。 5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、体内でヘムの合成に関与する前駆物質であり、ミトコンドリアのエネルギー産生を助けることが複数の研究で示されています。 特に、ミトコンドリア糖尿病患者を対象とした臨床試験では、血糖値の維持に関与する可能性が報告されています。

  • 主な働き:ミトコンドリア機能サポート、糖代謝との関連
  • 摂るタイミング:朝食時、1日あたり15〜50mg
  • 相性:鉄分・ビタミンB群と併用
  • 注意:推奨量を守り、過剰摂取を避ける
  • 食品例:サプリメントとして提供されている

5-ALAとは

5-ALA(5-アミノレブリン酸、5-Aminolevulinic Acid)は、体内でヘム(血液中のヘモグロビンや、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体に含まれる重要な成分)の合成に関与する天然アミノ酸です。

ヘムは、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体(複合体II、III、IV)の構成成分として、ATP(エネルギー通貨)の産生に不可欠な役割を果たします。5-ALAは、グリシンとスクシニルCoAから合成され、最終的にヘムへと変換されます。

体内でも少量生成されますが、加齢やストレス、疾患によってその量は減少する傾向があります。臨床研究では15〜50mg程度の摂取量が用いられており、特にミトコンドリア糖尿病患者を対象とした研究では、血糖値の維持に関与する可能性が示されています。

からだでの働きと科学的知見

5-ALAは、ミトコンドリア機能と糖代謝との関連で研究されています。

ミトコンドリア糖尿病との関連

ミトコンドリア糖尿病(MIDD)患者5名を対象とした24週間の臨床試験(jRCT071200025)では、5-ALA(15mg/日)とクエン酸鉄ナトリウム(SFC)を併用したグループで、HbA1c値が8.3±1.2%から7.9±0.3%に改善し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)後の血糖値も有意に低下したと報告されています。PubMed

この研究は長崎大学とネオファーマジャパン株式会社により実施され、2022年11月にDiabetes Therapy誌に掲載されました。

ミトコンドリアのエネルギー産生

5-ALAは、ヘム合成の前駆物質として、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体(II、III、IV)に必要なヘムの供給に関与します。これにより、ミトコンドリアのATP産生能力の維持を助けると考えられています。PubMed

特に、ミトコンドリア機能が低下している場合、5-ALAの補給がエネルギー産生の維持に関与する可能性があります。

研究テーマ エビデンス強度 補足
ミトコンドリア糖尿病 MIDD患者でHbA1c改善を確認PubMed
糖代謝との関連 OGTT後の血糖値低下を確認
ミトコンドリア機能 低〜中 ヘム合成を通じてATP産生に関与

動物実験では、慢性心不全モデルにおいて5-ALAの投与がsuccinyl-CoAレベルを回復させ、ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)能力を改善することで、心不全の進行を抑制する可能性が報告されています。PubMed

摂り方とタイミング

5-ALAの推奨量は、臨床研究で使用された量に基づき、1日あたり15〜50mg程度とされています。ミトコンドリア糖尿病の研究では15mg/日が用いられていますが、製品によって推奨量が異なるため、製品の表示に従うことが重要です。

食事と一緒に朝食時に摂取することが一般的にすすめられます。5-ALAは鉄分と併用することでヘム合成が促進されるため、クエン酸鉄ナトリウム(SFC)などの鉄分を含む製品も存在します。

臨床研究では24週間程度の継続摂取で評価されており、即効性を期待するよりも、継続的な使用で緩やかな変化を見守る姿勢が適切です。5-ALAは炎症反応の調節や免疫反応にも関与することが複数の研究で示されています。PubMed

栄養素どうしの関係と注意点

5-ALAは他の栄養素との組み合わせで相乗効果が期待できます。

組み合わせ 推奨度 コメント
鉄分(SFC等) ヘム合成に鉄が必要、臨床試験でも併用
ビタミンB群 エネルギー代謝全体をサポート
コエンザイムQ10 ミトコンドリア機能との相乗効果が期待される
バランスの取れた食事 エネルギー代謝の基本として重要

注意点として、5-ALAは一般的には安全性が高いとされていますが、光増感作用があるため、摂取後は強い日光を避けることが推奨される場合があります。また、糖尿病の治療を受けている方は、血糖値への影響が懸念されるため、医師に相談することが推奨されます。5-ALAと鉄の組み合わせは、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現を促進し、抗酸化・抗炎症作用を強化する可能性が示されています。PubMed

食品から摂るには

5-ALAは、納豆、日本酒、赤ワインなどの発酵食品に微量に含まれていますが、食品からの摂取量は限られています。体内でも少量生成されますが、加齢とともに減少する傾向があります。

臨床研究で使用されている量(15〜50mg)を食品だけで摂取することは現実的ではないため、5-ALAを意識的に摂取したい場合は、サプリメントを利用することが一般的です。

製品には、5-ALA単独のものと、鉄分(クエン酸鉄ナトリウム等)を併用したものがあります。ヘム合成には鉄が必要なため、鉄分併用型の製品を選ぶことで、より効率的な摂取が可能になります。信頼できるメーカーの製品を選び、製品の表示や推奨量に従うことが重要です。

よくある質問

Q. どのくらいの期間摂取すれば良いですか?

臨床研究では24週間の継続摂取で評価されています。ミトコンドリア機能や糖代謝は緩やかに変化するものであり、少なくとも3〜6ヶ月程度の継続が推奨されます。個人差が大きいため、体調の変化を見ながら継続するかどうかを判断してください。

Q. 糖尿病の治療中でも摂取できますか?

ミトコンドリア糖尿病の研究では、5-ALAの摂取により血糖値への関与が観察されています。糖尿病の治療を受けている方は、血糖値への影響が懸念されるため、必ず医師に相談してください。特に、インスリンや血糖降下薬を使用している場合、自己判断での併用は避けることが推奨されます。

Q. 鉄分と一緒に摂る必要がありますか?

5-ALAからヘムを合成する過程で鉄が必要となります。臨床試験でもクエン酸鉄ナトリウム(SFC)との併用が行われており、鉄分との併用がヘム合成の効率を高める可能性があります。鉄分併用型の製品を選ぶか、鉄分サプリメントと併用することが推奨されます。

Q. ミトコンドリア機能にはどのくらい関与しますか?

5-ALAは、ヘム合成の前駆物質として、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体(II、III、IV)に必要なヘムの供給に関与します。動物実験やミトコンドリア糖尿病患者の研究では、エネルギー産生の維持に関与する可能性が示されていますが、健常者での研究は限定的です。

Q. 副作用はありますか?

臨床試験では重篤な副作用の報告は少なく、一般的には安全性が高いとされています。ただし、5-ALAには光増感作用があるため、摂取後は強い日光を避けることが推奨される場合があります。製品の推奨量を守り、異変を感じた場合は使用を中止し医師に相談してください。

Q. いつ摂取するのが最も良いですか?

臨床研究では特定の時間帯による効果の差は明確ではありませんが、食事と一緒に朝食時に摂取することが一般的にすすめられます。鉄分との併用が推奨されるため、鉄の吸収が良い食事のタイミングで摂取することが適切です。

Q. 妊娠中・授乳中でも摂取できますか?

妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータがありません。妊娠中・授乳中の方が摂取する場合は、必ず医師に相談することが推奨されます。

Q. ミトコンドリア糖尿病以外にも効果がありますか?

現時点では、ミトコンドリア糖尿病患者を対象とした研究が主体です。健常者や他の疾患における有用性については、さらなる研究が必要です。エネルギー産生の維持に関与する可能性はありますが、個人差が大きく、すべての人に同じ結果が期待できるわけではありません。

本ページは公開資料や専門書を参考に要約した成分ガイドです。サプリメントを使用する際は医師・薬剤師など専門家の助言もあわせてご確認ください。